明治時代の酒税

明治政府は1868年に酒屋に対して従来の免許石数の維持を命じました。

さらに冥加金として造酒100石ごとに金20両を課税します。

1869年には鑑札冥加として造酒100石ごとに金10両を毎年の冥加として課税しました。

ただし濁酒の課税額は毎年金7両です。

1871年に酒株と酒造統制は廃止されます。

代わりに免許料と免許税、造酒税が導入されました。

免許料は清酒が10両で濁酒は5両、免許税は稼人1人あたり清酒5両、濁酒1両2分です。

醸造税は製酒代金に対して清酒5分、濁酒3分が課税されました。

1875年には種類税則が定められます。

免許料は廃止され醸造税が販売代金の1割となります。

1878年には醸造税が造石高1石に対して清酒1円、濁酒30銭、白酒と味醂が2円、焼酎が1円50銭、銘酒3円と改定されました。

1880年には新たに酒造税制が制定されます。

初めて酒造税という名称が使用されることになりました。

従来の税制は酒造免許税と酒造造石税に分類されます。

酒造造石税は造石高1石に対して醸造酒2年、蒸留酒3円、再製酒4円でした。

1896年には酒造税法が成立しました。

従来の酒造免許税は廃止されて新税である営業税に変わります。

酒税は酒造造国税のみとなりました。

新しい酒税の基本原則では造石高1石に対して第1種が7円、第2種が6円、第3種が8円とされます。

第1種は清酒と白酒、味醂です。

濁酒は第2種、焼酎と酒精は第3種とされました。

江戸時代の酒税

江戸幕府は酒造を統制するため当初酒株制度を導入しました。

酒造統制とは江戸幕府が酒造業に対して加えた規制と奨励政策のことです。

江戸時代を通して酒造の制限令は61回、奨励令は6回発せられています。

制限令は酒株の設定や寒造り以外の禁止、減醸令や運上金の導入、下り酒の江戸入津制限などです。

奨励令には勝手造り令や藩造酒の許可などがあります。

酒株は酒造株とも呼ばれており、江戸幕府によって導入された醸造業の免許制度の1つです。

将棋の駒の形をした木製の鑑札が発行されました。

酒株は表に酒造人の名前・住所と酒造石高が記載されています。

裏に御勘定書と書かれ焼印が押されました。

江戸幕府が初めて酒株を発行したのは1657年のことです。

酒株を保有していない者には酒造を禁止し、酒造人が造ることができる米の量の上限を定めました。

江戸時代において酒は贅沢品ではなく、特に東北や北陸などでは体を温めるための重要な生活必需品です。

米は日本人の主食であり、収穫量に限りがあったため、米の配分をどのようにするかが江戸幕府にとって重要な課題でした。

酒造りを自由にすると小規模な酒蔵が米を確保できなかったり、大きな酒屋が食糧米も酒に加工してしまう可能性があります。

江戸幕府は米を適切に流通させるため、酒株制度を設けて醸造業者に免許を与えます。

酒株を発行された業者は規模や生産能力に見合った米を、その年の収穫量や作柄に応じて公平に仕入れることができました。

米の豊作が続くと、米の価格が暴落します。

逆に飢饉が続くと暴騰する可能性があります。

豊作時に米を酒にすれば、市場の米の流通量が減るので相場を安定させることができます。

酒は貯蔵や輸送が簡単というメリットもあります。

一方で飢饉の際には米が不足するので、自由に酒造りを認めるわけにはいきません。

そのため幕府による酒造統制が行われました。

江戸幕府は当初、酒株制度を導入して酒造の統制を図りますが、1697年にはさらなる税収増を目的として造り酒屋に対する酒運上が課されます。

酒運上は酒価格のおよそ5割でした。醸造業における運上金は営業税や酒株(免許)の発行手数料などのことです。

運上とは近代の日本における租税の一種で、金銭で納付される場合は運上金と呼ばれました。

中世では荘園からの年貢を中央領主に貢納することを指します。

荘園とは公的な支配を受けないか、影響を排除した権力者の私有地のことです。

日本では奈良時代の律令制下で墾田永年私財法が施行されたことにより始まり、豊臣秀吉による太閤検地で終わります。

墾田永年私財法では有力者が新たに開墾した農地の私有が認められました。

平安時代にはまず小規模な免税農地で構成された免田寄人型荘園が増え、その後に皇室や摂関家、大寺社などの権力者に免税のため寄進する寄進地型荘園が増えます。

鎌倉時代には守護や地頭による荘園支配権の簒奪が行われるようになりました。

守護は鎌倉幕府や室町幕府が国単位で設置した軍事指揮官・行政官です。

地頭は荘園や国衙領(公領)を管理支配するために設置されました。

室町時代以降も荘園は存続しましたが、中央貴族や寺社、武士、在地領主などの権利・義務が複雑に絡み合う状況となり、惣村が出現して解体に向かいます。

惣村とは中世日本における百姓による自治的・地縁的結合による村落形態です。

戦国時代には戦国大名による支配が行われるようになったため、荘園は形骸化し収入源としていた公家は没落します。

最終的に豊臣秀吉による太閤検地で解体されました。

江戸時代には運上が小物成の1つとして租税化されます。

商業、工業、漁業など農業以外の様々な産業従事者に対して、一定の税率を定めて運上が課税されました。

小物成は一種の雑税です。

検知結果を記録した土地台帳である水帳に記載されず、年貢を納めない高外地に課税されました。

高外地とは江戸時代に村高に入らず年貢を納めない田畑や屋敷のことです。

村高とは検知によって定められた一村の田畑・屋敷などの総石高を指します。

江戸時代には村高が年貢や諸役負担の基準となりました。

検知を受けて検地帳に登録された高請地に課税された租税は本途物成や本年貢、年貢と呼ばれます。

小物成は明治維新後の1875年に廃止されることになります。

当時の日本全国における課税対象は1554種でした。

運上は一定の税率を定めて課税されます。

一方で冥加(冥加金)は特定の免許を受ける代わりに税率を定めず必要に応じて上納しました。

ただし時代を経るにつれて運上と冥加の明確な違いは失われていきます。

明治維新後の1869年に運上と冥加は現状を当分の間維持するとされました。

地租改正が進行した1875年に地方のおよそ1500種類の雑税が一斉に廃止されます。

その際に運上と冥加のほとんども廃止となりました。

ただし運上・冥加に代わって営業税や各種間接税などに転換されています。

代表的な運上と課税対象は以下の通りです。

水車運上:精米用水車
市場運上:町の市場全体
問屋運上:各種問屋
小漁運上:漁業
諸座運上:各種商業団体
鉄砲運上:漁師などが持つ銃
酒運上;酒造業者
長崎運上:長崎貿易に関与する商人

江戸幕府は1697年に税収増を目的として酒運上を課しましたが、酒屋たちは生産を控えるようになり、税収はあまり増えませんでした。

生産量が減少して酒の値段は高騰します。

しかし一般庶民が飲酒量を少なくすることもありませんでした。

1709年に酒運上は廃止されています。

ただしそれ以後も冥加金として復活することになります。

また、各藩でも独自に酒税を定めることがありました。

鎌倉時代から室町時代までの酒税

日本では中世から壷銭、酒役(酒屋役)、麹役として種類に対する課税が行われてきました。

壷銭とは酒屋に対する課税のことで、酒造役や酒壷銭とも呼ばれます。

酒屋に対する課税としては最古のものです。

醸造に使用する壷数に応じて課税基準を定めたことからこの名称になったとされます。

日本全国で酒屋が広まったのは鎌倉時代中期からです。

鎌倉幕府は酒が社会に及ぼす悪影響を防ぐため沽酒の禁を出して取り締まりました。

京都の朝廷は公領からの収入が減少したので、代わりに酒屋の営業を許可して課税することになります。

1312年から1317年までの正和年間における新日吉社の造影費用のため、洛中などの酒屋に壷銭を課したのが最古の記録です。

造酒司は酒や醴(甘酒)、酢などの醸造を司っていました。

四等官のうち造酒正を務める押小路家が酒壷の徴収を担当するようになります。

1322年以後、後醍醐天皇は壷役の通常課税化を図りました。建武の新政が始まると、押小路家の権限を取り上げようとします。

しかし政権が崩壊して失敗し押小路家が復権します。

1362年から1368年までの貞治年間の北朝において、年間200貫を朝廷に収めることを条件に、押小路家は酒麹売課役として徴税権が与えられました。

造酒正は警察組織である検非違使を動員して徴税を強行するようになります。

そのため酒屋の座を支配下に置いていた延暦寺などの有力寺院との対立が生じました。

鎌倉幕府は酒屋の禁止を続け禁止対象となる酒屋への課税も否定的でしたが、室町幕府は軍事力を背景に造酒正と有力寺院の対立に介入して京都の酒屋から酒屋役を徴収するようになります。

