標準物架空の債券なので、現実に同じ債券は存在しません。
ただし、標準物と同じ現物債が存在すると仮定して理論価格(先渡価格)を算出することができます。
先物取引では一定期間の経過後に清算します。
理論価格は現物価格に清算期日までの金利負担や配当金(クーポン収入)などを加味して算出されます。
具体的には以下のように計算します。
理論価格=現物価格×[1+(短期金利-配当利回り)×決済までの日数/365]
短期金利は保有・調達費用、配当利回りは保有による収入です。
決済日(期日)には日数が0になるため、現物価格と債券先物の価格は等しくなります。
先物取引では将来の期日に決済を行って現物債を手に入れます。
期日までの配当金を受け取るのは買い手ではなく売り手です。
期日前の債券先物の価格を決めるには、買い手が期日まで短期金利で現物債を借りたと仮定する必要があります。
買い手が期日前に現物債を借りて期日まで保有すると仮定した場合、借り手は配当金を受け取れますが、期日までの短期金利を支払わなければなりません。
期日前に現物債を(借りたと仮定して)取得した場合には、配当金の形で収入が発生する一方で金利など保有・調達費用も発生します。
先物取引では期日に決済(受渡)を行って現物債を取得しますが、このとき現物債と先物債券は等価です。
しかし期日前に(借りて)調達したと仮定すると、実質的な価格は現物価格より配当利回り(直利)分だけ割り引かれ、保有・調達費用分だけ高くなります。
例えば期日の3日前に100円の現物債を借りて調達したと仮定します。
収入は1日10円で利息は1日5円です。
期日である3日後に現物債と先物債券は同じ100円になりますが、借り手3日間で30円の配当収入を得ます。
配当を考慮すると、3日前の70円の現物債には3日後の100円の現物債と同じ価値があります。
そのため現物価格である100円から3日分の配当収入である30円を控除します。
利息は1日5円発生し、借り手は3日間で15円を支払うことになります。
3日後に100円の価値のある現物債を、期日よりも早い3日前に手に入れるためには15円の費用が発生します。
そのため現物価格の100円に短期金利分の15円を加えます。
期日前の先物債券の価格(理論価格)は、期日までの収入や保有・調達費用を考慮して決めなければなりません。
そのため期日までの日数に応じて現物価格から収入を控除し、保有・調達費用を加えて評価することになります。
理論価格は期日前に現物債を調達したと仮定した場合の価格なので、先渡価格とも呼ばれています。
0 件のコメント:
コメントを投稿