国税庁による調査について

・税務調査

全ての国税局と税務署には課税部門と徴収部門、管理運営部門があります。

課税部門は法人と個人、資産の3つに分かれます。

内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現は国税庁の任務の1つです。

国税局と税務署は実際に賦課・徴収の業務を行います。

賦課とは課税のことで、課税部門が税金を割り当てて負担させます。

徴収は税金の収納手続で徴収部門が行います。

税務調査を行うのは課税部門です。

調査は法人税と所得税、相続税などについて行われます。

法人税の調査対象は法人です。所得税は申告義務のある個人事業主が対象となります。

相続税の調査対象は相続人個人です。

法人と個人、資産の3つの課税部門の職員がそれぞれ法人税や所得税、相続税について調査を行います。

課税部門が行う調査は全て任意調査です。

税金の滞納がある場合は徴収部門の職員が差し押さえなどを行います。

管理運営部門は事務仕事を担当します。

税金の還付処理や申告書の入力、所得証明書の発行や還付金の処理などは管理運営部門の業務です。

・強制調査とは

強制調査は国税局査察部の調査官が担当します。

国税犯則取締法に規定されていましたが、2018年4月1日に廃止され国税通則法に編入されました。

悪質な脱税の疑いがある納税者に対して、裁判所の令状を得た上で強制的に行われます。

国税局の査察部は一般的にマルサと呼ばれています。

最終的には検察庁へ告発されることになります。

強制調査は証拠の隠滅を防ぐため、事前に連絡せず行うのが通常です。

国税通則法第131条(質問、検査又は領置等)

国税庁等の当該職員は、国税に関する犯則事件を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人に対して出頭を求め、犯則嫌疑者等に対して質問し、犯則嫌疑者等が所持し、若しくは置き去つた物件を検査し、又は犯則嫌疑者等が任意に提出し、若しくは置き去つた物件を領置することができる。

・マルサとは

国税局は国税庁の地方支分部局です。

査察部は国税局において犯則調査を扱う部署の名称を指します。

巨額な脱税者に対する犯則調査を行っており、一般的にマルサと呼ばれる職員が在籍している部署です。

旧東京国税局のあった大手町や旧庁舎の6階にちなんで、「大手町」や「6階」と呼ばれることもあります。

査察部が設置されているのは東京と大阪、名古屋の国税局です。

それ以外の国税局には調査査察部が設置されています。

国税局査察部は検察庁に刑事告訴することを目的とした部署です。

情報部門と実施部門に大別されます。

情報部門は査察部の中枢です。

情報の情の字にちなんで「ナサケ」とも呼ばれています。

脱税の嫌疑者を内偵調査するのがこの部署の主な活動です。

関係者の身辺調査などを行っており、捜索を担当する実施部門に引き継ぎます。

内偵調査が主な仕事なので、職員の身元が明かされることはありません。

実施部門は査察部の花形部署とされています。

実施の実の字にちなんで「ミノリ」とも呼ばれます。

実施部門は情報部門から提供された嫌疑者の情報に基づいて、自宅や関係者宅などの家宅捜索を行います。

強制捜索を行うには裁判所から捜索差押令状を取得します。

令状の効力は1日のみです。捜索は早朝から行われます。

実施部門の仕事は以下のようになります。

1.脱税証拠や経理関係証拠の押収
2.追徴課税や延滞金などの支払い勧告
3.刑事告訴

脱税証拠は現金や通帳、有価証券などです。

経理関係の証拠には裏帳簿や印鑑などがあります。

実施部門では家宅捜索以外に、嫌疑者への取り調べも行います。

また他の行政機関に出張したり、他の行政機関から出向者が集まるのは実施部門です。

警視庁の刑事部捜査二課は企業の贈収賄など経済犯罪を捜査しています。

脱税も捜査対象となっており、実施部門には警視庁からの出向者も存在します。

刑事部は都道府県警察本部に設置される他に、最高検察庁や各高等検察庁、東京など11のの地方検察庁に設置されている組織です。

刑法犯罪に対する捜査を行うのが主な仕事で、一般的に刑事と呼ばれる職員が所属しています。

捜査二課で扱う犯罪は以下のとおりです。

1.詐欺や通貨偽造
2.贈収賄
3.背任
4.脱税
5.不正取引や金融犯罪
6.経済犯罪
7.企業犯罪などの金銭犯罪・知能犯罪
8.汚職(選挙違反や公務員職権濫用など、公権力に関する犯罪)

警視庁は東京都を管轄する警察組織です。

一方で警察庁は国の行政機関で警察制度の企画立案や公安関係の事案などを担当しています。

内閣府の外局である国家公安委員会の特別の機関です。

警視庁は東京都内を10に分けた方面本部と102箇所の警察署を配置しています。

職員は4万7千人ほどおり日本では最大、世界でも有数の規模を誇る警察組織です。

・任意調査とは

任意調査は国税通則法に規定された調査です。

納税者の同意に基づいて、国税局や税務署の課税部門に在籍する調査官が行います。

強制調査のように強制力はありませんが、任意調査自体を否定することは不可能です。

調査官には質問検査権があり、黙秘や虚偽の回答はできません。

納税者には質問に答える義務があります。

黙秘や虚偽の回答は罰則の対象となるので注意が必要です。

国税通則法

第74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査を行う場合に限る。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあつては、課税貨物に規定する課税貨物をいう。)又はその帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができる。

第128条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 第74条の2、第74条の3(第2項を除く。)若しくは第74条の4から第74の6まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
3 第74条の2から第74条の6までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者

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