財政基盤の弱さを補うことが目的でした。

定期的な壷銭は年に12回徴収するのが原則です。

その他に臨時課税が行われます。徴収に先立ち壷数と営業状況の調査が行われました。

調査結果によって本役と半役(半公事)に分けられます。

半役は本役の半額です。

次第に京都だけでなく地方でも壷銭が徴収されるようになりました。

酒屋役は室町幕府によって京都を中心とした酒屋に課税された税金です。

鎌倉時代中期以降は日本全国に酒屋が普及しました。

酒屋の営業は基本的に鎌倉幕府によって禁止されます。

しかし京都は延暦寺など有力寺社や朝廷の影響下にあったため、鎌倉幕府による酒屋禁止が徹底されていませんでした。

京都の酒屋は延暦寺などの影響下にあり、朝廷も壷銭などの形で臨時に課税を行う代わりとして酒屋営業を認めます。

後醍醐天皇が即位した後の1322年頃から壷銭を通常課税する議論が行われるようになります。

延暦寺などの反対があり、造酒正による酒屋への通常課税が行われるようになったのは南北朝時代に入ってからです。

ただし延暦寺などの支援を受けて課税を避ける酒屋も見られ、朝廷と有力寺社の対立が続きました。

室町幕府の主な財源は御料所などからの収入です。

しかし全国的な内乱によって財政状況が悪化します。

室町幕府の財政状況が悪化した主な原因は以下のようなものです。

年貢輸送が困難になったこと。
南朝に領地を占領されたこと。
収入を自軍への恩賞に使う必要があったこと。

室町幕府は収入の減少を解決するため酒屋に課税しようとします。

幕府による課税については朝廷の造酒正や延暦寺などの寺社も強く反対しました。

当時将軍だった足利義満は強力な軍事力を維持しており、朝廷や幕府に圧力をかけます。

足利義満は酒屋と金融業者に課税して収入の減少を補おうとしました。

室町幕府は1393年に「洛中辺土散在土倉并酒屋役条々」という法令を発布します。

この法令によって延暦寺などの権益が否定され、造酒正による課税は最低限に制限されました。

酒屋と土倉は年間6000貫を幕府に納める代わりに、その他の課税が基本的に免除されることになります。

土倉とは鎌倉時代から室町時代の金融業者です。

現代の質屋と同様に物品を質草として預かり、質草に相当する金銭を高利で貸与しました。

課税対象とされたのは酒壺が10壷以上の酒屋だったと考えられています。

様々な記録から酒壺ごとに100文が課税されたと考えられており、さらに大きな行事や造影があれば臨時の税が課税されました。

当初は幕府が直接徴収していましたが、後に有力な酒屋を納銭方として数十軒単位で酒屋役を徴収させるようになります。

室町時代後期以降は請酒と呼ばれる小売専門の酒屋が生まれ、地方からも名酒が流入するようになりました。

幕府はこれらに対しても課税を行っています。このような課税制度は織田信長の時代以降も継続されました。

日本醸造協会とはどのような組織か

・公益財団法人日本醸造協会とは

日本醸造協会は1906年1月に明治政府によって設立されました。

醸造に関する科学・技術の研究・振興によって醸造業を発展させることを目的とした組織です。

現在は公益財団法人日本醸造協会となっています。

本部は東京都北区にあります。

明治以前の日本酒造りでは空気中に自然に存在する酵母や、蔵に住み着いた家つき(蔵つき)酵母を利用していました。

この方法では酵母の株数が安定せず、科学的に再現するのが困難です。

そのため醸造酒の品質は安定しませんでした。

明治政府は1904年、大蔵省の管轄下に国立醸造試験所(現在の独立行政法人酒類総合研究所)を設立します。

微生物学を西洋から導入して有用な株の分離・頒布を行い、酒質の安定と向上を図りました。

国立醸造試験所の研究成果を民間に普及させるために活躍したのが醸造協会です。

山廃酛や速醸酛は醸造協会を通して民間に普及しました。

1911年に国立醸造試験所が第1回新酒鑑評会を開催します。

それ以降は鑑評会で高く評価された酵母を醸造協会が採取・培養し、日本各地の蔵元に頒布するようになりました。

1920年9月に財団法人日本醸造協会に改変されます。

現在でも酒類製造免許の取得者に酵母の頒布を行っています。

日本醸造協会が頒布する酵母は一般的に協会系酵母やきょうかい酵母と呼ばれます。

日本醸造協会では酵母の頒布の他にも、清酒品評会や酒蔵講習会、日本醸造学会の主催や協会誌の発行などを行っています。

清酒品評会は酒類総合研究所が行う鑑評会とは異なり、審査によってお酒の優劣を決めるのが目的です。

酒類総合研究所と日本酒造組合中央会が共催している全国新酒鑑評会は、製造者に対して専門家の評価を示し技術向上に役立てることを目的としています。

・全国新酒鑑評会とは

全国新酒品評会は1911年に始まり現在も行われている日本酒の鑑評会です。

独立行政法人酒類総合研究所と日本酒蔵組合中央会の共催で行われ新酒を鑑評します。

明治政府は西洋諸国に対抗するため殖産興業を実施しました。

殖産興業とは機械性工業や鉄道網の整備、資本主義の育成などにより国家の近代化を推進する諸政策のことです。

日本では殖産興業の一貫で1890年代の終わり頃から日本酒の品評会が各地で開催されるようになりました。

しかし基準が地方によって異なっていたため、統一基準による品評会が求められます。

当時の醸造技術は未熟で、酒ができる前に腐ることもありました。

醸造技術向上のためにも系統的な品評会が必要とされます。

明治政府にとって酒税は非常に重要な財源でした。

財源を確保する目的で国立醸造試験所の設立など醸造業が推進されます。

1907年には日本醸造協会が主催する全国清酒品評会が開かれました。

また1911年には第1回新酒鑑評会が開催されています。

品評会と鑑評会は似ていますが目的が以下のように異なります。

品評会:審査で新酒の優劣をつけること。
鑑評会:専門家の評価を示して製造業者の技術向上に役立てること。

品評会や鑑評会で高く評価された酵母は、日本酒蔵協会が採取・培養して全国の酒蔵に頒布しました。

協会系酵母の第1号は神戸市灘の「櫻正宗」、第2号は京都市伏見の「月桂冠」です。

財務省所管の酒類総合研究所とはどのような組織か

・独立行政法人酒類総合研究所とは

酒類総合研究所は広島県東広島市にある財務省所管の独立行政法人です。

明治時代に設立された国立醸造試験所が起源で、酒類に関する研究を行っています。

1894年から翌年にかけて日清戦争が行われました。

その後の軍備拡張と官営企業に対する財政支出の増大に対応するため何度も増税が実施されます。

1901年には日本全国の酒造組合などが研究費の国費負担を求めて、農商務大臣に醸造研究所の設立を建議しました。

同年7月に、農商務省は日本酒醸造改良実験及び講習所設置委員に対して調査命令を出します。

1902年3月7日、第16回帝国議会で酒造税法改正と酒釀研究所に関する請願が行われ、4月には農商務省に醸造試験所設立事務取扱所が設置されます。

1904年の閣議決定で醸造試験所は大蔵省の所管とされました。

同年5月9日には醸造試験所が現在の東京都滝野川に設置されます。

1905年からは清酒製造関係の技術者を対象とした醸造講習が始まりました。

1911年には第1回全国新酒鑑評会が開催されています。

醸造試験所は1943年11月に大蔵省主税局醸造技術課となり、さらに1945年には大蔵省主税局醸造試験所となりました。

1949年6月1日には大蔵省の外局として国税庁が発足します。

醸造試験所は国税庁の酒税課が所轄することになりました。

1959年に4月13日には国税庁直属の研究機関とされます。

1962年には第1回全国洋酒鑑評会が、1977年には第1回全国本格焼酎鑑評会が開催されました。

1995年7月10日、醸造試験所は広島県東広島市に移転します。

これは東京への行政機関の一極集中を避けるためです。

東広島市に移転すると同時に名称が国税庁醸造研究所へ変更されました。

2001年4月1日には独立行政法人化され、現在の独立行政法人酒類総合研究所になります。

2015年には東京事務所が東広島市にある本部と統合されました。

1900年頃の日本では殖産興業の一貫で鉄工業などと並び醸造業の発展が図られます。

そのため1904年に大蔵省管轄で醸造試験所設立されることになります。

当時の日本の醸造業は未熟で、よい製品を作るには偶然性に頼らざるを得ない状況でした。

仮によい製品が作れても、同じものを再び作るのは困難であり、科学的再現性を実現するため官営の醸造試験所が設置されます。

醸造試験所は1909年に山廃酛を、1910年には速醸酛を考案しました。

さらに1911年には第1回全国新酒鑑評会が開催され、1913年には醤油の醸造講習も行われるようになります。

・山廃酛と速醸酛とは

米を発酵させるための酵母を増やす工程は、杜氏や蔵人の言葉で「酛立て」と呼ばれます。

大量の米を発酵させるには大量の酵母を育てなければなりません。

酒蔵では少量の協会系酵母を特定の環境下で育成します。

協会系酵母とは日本醸造協会が頒布している酵母のことです。

大量に培養された酵母は酒母や酛(もと)と呼ばれます。

酒母造りは生酛系と速醸系の2種類に大別することができます。

生酛系と速醸系の違いは、乳酸の加え方にあります。

酒母を造る際にはタンクの蓋を開けた状態にするため、空気中から雑菌や野生酵母が入ることがあります。

硝酸還元菌や乳酸菌を加え、乳酸を生成させると雑菌や異性酵母を駆逐できます。

山廃酛は生酛系に属する日本酒の製法の1つです。

山卸廃止酛が正式名称ですが山廃仕込みや山廃などとも呼ばれます。

生酛系の酒母造りの製法は生酛と山廃酛に分類できます。

生酛は最も古くから続く日本酒の製法です。

乳酸菌を空気中から取り込み、乳酸を作らせて雑菌や野生酵母を駆逐します。

酒母になるまで1か月ほどかかります。

工程が長く完全発酵させるため、手間と時間がかかるのが特徴です。

コストの面から敬遠されることもありますが、成功すればしっかりとした酒質になります。

伝統を復活させるため生酛を採用する酒蔵も増えています。

生酛は腐敗や酸敗のリスクが大きかったので、1909年に国立醸造試験所によって山廃酛が開発されました。

山廃酛で醸造された日本酒は山廃仕込みや山廃と呼ばれます。

生酛から山卸の工程を省略したものです。

ただしたんに山卸を省略しただけではなく、その他の作業にも小さな違いがあります。

山卸とは米と麹、水を櫂で混ぜる作業のことです。

酛すりとも呼ばれています。

速醸(速醸系)とは乳酸を予め人工的に加える近代的な製法です。

1910年に国立醸造試験所によって開発されました。

仕込み水に醸造用の乳酸を加えて、十分に混ぜ合わせた上で掛け米と麹を投入します。

この方法だと2週間ほどで酒母を造ることができます。

現在生産されている日本酒の多くは速醸酛です。

国税庁による調査について

・税務調査

全ての国税局と税務署には課税部門と徴収部門、管理運営部門があります。

課税部門は法人と個人、資産の3つに分かれます。

内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現は国税庁の任務の1つです。

国税局と税務署は実際に賦課・徴収の業務を行います。

賦課とは課税のことで、課税部門が税金を割り当てて負担させます。

徴収は税金の収納手続で徴収部門が行います。

税務調査を行うのは課税部門です。

調査は法人税と所得税、相続税などについて行われます。

法人税の調査対象は法人です。所得税は申告義務のある個人事業主が対象となります。

相続税の調査対象は相続人個人です。

法人と個人、資産の3つの課税部門の職員がそれぞれ法人税や所得税、相続税について調査を行います。

課税部門が行う調査は全て任意調査です。

税金の滞納がある場合は徴収部門の職員が差し押さえなどを行います。

管理運営部門は事務仕事を担当します。

税金の還付処理や申告書の入力、所得証明書の発行や還付金の処理などは管理運営部門の業務です。

・強制調査とは

強制調査は国税局査察部の調査官が担当します。

国税犯則取締法に規定されていましたが、2018年4月1日に廃止され国税通則法に編入されました。

悪質な脱税の疑いがある納税者に対して、裁判所の令状を得た上で強制的に行われます。

国税局の査察部は一般的にマルサと呼ばれています。

最終的には検察庁へ告発されることになります。

強制調査は証拠の隠滅を防ぐため、事前に連絡せず行うのが通常です。

国税通則法第131条(質問、検査又は領置等)

国税庁等の当該職員は、国税に関する犯則事件を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人に対して出頭を求め、犯則嫌疑者等に対して質問し、犯則嫌疑者等が所持し、若しくは置き去つた物件を検査し、又は犯則嫌疑者等が任意に提出し、若しくは置き去つた物件を領置することができる。

・マルサとは

国税局は国税庁の地方支分部局です。

査察部は国税局において犯則調査を扱う部署の名称を指します。

巨額な脱税者に対する犯則調査を行っており、一般的にマルサと呼ばれる職員が在籍している部署です。

旧東京国税局のあった大手町や旧庁舎の6階にちなんで、「大手町」や「6階」と呼ばれることもあります。

査察部が設置されているのは東京と大阪、名古屋の国税局です。

それ以外の国税局には調査査察部が設置されています。

国税局査察部は検察庁に刑事告訴することを目的とした部署です。

情報部門と実施部門に大別されます。

情報部門は査察部の中枢です。

情報の情の字にちなんで「ナサケ」とも呼ばれています。

脱税の嫌疑者を内偵調査するのがこの部署の主な活動です。

関係者の身辺調査などを行っており、捜索を担当する実施部門に引き継ぎます。

内偵調査が主な仕事なので、職員の身元が明かされることはありません。

実施部門は査察部の花形部署とされています。

実施の実の字にちなんで「ミノリ」とも呼ばれます。

実施部門は情報部門から提供された嫌疑者の情報に基づいて、自宅や関係者宅などの家宅捜索を行います。

強制捜索を行うには裁判所から捜索差押令状を取得します。

令状の効力は1日のみです。捜索は早朝から行われます。

実施部門の仕事は以下のようになります。

1.脱税証拠や経理関係証拠の押収
2.追徴課税や延滞金などの支払い勧告
3.刑事告訴

脱税証拠は現金や通帳、有価証券などです。

経理関係の証拠には裏帳簿や印鑑などがあります。

実施部門では家宅捜索以外に、嫌疑者への取り調べも行います。

また他の行政機関に出張したり、他の行政機関から出向者が集まるのは実施部門です。

警視庁の刑事部捜査二課は企業の贈収賄など経済犯罪を捜査しています。

脱税も捜査対象となっており、実施部門には警視庁からの出向者も存在します。

刑事部は都道府県警察本部に設置される他に、最高検察庁や各高等検察庁、東京など11のの地方検察庁に設置されている組織です。

刑法犯罪に対する捜査を行うのが主な仕事で、一般的に刑事と呼ばれる職員が所属しています。

捜査二課で扱う犯罪は以下のとおりです。

1.詐欺や通貨偽造
2.贈収賄
3.背任
4.脱税
5.不正取引や金融犯罪
6.経済犯罪
7.企業犯罪などの金銭犯罪・知能犯罪
8.汚職(選挙違反や公務員職権濫用など、公権力に関する犯罪)

警視庁は東京都を管轄する警察組織です。

一方で警察庁は国の行政機関で警察制度の企画立案や公安関係の事案などを担当しています。

内閣府の外局である国家公安委員会の特別の機関です。

警視庁は東京都内を10に分けた方面本部と102箇所の警察署を配置しています。

職員は4万7千人ほどおり日本では最大、世界でも有数の規模を誇る警察組織です。

・任意調査とは

任意調査は国税通則法に規定された調査です。

納税者の同意に基づいて、国税局や税務署の課税部門に在籍する調査官が行います。

強制調査のように強制力はありませんが、任意調査自体を否定することは不可能です。

調査官には質問検査権があり、黙秘や虚偽の回答はできません。

納税者には質問に答える義務があります。

黙秘や虚偽の回答は罰則の対象となるので注意が必要です。

国税通則法

第74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査を行う場合に限る。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあつては、課税貨物に規定する課税貨物をいう。)又はその帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができる。

第128条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 第74条の2、第74条の3(第2項を除く。)若しくは第74条の4から第74の6まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
3 第74条の2から第74条の6までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者

国税庁とはどのような機関か

・国税庁の役割とは

国税庁は国家行政組織法第3条第2項と財務省設置法第18条第1項に基づいて設置された財務省の外局です。

税金の適正で公平な賦課・徴収の実現が主な任務としています。

また種類業の健全な発達や税理士業務の適正な運営の確保も国税庁の任務です。

国家行政組織法

第3条 
1 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする。
2 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。

財務省設置法

第18条 国家行政組織法第3条第2項の規定に基づいて、財務省に、国税庁を置く
第19条(任務) 国税庁は、内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現、酒類業の健全な発達及び税理士業務の適正な運営の確保を図ることを任務とする。
第20条(所掌事務) 国税庁は、前条の任務を達成するため、第4条第17号、第19号(酒税の保全に関する制度の企画及び立案を除く。)から第22号まで、第65号及び第67号に掲げる事務並びに次に掲げる事務をつかさどる。
 1 税理士制度の運営に関すること。
 2 酒類に係る資源の有効な利用の確保に関すること。
 3 政令で定める文教研修施設において、国税庁の所掌事務に関する研修を行うこと。

財務省設置法第4条

17  内国税の賦課及び徴収に関すること。
19 酒税の保全並びに酒類業の発達、改善及び調整に関すること。
20 醸造技術の研究及び開発並びに酒類の品質及び安全性の確保に関すること。
21  法令の定めるところに従い、第二十七条第一項各号に掲げる犯罪に関する捜査を行い、必要な措置を採ること。
22  印紙の形式に関する企画及び立案に関すること並びにその模造の取締りを行うこと。
65 所掌事務に係る国際協力に関すること。
67 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、財務省に属させられた事務

税制の企画・法制化は財務省主税局の仕事です。

国税庁は租税制度の執行機関(実施庁)と位置づけられています。

国税庁は酒類業界を管轄しており、酒販免許や酒造免許を業者に付与する権限があります。

国税庁と一般的な国民との関わりとして、確定申告や税務調査などを挙げることができます。

税務調査は業種や売上に関わらず訪れる可能性があるので注意が必要です。

・国税庁の組織

1.国税庁

国税庁は税務行政に関する企画立案や国税局、税務署の指揮監督を行っています。

税法を解釈するためのガイドライン作成も国税庁の仕事です。

2.国税局

国税局は税務署を監督する機関で、国税庁が策定した方針に従って管轄内の税務署を指導・監督します。

税務署では扱うことが難しい事案についての対応も行っています。

大規模で複雑な事案については国税局の専門部署が担当しており、税金の賦課・徴収が行われます。

大規模で複雑な事案とは査察調査や大法人調査、大口滞納者の滞納整理などです。

3.税務署

税務署は税金の賦課・徴収に関する仕事を行います。

納税者から確定申告や納税を受けるだけでなく、必要があれば税務調査や滞納処分などを実施することになります。

実際に納税者と直接関わって対応業務を行うのが税務署です。

税務署が税務調査を行う場合は、任意調査のみが行われます。

他の省庁より格上とされる財務省

・国の予算案を作るのは財務省の主計官です

国の予算は4月から翌年の3月までの年度単位で決められます。

政府案が決定されるのは毎年12月の終わり頃です。

予算案は財務省の主計局で主計官によって作成されます。

予算案は各省庁の概算要求に基づいて作られ、翌年の通常国会で議論されることになります。

憲法第60条第1項では衆議院の予算先議権が認められており、参議院より先に議決を行います。

衆議院と参議院で異なる議決をして両院協議会でも意見が一致しない場合や、参議院が衆議院の可決した予算について30日以内に議決をしない場合は、衆議院の議決が国会の議決とされます。

日本国憲法第60条

1 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

衆議院は憲法で優越が認められおり、参議院と意見が異なる場合に衆議院の酸性のみで予算を成立させることができます。

・財務省が他の省庁より格上とされる理由

財務省は日本の省庁のなかでも格上とされています。

実際に各省庁は予算と権限を確保するために財務省にお伺いを立てます。

財務官僚こそ日本を動かす真のエリートです。

財務省設置法第4条では国の予算及び決算の作成に関することが同省の権限とされています。

この権限が他の省庁よりも財務省を優位な存在にしている根源です。

財務省が強い権限を持っているのは日本だけではありません。

外国では法律で他の省庁よりも格上であることが明確に規定されているケースもあります。

日本では建前上他の省庁と同格という扱いになっていますが、実際には格上な存在です。

財務省主計局は局長、次長、主計官、主査という構造になっています。

実際に予算を作成する主計官が強い力を持つのが特徴です。

財務省が大きな力を持っている原因の1つが主計局の存在ですが、外局に国税庁があることも影響しています。

国税庁は財務省の外局で、企業や政治家などに強い影響力を持ちます。

その幹部の多くが財務省のキャリア官僚です。

財務省は予算と税務を牛耳っており他の省庁や政治家、企業などに対して強い影響力を行使することができます。

・財務省の組織図

財務省と外局の国税庁は以下のような組織図になっています。
















・財務省内部の組織図

以下は財務省内部の組織図です。


財務省の特徴について

・財務省とはどのような機関か

財務省は行政機関の1つで健全な財政の確保や課税、国庫の管理や税関の運営などを所管しています。

国家のお金のやり繰りをするのが主な仕事です。

財務省の任務は財務省設置法第3条に規定されています。

第3条  財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保並びに造幣事業及び印刷事業の健全な運営を図ることを任務とする。

財務省設置法に規定された任務を達成するため、国の予算や決算、会計や通貨、租税、日本国債、財政投融資や外国為替、国有財産、酒類、たばこ・塩事業などを司っています。

たばこや酒類の製造・販売については、たばこ税や酒税の関係で財務省の所管となりました。

国が筆頭株主になっている日本たばこ産業や日本郵政、日本電信電話などの特殊会社の多くを所管するのは財務省です。

2001年(平成13年)1月6日に中央省庁等改革基本法によって大蔵省が改編・改称されて財務省になりました。

金融行政は内閣府の外局として新設された金融庁に移管されています。

・財務省の所掌事務

財務省の所掌事務は、財務省設置法第4条に規定されています。

第4条  財務省は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
 1 国の予算、決算及び会計に関する制度の企画及び立案並びに事務処理の統一に関すること。
 2 国の予算及び決算の作成に関すること。
 3 国の予備費の管理に関すること。
 4  決算調整資金の管理に関すること。
 5  国税収納金整理資金の管理に関すること。
 6  各省各庁の予算の執行について財政及び会計に関する法令の規定により行う承認及び認証に関すること。
 7  各省各庁の出納官吏及び出納員の監督に関すること。
 8  国の予算の執行に関する報告の徴取、実地監査及び指示に関すること。
 9  各省各庁の歳入の徴収及び収納に関する事務の一般を管理すること。
 10 物品及び国の債権の管理に関する事務の総括に関すること。
 11 国の貸付金を管理すること。
 12 政府関係機関の予算、決算及び会計に関すること。
 13 国家公務員の旅費その他実費弁償の制度に関すること。
 14 国家公務員共済組合制度に関すること。
 15 国の財務の統括の立場から地方公共団体の歳入及び歳出に関する事務を行うこと。
 16 租税(関税、とん税及び特別とん税を除く。)に関する制度(外国との租税(関税、とん税及び特別とん税を除く。)に関する協定を含む。)の企画及び立案並びに租税の収入の見積りに関すること。
 17 内国税の賦課及び徴収に関すること。
 18 税理士に関すること。
 19 酒税の保全並びに酒類業の発達、改善及び調整に関すること。
 20 醸造技術の研究及び開発並びに酒類の品質及び安全性の確保に関すること。
 21 法令の定めるところに従い、第27条第1項各号に掲げる犯罪に関する捜査を行い、必要な措置を採ること。
 22 印紙の形式に関する企画及び立案に関すること並びにその模造の取締りを行うこと。
 23 関税、とん税及び特別とん税並びに税関行政に関する制度(外国との関税及び税関行政に関する協定を含む。)の企画及び立案に関すること。
 24 関税、とん税及び特別とん税並びに地方税法第2章第3節に規定する地方消費税の貨物割の賦課及び徴収に関すること。
 25 関税に関する法令の規定による輸出入貨物、船舶、航空機及び旅客の取締りに関すること。
 26 保税制度の運営に関すること。
 27 通関業の監督及び通関士に関すること。
 28 通関情報処理センターの行う国際貨物業務の電子情報処理組織による処理に関すること。
 29 国庫収支の調整その他国内資金運用の調整に関すると。
 30 国庫制度及び通貨制度の企画及び立案に関すること。
 31 国庫金の出納、管理及び運用並びに国の保管金及び国が保管する有価証券の管理に関すること。
 32 国債に関すること。
 33 債券及び借入金に係る債務について国が債務を負担する保証契約に関すること。
 34 日本銀行の国庫金及び国債の取扱事務を監督すること。
 35 地方債に関すること。
 36 貨幣及び紙幣の発行、回収及び取締り並びに紙幣類似証券の取締りに関すること。
 37 日本銀行券の種類、様式及び製造発行計画を定めること。
 38 財政投融資制度の企画及び立案に関すること。
 39 財政投融資計画の作成並びに資金運用部資金の管理及び運用に関すること。
 40 政府関係金融機関に関すること。
 41 地震再保険事業に関すること。
 42 たばこ事業及び塩事業の発達、改善及び調整に関すること。
 43 国有財産の総括に関すること。
 44 普通財産の管理及び処分に関すること。
 45 国家公務員の宿舎の設置(合同宿舎については、その設置及び管理)に関すること並びに国家公務員の宿舎の管理に関する事務の総括に関すること。
 46 国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法第5条に規定する特定国有財産整備計画に関すること。
 47 外国為替に関する制度(外国との外国為替に関する協定を含む。)の企画及び立案に関すること。
 48 外国為替相場の決定及び安定並びに外国為替資金の管理及び運営その他外貨資金の管理に関すること。
 49 国際収支の調整に関すること並びに所掌事務に関する外国為替の取引の管理及び調整に関すること。
 50 金の政府買入れに関すること及び金の輸出入の規制に関すること。
 51 国際通貨制度及びその安定に関すること。
 52 国際復興開発銀行その他の国際開発金融機関に関すること。
 53 外国為替及び外国貿易法第30条第1項に規定する技術導入契約の締結等及び外国投資家による同法第26条第2項に規定する対内直接投資等の管理及び調整に関すること。
 54 本邦からの海外投融資に関すること。
 55 健全な財政の確保、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保の任務を遂行する観点から行う金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する企画及び立案に関すること。
 56 預金保険機構及び農水産業協同組合貯金保険機構の業務及び組織の適正な運営の確保に関すること。
 57 保険契約者保護機構の業務及び組織の適正な運営の確保に関すること。
 58 投資者保護基金の業務及び組織の適正な運営の確保に関すること。
59 日本銀行の業務及び組織の適正な運営の確保に関すること(金融庁の所掌に属するものを除く。)。
 60 準備預金制度に関すること。
 61 金融機関の金利の調整に関すること。
 62 貨幣、章はい、記章、極印、合金及び金属工芸品の製造、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第10条第1項及び第3項の規定による貨幣の販売、旧貨幣及び同法第8条の規定により引き換えられた貨幣の鋳つぶし、貴金属の精製及び品位の証明並びに地金及び鉱物の分析及び試験に関すること。
 63 日本銀行券、紙幣、国債、印紙、郵便切手、郵便はがきその他の証券及び印刷物の製造並びに官報、法令全書、白書、調査統計資料その他の政府刊行物の編集、製造及び発行並びにすき入紙の製造の取締りに関すること。
 64 所掌事務に係る資源の有効な利用の確保に関すること。
 65 所掌事務に係る国際協力に関すること。
 66 政令で定める文教研修施設において、国の会計事務職員の研修及び所掌事務(財務省の地方支分部局においてつかさどる事務を含む。)に関する研修を行うこと。
 67 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、財務省に属させられた事務

個人向け国債と新窓販国債

個人向け国債を購入できるのは個人だけで法人は購入できません。

新窓販国債ならば購入者の制限がないので、法人やマンションの管理組合などでも購入できます。

販売価格は個人向け国債が額面金額100円につき100円ですが、新窓販国債は入札結果に応じて発行ごとに財務省が決定します。

いずれも金融機関などで購入できます。

新窓販国債は平成19年10月から販売が開始された国債です。

新しい窓口販売方式で発行されており、郵便局だけでなく民間金融機関でも購入できます。

以前は郵便局のみで一定期間・価格で募集する一種の委託販売が行われていました。

新窓販国債では委託販売方式が民間金融機関にも拡大されています。

基本的な性質は入札で発行される国債と同じです。

個人向け国債には満期が10年と5年、3年のものがあります。

これらのうち10年ものだけが変動金利で他は固定金です。

新窓販国債の満期には10年と5年、2年のものがあり、満期に関わらず全て固定金利です。

個人向け国債には0.05%の下限金利がありますが、新窓販国債には下限金利が設定されていません。

償還金額はいずれも額面金額100円につき100円です。

個人向け国債の金利は10年ものだと基準金利に0.66を掛けて算出します。

5年ものと3年ものはそれぞれ基準金利から0.05%と0.03%を引きます。

基準金利の意味は満期によって異なります。

10年ものだと直近10年債平均落札利回りです。

5年ものと3年ものはそれぞれ5年債と3年債の想定利回りが基準金利とされます。

新窓販国債の金利は直近の入札により発行した国債と同じです。

個人向け国債は発行後1年を経過すればいつでも国の買取によって中途換金できます。

元本割れのリスクはありませんが、換金時には直近2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を掛けた金額が控除されます。

発行後1年間は原則として中途換金ができません。

新窓販国債は中途換金ができませんがいつでも市場で売却できます。

市場価格によって利益や損失が発生します。元本割れするリスクもあります。

個人向け国債や新窓販国債を購入するには、まず取り扱っている金融機関を確認します。

口座の開設には本人確認書類やマイナンバー(個人番号)を確認できる書類、印鑑が必要です。

本人確認書類は運転免許証や健康保険証などが利用できます。

口座を開設したら購入の申し込みができるようになります。

国債のリスクについて

・信用リスク

国債は安全な金融資産ですがリスクもあります。

発行体である国の経済や財政に問題があり債務の返済が遅滞するような事態が発生した場合、国債の信用度が低下します。

国家が破綻して元本を回収できなくなる危険性を信用リスクと呼びます。

国債の信用リスクは格付け機関によるランキングを見れば確認できます。

世界的な格付け機関であるムーディーズではAAAからCまで9段階で国債をランキングしています。

格付けのランクが低いほど信用度が下がります。

反対に信用リスクが高まるので債務不履行(デフォルト)が発生しやすいと判断できます。

・金利変動リスク

国債には固定金利と変動金利がありますが、後者は半年ごとに見直しが行われます。

変動金利の国債は市中金利が下落して利子が減少する可能性があります。

反対に市中金利が上昇すると利子が増えます。

固定金利ならば満期まで一定の利息を得ることができます。

市中金利が下落しても利息が減ることはありませんが、上昇した場合は利息が増えません。

市中金利が低い状態で今後上昇する可能性がある場合は、変動金利の国債を選ぶとよいでしょう。

既に高い場合は下落する可能性があるので固定金利のものを選ぶと利子の減少を防ぐことができます。

・為替変動リスク

海外の国債を購入する場合には外貨建てなので為替レートの影響を受けます。

為替の状況によっては売却時に損失が発生する可能性があるので注意しなければなりません。

・リスク以外の注意点

個人向け国債は中途解約時の手数料に注意が必要です。

中途解約する場合には手数料として中途換金調整額が発生します。

中途換金調整額は直前2回分の税引前の利子金額に0.79685をかけたものです。

元本部分は保証されますが、受け取る利息の額が少なくなります。

新窓販国債は個人も法人も購入できますが中途解約はできません。

市場で売却することはできます。

手数料は発生しませんが、売却する際に購入時の基準価格を割り込んでいることがあります。

基準価格の上昇や金利変動リスクを回避する方法として、満期前の解約や売却は有効な方法です。

銀行預金と個人向け国債、株式投資・投資信託の利回りとリスクの関係は以下のようになっています。

利回り

銀行預金<個人向け国債<株式投資・投資信託

リスク

個人向け国債<銀行預金<株式投資・投資信託

個人向け国債は小さいリスクで銀行預金よりも大きな利益を期待できます。

より大きな利益を求めるのであれば、リスクも高まりますが株式投資や投資信託を選ぶとよいでしょう。

個人向け国債を購入するには

・個人向け国債のメリットとデメリット

一般的に投資を行う場合には信用リスクを意識しなければなりません。

信用リスクとは有価証券の発行体である国や企業などが財政難や経営不振で債務不履行となるリスクのことです。

債務不履行が発生すると利息や元本などを決められた条件で受け取ることができなくなります。

そのような事態に陥ると有価証券の価格が下落します。

さらに発行体が破綻すると元本を回収できなくなります。

信用力の低い発行体ほど信用リスクが高くなるので注意しなければなりません。

投資先の国や企業の財務状況や経営内容、格付けなどに常に気を配ることが大切です。

国債は発行体が国家なので、信用力の高い国のものであれば信用リスクは低くなります。

株式などと比較して安全に資産運用ができる金融商品です。

個人向け国債は下限金利が0.05%となっています。

定期預金よりも国債を購入した方が利回りがよくなるケースも存在します。

個人向け国債は最低1万円から1万円単位で購入可能です。

株式や不動産などと異なり少ない資金で投資を始めることができます。

国債にはデメリットも存在します。例えば即座に換金することができません。

銀行の定期預金であれば1か月や半年など短い期間を設定できます。

しかし個人向け国債の場合は、最低でも1年間は途中解約ができません。

1年経過後は解約が可能となります。

ただし支払われるのは中途換金調整額です。

中途換金調整額は個人向け国債を満期前に解約する際に発生します。

直前2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を掛けて算出されます。

経過期間が短い場合は利子が少なくなることがあります。

国債は毎月発行されるのが通常です。

しかしいつでも購入できるわけではありません。

募集期間内に金融機関などで申し込みをする必要があります。

期間は毎月1日から月末ではなく、国債の種類によって違います。

購入するには募集期間の確認が必要です。

国債は安全な金融商品ですが利回りが低いので、より多くの利益を得たいのであればリスクと利回りの高い投資先を選ぶ必要があります。

例えば投資信託は国債と同様に購入後は保有するだけですが利回りが高いのが特徴です。

株式投資や投資信託はリスクが高くなるものの高利回りを期待できます。

高利回りのためにリスクを許容できる人には国債よりも株式投資などの方が適しています。

国債は信用リスクが小さい安全な金融資産です。

しかし信用リスクが全くゼロなわけではありません。

企業が倒産するよりもリスクは低いかもしれませんが、国家が破綻する可能性は存在します。

元本が保証されるわけではないので信用リスクを意識した上で投資する必要があります。

・国債を購入するには

国債は募集期間内に金融機関などで申し込みをして購入します。

まず銀行やネット証券などで国債を募集しているかどうか確認しましょう。

基本的にどの金融機関で申し込みをしても金利や手数料は同じです。

ただし一部の金融機関では口座管理手数料などが発生することがあります。

国債の購入には金融機関の口座開設が必要です。

銀行で手続を行うには必要書類や個人情報の提出が必要になります。

ネット証券ならばインターネット上で手続を行えるので簡単です。

実際に購入する場合には銀行の窓口で購入代金と印鑑、本人確認書類などを提出します。

ネット証券ならばインターネット上で購入手続が可能です。

購入後は原則としてキャンセルができません。

・国債を購入した場合の注意点

個人向け国債は発行後1年が経過すれば途中解約が可能です。

ただし直前2回分の各利子相当額に0.79685を掛けた額が控除されます。

元本は保証されますが利子がほとんど得られないので注意が必要です。

個人向け国債には固定金利と変動金利があります。

満期後に資金を利用する目的に応じていずれを選ぶかを決めるとよいでしょう。

固定金利は将来受け取ることができる金額を正確に把握しやすいという特徴があります。

満期後の資金計画を立てやすいのがメリットです。

変動金利は将来の受取金額が変動する可能性があります。

詳細な資金計画を立てるには不向きです。

満期後の目的が明確な場合には固定金利を選ぶのがよいでしょう。

金利上昇を期待するのであれば変動金利を選ぶのがおすすめです。

仮に金利が下落したとしても、下限金利を下回ることはありません。

個人向け国債とは

・個人向け国債の特徴

個人向け国債は個人投資家のみ購入できる国債です。

機関投資家が購入するタイプの国債は基本的に満期まで保有しなければなりません。

しかし個人向け国債は途中解約が認められています。

個人向け国債の満期には10年と5年、3年の3種類があります。

これらのうち10年のものだけが変動金利で、5年と3年のものは固定金利です。

インフレのリスクに備えたいのであれば10年ものがおすすめです。

個人向け国債は毎月発行されており、最低1万円からの1万円単位で購入できます。

販売価格と償還金額は額面金額100円につき100円です。

中途換金も可能ですが、発行後1年間はできません。下限金利は0.05%となっています。

・新窓販国債とは

新窓販国債も個人投資家が購入できる国債です。

ただし個人向け国債と異なり個人に限定されず法人名義でも購入できます。

新窓販国債は途中解約ができませんが市場への売却は可能です。

売却時期によって元本割れする可能性があるので注意しなければなりません。

新窓販国債の満期は10年と5年、2年の3種類です。

いずれも固定金利となっています。

新窓販国債は毎月発行されており、最低5万円から5万円単位で購入できます。

1回の申込における上限は3億円です。

販売価格は入札結果に応じて発行ごとに変動します。

購入対象者に制限はありません。

金利は直近の入札で発行した国債と同じになります。

下限金利はなく中途換金はできませんが売却は可能です。

償還金額は額面金額100円につき100円となっています。

新窓販国債と比較して個人向け国債の方が購入単位が小さく下限金利の設定があり、換金による元本保証も行われるので有利です。

・個人向け国債の金利

個人向け国債には適用利率(年率)とその下限が存在します。

例えば変動金利型10年満期の場合、利率の下限は0.05%です。

適用利率は基準金利に0.66をかけて算出します。

変動金利型10年満期における基準金利は、利子計算期間開始日の前月までの最後に行われた入札の平均落札利回り(直近の10年債経金落札利回り)です。

個人向け国債の固定金利型には5年満期と3年満期があります。

前者の適用利率(年率)は基準金利-0.05%で後者は-0.03%です。

金利の下限は0.05%となっています。

これらの基準金利は募集期間開始日の2営業日前において、市場実勢利回りを基に計算した、期間5年または3年の固定利付国債の想定利回り(5年債や3年債の想定利回り)です。

個人向け国債の金利には固定と変動の2種類があります。

固定金利は発行時に設定された利率が満期まで一定です。

実勢金利が低下しても設定時の金利が適用され変化しません。

固定金利は実勢金利の状況に左右されないため、国債の発行時に最終的な投資結果がほぼ予想できます。

ただし実勢金利が上昇した場合にも変化しないので、変動金利型のように利子が増えません。

実勢金利は市中金利とも呼ばれます。

金融市場で資金の貸し借りが発生する場合に適用される金利のことです。

変動金利の場合は半年ごとに適用金利が変更されます。

金利が変わるので受け取る利子額も変化します。

このタイプは実勢金利に応じて変化するので、発行時には最終的な投資結果が分かりません。

実勢金利が上昇すれば受け取ることができる利子は増えますが、低下した場合は減少します。

ただし最低金利より減少することありません。

国債の基礎知識

・国債とは

国債は国庫債券を省略したもので、国家が証券を発行して行う借入金です。

発行時には償還期限と利率が定められます。

購入者は利率に応じた利息を受け取ることができます。

償還期限を迎えた場合には、元金である発行時の金額が支払われます。

発行時の金額は額面額もしくは額面価格と呼ばれています。

国債は国家が元本と利子の支払いを保証しており、金融商品の中でも安全性が高いという特徴があります。

ただし政府が一方的な条件変更を行う場合があるだけでなく、保有者は債務の履行について強制力を持ちません。

国債の安全性は国家の財政状態などによって判断されます。

格付け機関は各国が発行する国債の評価と格付けを行っています。

国債は市場で取引が行われており価格は常に変動します。

価格と金利は裏返しの関係にあります。

これらは世界情勢や発行国の社会、経済、政治、財政の状況を反映しています。

投資家が国債を購入すると、国が決めた金利を半年に1回受け取ることができます。

満期になれば元本全額が償還されます。

国債は国が投資家から借金したもので一種の債券です。

発行している国が破綻しない限り元本割れのリスクはありません。

国債には様々な種類のものがあります。

・国債の分類

国債は利付国債と割引国債の2種類に分類することができます。

利付国債は半年に1回、年に2回利子の支払いが行われます。

発行時に満期が設定されており、満期時に発行価格と同額の額面金額が支払われるのが通常です。

基本的に満期時まで保有していれば元本割れすることはありません。

ただし発行元である国家が破綻した場合は回収不可能となる可能性があります。

割引国債には利子の支払いがありません。

発行時に満期が設定されていますが、発行価格は満期までの利子が額面金額から割り引かれた額です。

割引国債も満期時に額面金額を受け取ることができます。

額面金額は発行価格を上回っているので、差額が利益になります。

日経225先物取引とは

・日経225先物取引の特徴

日経平均株価は東京証券取引所の1部に上場している銘柄のうり、代表的な225銘柄の株価を平均して算出します。

銘柄の入れ替えや権利落ちなどがある場合でも、連続性が失われないように工夫されているのが特徴です。

権利落ちとは権利確定日を過ぎたため、権利を取得できなくなった状態を指します。

先物取引では期日と価格が予め決まっており、特定の商品を扱うことになります。

日経225先物取引では225銘柄から算出された日経平均株価を対象としています。

そのため一般的な株式投資のように個別の銘柄を分析・選択しなくて済みます。

買い注文だけでなく、売り注文からも取引を始めることが可能です。

相場が上昇・下降のいずれの局面にある場合でも、利益を得ることができます。

日経平均株価には情報を取得しやすいというメリットがあります。

テレビやラジオ、新聞などで容易に動向を確認することが可能です。

個人投資家でも機関投資家と同じように情報を取得することができます。

個別銘柄では様々な要因が株価に影響を及ぼします。

代表的な変動要因は株式の分割・併合、株主優待や配当金などです。

一方で日経平均株価は主要な225銘柄の平均によって算出されています。

株式市場全体の動きを表しており、個別銘柄に起こった特別な事象に左右されません。

225社に分散投資しているのと同じ効果があります。

仮にそのうちの数社が倒産した場合でも数%の影響しかありません。

倒産のリスクを最小限に抑えることができます。

流動性が非常に高いのも日経225先物取引の大きな特徴です。

流動性が高いので注文をしたいときにスムーズに取引を成立させることができます。

日経225先物取引では取引に必要な費用が手数料と消費税だけです。

信用取引のように金利や貸株料、事務管理手数料などは発生しません。

日経225先物取引の最低取引単位は日経平均株価の1000倍です。

日経225先物取引では3月と6月、9月と12月が限月とされており、19の限月で取引が可能となっています。

3月と9月のうち直近3限月と、6月と12月のうち直近16限月が対象です。

取引期間は3月限と9月限が1年半ですが、6月限と12月限は8年となっています。

・日経225miniとは

日経225miniは日経225先物取引の10分の1の額で取引ができる金融商品です。

最低取引単位は日経平均株価の100倍となっており、少ない額で投資できます。

日経225先物取引では10円刻みで相場が変動しましたが、日経225miniの場合は5円刻みで相場が変動します。

最低取引額が日経225先物取引の10分の1なので、証拠金も10分の1です。

日経225miniで取引が行われるのは全部で16限月です。

3月と9月のうち直近3限月、6月と12月のうち直近10限月、これら以外の直近3限月が取引対象になります。

各限月の満期日である第2金曜日の前日が取引最終日です。

金利スワップとは

金利は一律ではありません。

短期変動金利と長期固定金利が存在します。

前者は中央銀行の政策金利に連動しており、経済状況や政策判断によって随時変動します。

後者は住宅ローンや長期債券などです。

固定一律の金利で数十年にわたる長期契約に適用されます。

一般的に金融機関は低い変動金利で資金調達をします。

調達した資金に利率を上乗せし、固定金利で貸し出すことになります。

金融機関は変動金利と固定金利の金利差から利益を得ることができます。

仮に変動金利が固定金利を超えて上昇した場合には、逆サヤが生じるため金融機関に損失が発生します。

金利変動によるリスクを回避することを目的として、アメリカの投資銀行によって金利スワップが考案されました。

例えば金融機関が3%の変動金利で預金を集めて、5%の長期固定金利で貸し出したとします。

変動金利が5%を超えると金融機関に損失が発生することになります。

金利スワップを行うと、金融機関は投資銀行などの幹事企業(アレンジャー)と金利を交換してリスクを回避できます。

金融機関が投資銀行に4%の固定金利を支払うと、投資銀行が代わって変動金利の支払いを負担します。

変動金利が上昇するリスクは投資銀行の負担です。

金融機関は4%の固定金利で資金を調達し、5%の固定金利で貸し出したのと同じことになります。

1%の利益を得られるだけでなく金利変動のリスクを回避できます。

投資銀行は金利スワップをするにあたって、変動金利の平均が4%を超えないと考えています。

そのまま保持すれば1%の利益が得られます。

ただし予想が外れた場合は損失を被ることになります。

投資銀行は自ら金利スワップを行わず、変動金利が上昇しないと考える他の顧客を仲介することも可能です。

この場合は当事者双方から手数料を得ることができます。

金利スワップは取引量の増大にともなって様々な方法で行われるようになりました。

オプション取引と組み合わせたスワップションなど金融工学により様々な取引方法が生み出されています。

スワップ取引は将来の金利変動リスクを回避する目的で金融機関の間で急速に普及しました。

また企業の財務管理にも用いられています。

汎用性が高いため、個人向けの金融商品にも採用されるようになりました。

デリバティブ(金融派生商品)とは

・デリバティブ(金融派生商品)の特徴

デリバティブ(金融派生商品)は基礎となる金融商品の変数値によって相対的に価値が決まります。

基礎となる金融商品は原資産と呼ばれます。変数値は市場価値や指標などです。

原資産から派生した資産や契約がデリバティブ(金融派生商品)と呼ばれています。

デリバティブ取引は本来、将来の価格変動を回避するために当業者によって行われます。

当業者は債券や証券、実物商品や様々な権利などを取り扱っており、価格変動によって損失を被るリスクを抱えています。

証券は株式や船荷証券、不動産担保証券などです。

当業者は上場商品の売買や売買の媒介・取次、生産・加工などを行っています。

原資産の一定割合を証拠金として供託すると、一定幅の価格変動リスクを他の当業者や市場参加者に譲渡できます。

デリバティブ取引はリスクヘッジを目的とした一種の保険契約です。

ただし実際には投機や裁定取引を目的としてデリバティブ取引が行われています。

・2種類のデリバティブ市場

デリバティブ市場には金融商品取引所などの公開市場を介さないものと、公開市場を介するものの2種類があります。

前者は店頭デリバティブ、後者は市場(上場)デリバティブと呼ばれています。

市場に参加する個人投資家にとっては市場デリバティブの方が親しみやすい存在です。

しかし市場規模は店頭デリバティブの方が圧倒的に大きいという特徴があります。

2013年における世界全体の店頭デリバティブ市場は約700兆ドルでしたが、市場デリバティブは100兆ドル未満でした。

店頭デリバティブで取引される主な原資産は金利と為替です。

日本では7割以上を金利スワップが占めています。

金利スワップとは変動利率と固定利率の支払い義務を相互に交換(スワップ)する取引です。

取引の当事者が想定元本や機関、利息交換日、機関を決定します。

店頭デリバティブには以下のようなものがあります。

金利スワップ
為替予約
通貨オプション
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)
商品先物取引
天候デリバティブ
バリアンスワップ
差金決済取引
一部の外国為替証拠金取引(FX)

店頭デリバティブ取引の当事者は以下のような感じです。

金融機関↔事業会社や法人
事業会社↔事業会社
金融機関↔個人投資家

店頭デリバティブを行っている事業会社と法人には大企業や中小企業、教育機関や宗教法人など様々なものがあります。

シカゴ・マーカンタイル取引所とは

シカゴ・マーカンタイル取引所は、アメリカ合衆国のシカゴにある商品先物取引所と金融先物取引所です。

英語名はChicago Mercantile Exchangeで、CMEと省略されます。

mercantile exchangeの意味は「商品取引」です。

1989年にシカゴ・バター・卵取引所としてシカゴ商品取引所から独立しました。

シカゴ商品取引所の英語名はChicago Board of Tradeで、CBOTやCBTと略されます。

この世界的な影響力を持つ商品先物取引所は、トウモロコシや大豆などの穀物を扱っており先物価格を形成する力があります。

2007年7月にはシカゴ・マーカンタイル取引所に買収され、世界最大のデリバティブ取引所が誕生しました。

シカゴ・マーカンタイル取引所では1970年代から先物取引などデリバティブ商品の上場に積極的に取り組んでおり、現在の取引量は世界でも最大規模です。

日経平均先物も1日23時間にわたって取り扱っています。日本の投資家からも注目される取引所です。

シカゴ・マーカンタイル取引所はもともと非営利の民間組織でした。

2000年11月に株式会社化され、2002年の12月に株式を公開しています。

2007年にはシカゴ商品取引所を買収し、2008年8月にはニューヨーク・マーカンタイル取引所が経営統合され傘下に入りました。

シカゴ・マーカンタイル取引所では金利と株価指数、為替、畜産物、不動産、天候デリバティブの先物取引とオプション取引を扱っています。

天候デリバティブとは金融派生商品(デリバティブ)の一種で気候デリバティブとも呼ばれます。

気象現象によって生じるリスクが取引対象です。損害保険とは違い、気象現象を直接的な対象とする権利(オプション)の売買を行います。

天候デリバティブでは気温や湿度、降雨量や降雪量、霜、風速、台風などを基準とするストライク値を条件として定めます。

条件を上回るか下回った場合に、自動的に補償額が支払われる権利(オプション)を取引します。

権利を購入するにはオプション料を支払う必要があります。

オプション料と一般的な保険の掛け金は異なるものです。

損害保険ではないので、実際に損害が発生するかどうかは関係ありません。

天候デリバティブは気象によって補償金が支払われます。

収益が天候に左右される事業のリスク回避を目的として利用されています。

以下は気温によって損害が発生する事業を対象とした天候デリバティブの例です。

1.寒いと損失が発生する場合

実際は寒かった→損失発生→補償あり
実際は暑かった→利益発生(損失なし)→補償なし(オプション料を失う)

2.暑いと損失が発生する場合

実際は寒かった→利益発生(損失なし)→補償なし(オプション料を失う)
実際は暑かった→損失発生→補償あり

天候デリバティブは1997年にアメリカのエンロン社で開発されました。

1999年にはシカゴ・マーカンタイル取引所に上場されています。

ボラティリティを取引に活用するには

実際のオプション取引ではインプライド・ボラティリティのトレンドが活用されています。

インプライド・ボラティリティにはトレンドがあり、一定の範囲内で上昇と下降を繰り返すのが特徴です。

オプションによってインプライド・ボラティリティの大体の変動幅は決まっています。

周期的な上下変動があるので、取引に利用することが可能です。

災害など何らかの事態が発生し相場が大きく変動した場合は、周期的な変動幅を超えて動くこともあります。

ヒストリカル・ボラティリティやインプライド・ボラティリティが相対的に低い位置にあると判断できる場合、過去の統計データから後に原資産の価格が大きく変動することが予想されます。

インプライド・ボラティリティが高い水準

オプション価格は高くなる

ボラティリティは下落する可能性が大きい

売り手が有利で買い手が不利な状況

インプライド・ボラティリティが低い水準

オプション価格は低くなる

ボラティリティは上昇する可能性が大きい

売り手が不利で買い手が有利な状況

ボラティリティが高いとオプション価格が高くなります。

売り手は高値でオプションを売ることができます。

現在ボラティリティが高い状態なので今後は低下する可能性があります。

ボラティリティが低下すればオプション価格も下がるので、今のうちに売ってしまった方が有利です。

反対に買い手は高値でオプションを購入しますが、購入後に価格が下がる可能性があります。

つまりボラティリティが高いと売り手に有利で買い手に不利な状況です。

ボラティリティが低いとオプション価格が安くなります。

買い手は安値でオプションを購入可能です。

しかも今後ボラティリティが高まりオプション価格も上昇する可能性があります。

今オプションを買えば利益を得られる可能性があるため買い手にとって有利な状況です。

一方で売り手はオプションを安く売らなければなりません。

保有していれば価格が上昇して利益を得られた可能性があるので、現在は売却するのに不利な状況です。

インプライド・ボラティリティの高低は過去のデータと比較して判断します。

高ければオプション価格が高くなり、低ければ安くなります。

ボラティリティの高低やトレンドに注意して、割高な時期に売り割安な時期に買うようにすることが重要です。

安く買って高く売るためのタイミングを判断するために、インプライド・ボラティリティが利用されています。

ヒストリカル・ボラティリティとインプライド・ボラティリティとは

過去のデータに基づいて算出された変動率のことです。

株式や為替、金利や債券、コモディティなど原資産価格の過去一定期間における変化率の平均値から求められます。

統計学における標準偏差のことです。

日本の株式市場におけるヒストリカル・ボラティリティには日経平均HVがあります。

日経平均HVは日経平均株価を対象として日本経済新聞社が算出・公表しているものです。

過去20日間の日経平均株価の毎取引日における変化率から算出されます。

この指標は日経平均株価の変動の激しさを表しています。

過去20日間の騰落率(変化率)に基づいて、年間の営業日数である250日間に換算した年率の数値で示されます。

この指標は過去の指数値から計算するためヒストリカルと呼ばれています。

日経平均HVは市場の小さな動きが続くと下がり、激しい変動が起きると上がります。

ヒストリカル・ボラティリティは過去の値動きから現在の値動きを予測するのに使われるのが一般的です。

算出する際には20日間もしくは30日間の期間が用いられるケースが多く見られます。

日次の標準偏差を年率換算する際に年間の営業日を250日から260日と考えるのが通常です。

そのため250から260の平方根を因数として乗じます。

ヒストリカル・ボラティリティが低い場合は、相場が変動する力が溜まってきていると考えられています。

これから変動が起こると考えられるため、ヒストリカル・ボラティリティが低いとポジションを決定するのに適した時期であるとされます。

ヒストリカル・ボラティリティが高い商品と低い商品を組み合わせることで、リスク分散を図る投資手法も存在します。

インプライド・ボラティリティ(IV)は予想変動率とも呼ばれます。

株式や為替、金利や債券、コモディティなど原資産価格の将来の変動率を予測したものです。

インプライド・ボラティリティという用語は主にオプション取引で使われます。

市場参加者が期待している将来の価格変動を表す指標です。

現在のオプション価格から将来の変動率を予測します。

インプライド・ボラティリティはヒストリカル・ボラティリティと現在のオプション価格に基づいて、諸条件を設定した上で算出されます。

現在のオプション価格から逆算して求めるのが特徴です。

一般的な実務ではブラック・ショールズ・モデルを使って計算します。

以下はブラック・ショールズ方程式の解です。




オプション価格を決める要素は6つあります。

権利行使価格と原資産の市場価格、決済日までの残存期間、原資産の配当利回り、短期金利、ヒストリカル・ボラティリティです。

ヒストリカル・ボラティリティは過去のデータに基づいて算出されたオプション価格の変動率を表しています。

これらの6つのデータを使えば、オプションの理論価格を算出できます。

一方で、現在の市場におけるオプション価格は、市場参加者の将来の期待を織り込んだ上で形成されています。

ヒストリカル・ボラティリティを使って算出した価格が過去のデータに基づく理論値です。

実際の市場で形成されている価格は、現在の市場参加者の期待を表すインプライド・ボラティリティに基づいていると考えられます。

今、権利行使価格と原資産の市場価格、決済日までの残存期間、原資産の配当利回り、短期金利が決まっており、市場においてオプションがある価格で取引されているとします。

これらの数値を利用すれば、現在におけるインプライド・ボラティリティを逆算することが可能です。

ブラック・ショールズ・モデルは原資産価格の変動率を一定と仮定するのが通常です。

しかし最近では変動率が時間とともに変化するという考え方が主流になっています。

モデル・フリー・インプライド・ボラティリティは原資産価格の変動率の変化を許容する概念です。

インプライド・ボラティリティはオプション価格がどのように変化したのかを数値化したもので、市場参加者の将来の予想が反映されています。

オプション取引におけるテクニカル分析の指標の1つです。

インプライド・ボラティリティが高い→価格変動しやすいと考えられる→市場参加者が将来の値動きに安心感を持つ→オプション価格が高くなる
インプライド・ボラティリティが低い→価格変動がしにくいと考えられる→市場参加者が将来の値動きに不安感を持つ→オプション価格が安くなる

オプション取引におけるボラティリティについて

・オプションの価格(プレミアム)を決める要素とは

オプションの価格(プレミアム)は本質的価値と時間的価値を合計したものです。

オプション価格=本質的価値+時間的価値

本質的価値:市場価格と権利行使価格の差額
時間的価値:決済日までの残存期間とボラティリティ、金利の価値

時間的価値は決済日までの残存期間とボラティリティによって決まります。

オプション価格を決める要素は以下の通りです。





これらの要素の中でも金利の影響はあまり大きくありません。現実の取引ではほぼ無視することが可能です。

・ボラティリティとは

ボラティリティとは価格変動幅の比率を意味します。価格変動幅が大きいほどボラティリティは高くなり、小さいほど低くなります。

オプション取引では権利行使価格と比較して市場価格が不利な場合、権利を放棄することが可能です。権利を放棄した場合は、オプション料分が損失になります。

コールオプション(買う権利)を買ったと仮定すると、市場価格が上昇すれば利益を得られます。

市場価格が下落し権利行使価格以下になった場合でも、権利を放棄すれば損失はオプション料に限定されます。

ボラティリティが高いほど価格の変動幅が大きいので、価格が大きく上昇することもあれば下落することもあります。

オプション取引では、仮に価格が大きく下落しても権利を放棄すれば損失を限定できます。

逆に価格が大きく上昇すれば、大きな利益を得ることが可能です。

コールオプションを買った場合、ボラティリティが高いほど大きな利益を得られる可能性があります。

そのためボラティリティの高いオプションほど高く評価することができます。

ボラティリティが低い場合、価格が上昇しても変動幅が小さいため大きな利益を得ることができません。

価格が上昇したとしてもイン・ザ・マネー(権利行使が有利な状態)にならないこともあります。

そのためボラティリティの低いオプションは低く評価されます。

ボラティリティが高い→時間的価値が高い→オプション価格が高くなる
ボラティリティが低い→時間的価値が低い→オプション価格が低くなる

オプション取引におけるイン・ザ・マネーとアウト・オブ・ザ・マネー

イン・ザ・マネーとアウト・オブ・ザ・マネーはオプション取引で使われる重要な言葉です。

前者は原資産の取引金額が、権利を行使すると利益が出ることを意味します。

後者は反対に権利を行使すると損失が発生することです。

権利行使価格と原資産の価格が同じ場合はアット・ザ・マネーと呼ばれます。

オプション取引では買う権利(コールオプション)と売る権利(プットオプション)の売買が行われます。

コールオプションを買った場合は、権利行使価格が原資産の価格よりも低いときに利益が発生します。

例えば権利行使価格が50円で原資産が100円ならば、50円で100円のものを購入できるので権利を行使した方が得です。

反対に原資産が40円ならば、50円で40円のものを購入することになります。

損失が発生する場合は権利が行使されません。コールオプションの価値はゼロになります。

オプション取引には買う権利(コール)と売る権利(プット)が存在します。

イン・ザ・マネーとは権利を行使した方が得な状態のことです。

反対にアウト・オブ・ザ・マネーとは権利を行使しない方が得な状態を意味します。

本質的価値とは権利行使価格と市場価格の差額です。

権利を行使すると有利になる場合、オプションに本質的価値があります。イン・ザ・マネーはオプションが本質的価値を持っている状態のことです。

コールオプション(買う権利)の場合:権利行使価格<市場価格
プットオプション(売る権利)の場合:権利行使価格>市場価格

イン・ザ・マネーの状態にあるオプションは本質的価値があります。

権利行使の可能性が高いため、価格も上昇します。

アウト・オブ・ザ・マネーは権利を行使しても利益が得られない状態です。

この状態にあるオプションは本質的価値が0で時間的価値のみがあります。

コールオプション(買う権利)の場合:権利行使価格>市場価格
プットオプション(売る権利)の場合:権利行使価格<市場価格

アウト・オブ・ザ・マネーの状態にあるオプションは権利を行使できません。

そのため価格は安くなります。

この状態では空売りをすることで利益を得ることが可能です。

時間的価値は決済日が近づくほど減少します。

仮にコールオプションを空売りしたとすると、決済日が近づくほど安く買い戻すことができます。

オプション取引におけるカレンダー・スプレッドについて

・オプション取引におけるカレンダー・スプレッド

カレンダー・スプレッドは限月間スプレッドやホリゾンタル・スプレッド、タイム・スプレッドなどとも呼ばれます。

同一種類の金融商品で満期が異なるものの買いと売りを組み合わせた取引のことです。

オプション取引では通貨や権利行使価格、種類が同一のもの満期(権利行使期間)が異なるものを組み合わせます。

カレンダー・スプレッドでは権利行使価格がともに30円で限月(満期)が3月(期近)と6月(期先)の権利(コールオプション)を売り買いするというような形になります。

コールオプションとは将来の期日に商品を購入する権利です。

オプション取引では先物取引のように直接的な商品(先物)の売買が行われるのではなく、買う権利(コールオプション)や売る権利(プットオプション)の売買が行われます。

先物取引では期日に必ず決済をしなければなりません。

しかしオプション取引では将来の期日における商品の価格が権利行使価格と比較して不利な場合、権利を放棄することができます。

3月決済の買う権利を売り、6月決済の買う権利を買った場合、3月に先物価格が権利行使価格よりも低いと価値がないので権利は行使されません。

6月決済の買う権利には時間的価値があります。

・オプションの価値を決める時間的価値と本質的価値

時間的価値とは権利行使期間までのオプション契約の残存期間の価値です。

決済までの期間が長いほど、オプションの価値が高くなります。

時間的価値:決済までの残存期間の価値(ボラティリティと金利の影響も受けます。)

オプション取引における現在の価値は本質的(本源的)価値と呼ばれます。本質的価値は権利行使価格と市場価格の差額です。

本質的価値:権利行使価格と市場価格の差額

・オプションの価値を表すオプション料

オプション取引では権利を確保するための対価としてオプション料(プレミアム)と呼ばれる手数料を支払います。

オプション料は本質的価値と時間的価値によって構成されます。

オプション料:本質的価値+時間的価値

オプション取引では予想通りに相場が動けば権利を行使して利益を得ることができます。

反対に予想に反して不利な状況になった場合は、権利を放棄し損失を回避することが可能です。

先物取引と異なり将来のリスクを回避できる仕組みとなっています。

この仕組を利用するにはオプション料を支払わなければなりません。

オプション料はオプションの価値を表しています。

オプションの価値を決める要因は現在の市場価格と権利行使価格、満期までの残存期間、ボラティリティ、金利です。

ボラティリティとは将来における金融商品の価格変動姓を意味します。

オプション取引では一定期間において価格がどの程度の変動特性を持つかということを表しています。

権利行使価格が900円の商品を購入する権利は、市場価格が1000円であれば100円の本質的価値があります。

900円で1000円のものを購入できるので、100円の利益が発生します。

権利行使価格が1000円の場合は市場価格と同じなので、本質的価値は0です。同様に権利行使価格が1100円の場合も本質的価値は0になります。

1000円のものを1100円で購入すれば100円の損失が発生します。

コールオプションは放棄して損失の発生を回避できるので、本質的価値は0となります。

オプション取引では相場が不利な状況の場合、権利を放棄することができます。

この場合はオプション料のみ無駄になりますが、取引をしなくてよいのでそれ以上損失は発生しません。

遠い将来ほど予想するのは困難なため、取引を行うリスクも高くなります。

しかしオプション取引では自分に不利な場合は権利放棄が可能です。

満期までの残存期間が長いほど損失を回避しつつ利益が得られるタイミングを待つことができます。

そのため残存期間が長いオプションほど時間的価値が高まります。

オプション取引でカレンダー・スプレッドを行う場合、期近の権利を売って期先の権利を買います。

期近の満期日における先物価格が権利行使価格より低い場合、価値がないため権利は行使されません。

この場合、期近の満期の際にはオプション料を含む売買による差額に損失が限定されます。

期近の満期日における先物価格が権利行使価格より高い場合は、期近・期先両方の権利が行使されることになります。

権利行使価格が同一なので、売買による損益は相殺されます。

期先の権利は残存期間があるので時間的価値が大きくなります。

・オプション取引と他の取引におけるカレンダー・スプレッドの違いとは

先物取引などで行われる一般的なカレンダー・スプレッドでは、割高な商品を空売りして割安な商品を購入します。
期近物を売って期先物を買うのがスプレッド買い、期近物を買って期先物を売るのがスプレッド売りです。

スプレッド買い:期近→売り、期先→買い
スプレッド売り:期近→買い、期先→売り

しかしオプション取引では期近物を売って期先物を買う取引(スプレッド買い)のみが行われます。

オプション取引におけるオプション料は本質的価値と時間的価値によって構成されています。

本質的価値は現在の市場価格と権利行使価格の差額です。

この2つの価格の差額は、将来的に有利にも不利にも動く可能性が存在します。

ただし満期までの残存期間が長いほど市場価格が有利に動くことを期待できます。

時間的価値は満期までの残存期間が長いほど高くなり、満期に近づくほど低下します。

一定の割合で低下するのではなく、満期に近いほど急激に下がります。

オプション取引における権利には、時間的価値が満期に近づくほど低下するという特徴が存在します。

そのため期近物の現在の価値は満期と比較して割高と考えられます。

割高な商品は将来的に値下がりすると考えられるので、オプション取引におけるカレンダー・スプレッドでは期近物が空売りされることになります。

一方で割安な商品には価値が上がる可能性があるため期先物が買われます。

空売りされた割高な期近物が予想通り値を下げ、購入した期先物が値上がりすれば利益が発生します。

カレンダー・スプレッドでは2つの商品の価格差が縮小するほど利益が大きくなります。

もし空売りした期近物が値上がりすれば損失が発生しますが、購入した期先物が予想通り値上がりしていれば利益が出るので、損失を相殺できます。

先物取引とオプション取引の違いとは

先物取引はある商品を予め決められた期日と金額で取引することを約束する契約です。

一方でオプションは権利を指します。

オプション取引では将来の決められた満期日に予め決まった価格(権利行使価格)で商品を売り買いする権利を売買します。

買う権利はコールオプション、売る権利はプットオプションと呼ばれています。

先物取引は商品を対象とした売買契約ですが、オプション取引は権利を対象とした売買が行われる点に違いがあります。

プットとコールはそれぞれ買い注文と売り注文を出すことができます。

権利と売買の組み合わせは4種類あります。

先物取引→商品の売買契約
オプション取引→商品を購入・売却をする権利の売買契約

コールオプション(買う権利)→買う、または売る
プットオプション(売る権利)→買う、または売る

オプション取引では手数料を払って権利を購入します。

売買の対象は商品ではなく権利です。

手数料は戻りませんが権利を放棄することもできます。

オプション取引における手数料は、不動産契約などの手付金と似たような性質があります。

将来の価格が権利行使価格と比較して有利な場合には、権利を行使して売買を行います。

不利な場合には、手数料が無駄になりますが権利を放棄した方が得です。

例えば将来1ドル100円で1万ドルを売って円を買う権利を購入したとします。

将来の価格が90円になった場合、1万ドルの価値は90万円です。

110円になった場合は110万円になります。

価格が下がった場合は権利を行使すれば1万ドルを100万円で売ることができます。

90万円で売る場合と比較して10万円得をすることになります。

反対に110円になった場合は権利を放棄した方が得です。

1万ドルが110万円で売れるので、権利を行使した場合と比較して10万円得になります。

オプション取引を利用すれば価格変動のリスクを回避できます。

またオプション取引には利益になる場合だけ権利を行使し、損失が発生する場合は権利を放棄できるというメリットがあります。

先物取引では相場に関わらず予め約束した価格で決済をしなければなりません。

オプション取引では有利な場合だけ権利を行使できます。

裁定取引(アービトラージ)のメリットについて

裁定取引(アービトラージ)では、同じ価値を持つ商品の一時的な価格差を利用して利益を得ます。

連動性のある2つの商品のうち、割高な方を売って割安な方を買います。

価格差が縮小した時点で反対売買すれば利益を確定できます。

裁定取引は機関投資家などがリスクを抑えて利ざやを稼ぐためによく行われています。

株価指数などの現物価格と先物価格を利用した取引が代表的です。

先物は将来の一定時期に商品を受け渡す条件で売買契約をすることですが、商品自体を表すこともあります。

割高な先物を売却し、同時に現物を購入するのが裁定買いです。

反対に割安な先物を買って現物を売ることを裁定売りと呼びます。

裁定取引は株式市場における現物と先物だけでなく為替や金利、商品など様々な市場で行われている投資方法です。

裁定買い:割高な先物を売却、割安な現物を購入
裁定売り:割安な先物を購入、割高な現物を売却

割高なものは価格が下る可能性が高いので空売りをします。

割安なものは価格が上がる可能性があるので買います。

空売りをした商品は価格が下がるほど利益が大きくなります。

現物買いした商品は価格が上がるほど利益が増えます。

前者の価格が下がり後者の価格が上がれば、2つの商品の価格差が縮小し、利益を得られます。

空売りと現物買いを同時に行っていれば、いずれかの予想が外れた場合でも利益と損失を相殺できる可能性が高くなります。

裁定取引を行えばリスクを抑えて利益を得ることができます。

裁定買いをした場合に利益を確定するには、反対売買により先物を買戻して現物を売ります。

反対売買で決済して利益を確定することを裁定解消と呼びます。

裁定解消で行われる現物売りは裁定解消売りと呼ばれています。

売りと買いを同時に行い、2つの商品の価格差(サヤ)の伸縮から利益を得る方法はサヤ取りと呼ばれます。

サヤ取りによる投資方法には、裁定取引の他にもペアトレードやロング・ショートなどがあります。

サヤ取りは主に機関投資家によって行われています。

個人投資家が一時的な商品間の価格差を発見して投資を行うのは困難です。

一般的に価格差が少しでも生じればすぐに機関投資家によって裁定取引が行われて歪みが解消されてしまいます。

機関投資家などの市場参加者は常に裁定取引の機会を伺っており、歪みは短時間で解消されるのが通常です。

裁定取引には適正な価格形成を促進するというメリットもあります。

ロールオーバーの具体的な方法とは

先物取引においてロールオーバーをするには、まず満期が近い限月のポジションを決済して、期先のポジションを新たに取引することが考えられます。

この方法では当限と期先の先物を個別に取引する必要があります。

当限とは期限の月のことで「とうぎり」と呼ばれています。

直近限月取引や第一限月取引とも呼ばれます。

取引最終日・期限日が最も早く到来する限月を指します。

個別の取引でロールオーバーをする場合、2回注文を行わなければなりません。

システム障害などがあれば注文できない可能性もあります。

また2回目の取引が完了するまで相場の変動リスクに直面します。

個別の取引によるロールオーバーはリスクが大きいためあまり行われていません。

カレンダー・スプレッドを利用すると、異なる限月の先物を一度に売買できます。

先物取引で売り(ショート)ポジションを保持している場合、カレンダースプレッド(スプレッド買い)によって当限の買い注文と期先の売り注文を同時に行えば限月の乗り換えが可能です。

反対に買い(ロング)ポジションを保持している場合は、スプレッド売りにより当限の売り注文と期先の買い注文を同時に行います。

カレンダー・スプレッドによって決済せずにロールオーバーを行えば、注文の際のリスクや相場変動のリスクを回避できます。

一般的にはカレンダー・スプレッドによるロールオーバーが多く行われています。

個別に取引を行う場合とカレンダー・スプレッドを利用する場合の大きな違いは、前者が保有ポジションを一旦決済するのに対して、後者は決済せずに取引を行う点にあります。

カレンダー・スプレッドは1回の取引で限月の乗り換えが可能です。

個別に2回取引を行う場合よりもリスクが小さいというメリットがあります。

カレンダー・スプレッドとは

カレンダー・スプレッドはストラテジー取引の一種に分類されます。

ストラテジー取引は先物取引やオプション取引においてリスクを回避する方法の1つです。

複数の限月取引や売り・買いを組み合わせたポジションを同時に成立させます。

カレンダー・スプレッドは限月間スプレッド取引やリゾンタルスプレッド取引、タイムスプレッド取引などと呼ばれます。

同じ商品の異なる限月間における価格差の変動に注目したスプレッド取引のことです。

スプレッド取引は2つの商品間の金利差や価格差のスプレッド(差額)を利用します。

割高な銘柄を売って割安な銘柄を買い、利ざやを得るのが基本です。

カレンダー・スプレッドではポジションの決済をせず、期近と期先の価格差で売買を行います。

取引が成立した場合には、期近と期先の2つの限月で先物取引が行われることになります。

期先の買いと期近の売りを組み合わせた取引はスプレッド買いと呼ばれます。

反対に期先の売りと期近の買いの組み合わせはスプレッド売りです。

スプレッド買い:期先→買い、期近→売り
スプレッド売り:期先→売り、期近→買い

3月限と6月限など、同一の先物商品の異なる限月間におけるスプレッドが一定水準以上に乖離した場合、割高な限月の売り建と割安な限月の買い建を同時に行います。

限月間のスプレッドが一定の水準に戻った段階で2つの先物取引について反対売買を行うと利益を確定できます。

カレンダー・スプレッドでは割高な限月の銘柄を売って割安な限月の銘柄を買います。

割高な銘柄は価格が下る可能性があり、割安な銘柄は上がる可能性があります。

売りと買いを同時に出すことで、商品の価格がどのように変化しても利益と損失を相殺してリスクを減らすことができます。

カレンダー・スプレッドは裁定(アービトラージ)取引の一種です。

裁定取引では連動性のある銘柄の組み合わせの価格差を利用して利益を得ます。

似たような取引にペアトレードがあります。

ペアトレードでは株式などで連動性の高い銘柄をペアにし、価格が乖離しているタイミングで割高な方を空売りして割安な方を買います。

価格差が縮小したときに反対売買を行えば利益が得られます。

裁定取引とペアトレードの違いは取引対象です。

前者は同一の商品を対象としますが、後者は異なる商品を対象としています。

先物取引である商品の3月限が100円、6月限が150円と仮定します。

この場合、割安なのは3月限で、割高なのは6月限です。両者の間には50円の価格差があります。

3月限を買って、6月限を空売りします。

3月限が120円、6月限が130円になると、価格差は10円に縮小しています。

前者は100円で買ったものが120円になっているので20円の利益です。

後者は150円で空売りしたものが130円になっているので、やはり20円の利益です。

トータルでは40円の利益が発生することになります。

反対に価格差が拡大した場合を考えてみます。

3月限が90円、6月限が160円になったとすると価格差は60円です。

両者とも10円の損失となり、総合で20円の損失になります。

いずれかの予想がはずれた場合を考えてみます。

3月限が90円になり、6月限が120円になると価格差は30円と縮小しています。

この場合だと前者は10円の損失で後者には30円の利益が発生しています。

トータルでは20円の利益が発生することになります。

カレンダー・スプレッドを行っても損失が発生する可能性は存在します。

しかしリスクを抑えて取引を行うことも可能です。

先物取引におけるロールオーバーについて

先物取引のようなデリバティブ(金融派生商品)には満期があります。

満期日に銘柄を乗り換えると、それ以降も建て玉(ポジション)を維持できます。

ロールオーバーとは、満期日において銘柄を乗り換えることです。

受渡期日までの期間が最も先にある限月や、期近限月と比較して決済期限が遅い限月のことを期先と呼びます。

限月とは期限満了する最終決済月のことです。

一般的に先物取引やオプション取引には決済期限である限月があります。

限月の中でも期近は期限が近いもので、期先は遠いものです。

ロールオーバーでは取引の最終日までに期日の売り(買い)と期先の買い(売り)を同時に行います。

現在のポジションを取引最終日までに決済して、同時に次の限月商品についてポジションを建てることになります。

例えば買いポジションを売った価格で次の限月の商品を買えば、ポジションを持ち続けるのと同じです。

ただしロールオーバーを行うと多少の利益や損失が発生することもあります。

一般的にロールオーバーは決済日の1週間ほど前から行われます。

カレンダー・スプレッドによって期近の満期日以降にポジションを維持することも可能です。

先物取引やオプション取引における限月とは

限月は先物取引やオプション取引で先物の期限が満了する月を意味します。

例えば3月が限月の場合には取引の期限が3月に満了することになります。

日本における株式や債権の先物取引では3月と6月、9月と12月が限月とされています。

オプション取引の限月は毎月です。
 
最終決済価格決定日または特別清算日が期限の満了日とされます。

決算の価格は一般的にSQ(特別清算指数)と呼ばれています。

満期日はSpecial Quotation(特別清算指数)を省略してSQ日とも呼ばれます。

SQ日は基本的に限月の第2金曜日です。

quotation:引用、引用文、引用句、時価、相場、相場づけ、(確定した価格などの)見積もり、見積書

特別清算指数とは日経225先物やTOPIX先物などの株価指数先物取引や、株価指数のオプション取引などで、最終的な決済をするための清算価格(指数)のことです。

取引対象が指数の場合、期日に最終的な決算を行うために必要とされます。

満期日の前営業日が取引最終日です。

それまでに反対売買をしなかった場合は、当初の売買価格とSQの差額で自動的に決算されることになります。

次の限月以降も建て玉を継続するには、期限を乗り換えるロールオーバーが必要です。

限月という言葉は一般的に取引所で扱われる商品について使用されます。

店頭取引などの場合に使われるのは満期日や権利行使日です。

3月と6月、9月と12月のSQ日が近づくと、先物取引やオプション取引における取引量が増える傾向が見られます。

これらの取引における市場の動向は、現物市場にも大きな影響を及ぼします。

SQ日と前日は特に相場が乱高下しやすいとされます。


債券先物取引の決済方法

債券先物取引の決済方法は受取と差金決済の2つです。

一般的に受取よりも差金決済の方が広く利用されています。

受取方式では限月に現物債券が売り方から買い方に受け渡されます。

限月は現物債券を受け渡す期日で債券先物取引では3月と6月、9月と12月です。

受渡日は限月の20日とされています。

限月において受け渡し可能な銘柄は受渡適格銘柄と呼ばれます。

この銘柄は複数存在する場合もあります。

複数存在する場合は売り方が自由に選択することができます。

売り方が受渡適格銘柄を自由に選択できることを一般的に「売り方勝手渡し」と呼びます。

適格銘柄のうち売り方にとって最も有利なものは最割安銘柄と呼ばれます。

差金決済方式では限月までに反対売買を行い差益が決済されます。

反対売買は先物取引や信用取引でポジションとは逆の注文を出すことです。

買った場合は売り、売った場合は買って決済します。

債券先物を購入した場合→価格上昇で差益が発生→売却すると差益獲得
           →価格下落で差損が発生→売却すると損失確定

債券先物を売却した場合→価格上昇で差損発生→購入すると損失確定
           →価格下落で差益発生→購入すると差益獲得

債券先物取引における理論価格の算出方法

債券先物取引は標準物を対象として行われます。

標準物架空の債券なので、現実に同じ債券は存在しません。

ただし、標準物と同じ現物債が存在すると仮定して理論価格(先渡価格)を算出することができます。

先物取引では一定期間の経過後に清算します。

理論価格は現物価格に清算期日までの金利負担や配当金(クーポン収入)などを加味して算出されます。

具体的には以下のように計算します。

理論価格=現物価格×[1+(短期金利-配当利回り)×決済までの日数/365]

短期金利は保有・調達費用、配当利回りは保有による収入です。

決済日(期日)には日数が0になるため、現物価格と債券先物の価格は等しくなります。

先物取引では将来の期日に決済を行って現物債を手に入れます。

期日までの配当金を受け取るのは買い手ではなく売り手です。

期日前の債券先物の価格を決めるには、買い手が期日まで短期金利で現物債を借りたと仮定する必要があります。

買い手が期日前に現物債を借りて期日まで保有すると仮定した場合、借り手は配当金を受け取れますが、期日までの短期金利を支払わなければなりません。

期日前に現物債を(借りたと仮定して)取得した場合には、配当金の形で収入が発生する一方で金利など保有・調達費用も発生します。

先物取引では期日に決済(受渡)を行って現物債を取得しますが、このとき現物債と先物債券は等価です。

しかし期日前に(借りて)調達したと仮定すると、実質的な価格は現物価格より配当利回り(直利)分だけ割り引かれ、保有・調達費用分だけ高くなります。

例えば期日の3日前に100円の現物債を借りて調達したと仮定します。

収入は1日10円で利息は1日5円です。

期日である3日後に現物債と先物債券は同じ100円になりますが、借り手3日間で30円の配当収入を得ます。

配当を考慮すると、3日前の70円の現物債には3日後の100円の現物債と同じ価値があります。

そのため現物価格である100円から3日分の配当収入である30円を控除します。

利息は1日5円発生し、借り手は3日間で15円を支払うことになります。

3日後に100円の価値のある現物債を、期日よりも早い3日前に手に入れるためには15円の費用が発生します。

そのため現物価格の100円に短期金利分の15円を加えます。

期日前の先物債券の価格(理論価格)は、期日までの収入や保有・調達費用を考慮して決めなければなりません。

そのため期日までの日数に応じて現物価格から収入を控除し、保有・調達費用を加えて評価することになります。

理論価格は期日前に現物債を調達したと仮定した場合の価格なので、先渡価格とも呼ばれています。

国債先物取引の利回りについて

国債の金利には表面利率や利回りなどの概念があります。

クーポンレートは表面利率や利率と呼ばれ、利子付債で半年ごとに支払われる利子の大きさを表します。

固定利付債の場合は額面金額(100万円)に対する1年分の利子がパーセントで表示されています。

仮に額面金額100万円で年に2万円の利子が支払われるとすると、クーポンレートは2%です。

この場合は半年ごとに1万円ずつ支払われることになります。

国債のクーポンレートは発行時の市場の状況によって決定されます。

具体的には格付けや金利情勢、発行年限などがクーポンレートの決定に影響します。

一旦決まったクーポンレートは償還まで変わらず一定です。

格付けは信用格付けとも呼ばれます。

債券などの元本償還や利払いの確実性をアルファベットや数字などの簡単な記号で表したものです。

債券の発行体は格付け会社に財務状況や収益力を評価してもらい、投資家は格付けに基づいて投資判断を行います。

格付けが高いほど市場から少ないコストで資金を調達することができます。

発行体が依頼して格付けが行われる場合と、格付け会社が勝手に行う場合があります。

後者は勝手格付けと呼ばれます。

格付け会社は格付け機関や信用格付け会社とも呼ばれます。

一定の条件を満たした格付け会社は、金融商品取引法に基づいて金融庁に登録され監督下に置かれています。

国債の利回り(最終利回り)とは1年あたりの運用益をパーセントで表したものを指します。

運用益には1年間の利子収入と、償還額面か売却価格と購入価格の差額が含まれます。

購入価格との差額は1年あたりに換算したものです。

国債の購入価格は時価なので、市場の状況や購入する金融機関によって変化します。

1年間あたりの利回りは、国債の購入価格によって変化することになります。

債券投資には直接利回り(直利)という概念も存在します。

直接利回りは利付債の購入価格に対する1年間に受け取る利息の割合のことです。

最終利回りと異なり、償還差損益や売却損益を考慮していません。

債券を額面と異なる金額で購入した場合、クーポンレートとも異なる数値になります。

直利の計算方法は以下のとおりです。

直利=(1年あたりの受取利息/購入価格)×100

この数値は利付債が本来持つ総合的な投資収益率ではありません。

しかし利息収入だけでどの程度の利回りになるかを知ることができます。

国債先物取引の種類

国債先物取引の対象銘柄全部で4種類です。

1.中期国債先物取引:取引対象は中期国債標準物、クーポンレートは3%、償還期限は5年

償還期限が債券先物の中で最も短いのが特徴です。

2.長期国債先物取引:取引対象は長期国債標準物、クーポンレートは6%、償還期限は10年

債券先物の中でも最も多く取引されています。

ミニ長期国債先物取引と比較してラージ長期国債先物取引とも呼ばれます。

3.超長期国債先物取引:取引対象は超長期国債標準物、クーポンレート:は3%、償還期限:は20年

最も償還期限の長い銘柄です。

4.ミニ長期国債先物取引:取引対象は長期国債標準物の価格

取引単位は長期国債先物取引の10分の1です。

受渡ではなく差金決済のみで決済が行われます。

取引単位が小さいので個人投資家にも扱いやすい銘柄です。

クーポンレートは債券の額面に対して毎年受取れる利子(利息)のことで表面利率とも呼ばれます。

固定レートと変動レートが存在します。

債券の4つのリスクとは

債券には主に4種類のリスクが存在します。

信用リスクは発行主体が倒産したり財政難に陥り債務不履行となるリスクです。

流動性リスクは債券を時価で売却する際に買い手が見つからずに売却不可能となるリスクを指します。

為替リスクは外貨から円に交換する際に、為替変動によって差損が発生するリスクです。

価格・金利変動リスクは、債券を時価売却する際に価格と金利の変動によって損失が発生するリスクを指します。

信用リスク:発行主体の債務不履行
価格・金利変動リスク:価格・金利変動による損失
流動性リスク:買い手が見つからない
為替リスク(カントリー・リスク):為替変動による差損
 
債券先物取引では価格と金利が固定されます。

そのため金利変動のリスクを回避できるというメリットがあります。

金利が上がると債券の価格は下落します。

例えば金利が2%から3%に上昇した場合、古い2%の債券は誰も買わなくなります。

金利2%の債券を売るには価格を下げなければなりません。

3%と2%の債券で受け取ることができる利益の差額分だけ価格が下落することになります。

債券先物取引では金利が予め固定されるため金利変動リスクの回避が可能です。

証券会社は金利変動リスクを回避して資産運用ができるので市場における債券の流通性が安定します。

市場の流通性が安定すると発行主体は引き受けリスクを回避できるようになり、市場の拡大につながります。

債券の金利と価格の関係は以下のとおりです。

1.金利上昇→価格低下
2.金利低下→価格上昇

債券は現物と先物を組み合わせるとリスクを回避することができます。

現物債券を購入した場合は、金利が下がって価格が上昇したときに売却すれば利益を得られます。

しかし予想に反して金利が上昇し価格が低下した場合は、売却すると損失が発生します。

先物取引で売り注文を出しておけば、金利が上昇し価格が低下しても損失と利益が相殺されます。

将来現物債券を購入したいと考えていても、金利が下がって価格が上昇してしまうことがあります。

そのような場合には希望価格で購入することができません。

実際に購入すると出費が多くなってしまいます。

しかし予め先物取引を利用して現在の安い価格で買い注文を出しておけば、将来価格が上昇しても現在の価格で購入できます。

この債券を値上がった価格で売却すれば利益で増えた出費分を相殺できます。

この方法は買いヘッジと呼ばれます。

保有している現物債券を売却したい場合は、予め先物取引で売り注文を出しておけば値下がりによる損失を利益で相殺することが可能です。

この方法は売りヘッジと呼ばれています。