先物取引の様々なリスク

先物取引には様々なリスクが存在します。

まず元本と利益が保証されていないので、原資産の価格変動によって損失を被る可能性があります。

損失が膨らんで証拠金が不足すると追証が発生します。

証拠金を追加しても損失が膨らめば、証拠金を取り戻すことができなくなりさらに大きな損失を被る可能性があるので注意しなければなりません。

先物取引では市場の需給関係によって価格が決まります。

相場が大きく変動し注文数が少なくなれば、希望価格での取引が不可能になる可能性が考えられます。

必ずしも希望価格での取引ができるわけではないことを理解した上で取引を行わなければなりません。

世界情勢の変化などが原因で急激に商品の価格が変動する可能性が存在します。

先物取引では即座に契約内容を変更できないため損失が拡大することも考えられます。

複数の商品を扱っていれば分散投資によりリスクを抑えることができます。

急激に価格が変動した場合、サーキットブレーカーが発動されることもあります。

サーキットブレーカーは相場を安定させるため1日の値幅を制限する制度です。

先物取引では毎月サーキットブレーカーが設定されます。

内容は商品や取引所によって異なります。一旦発動されると5分から15分間にわたって取引が中断されます。

取引に異常がある場合は証拠金の引き上げや代用有価証券の制限など規制措置が取られることがあります。

そのような場合には追加の証拠金を提供したり、代用有価証券と現金を差し換えなければなりません。

取引所と業者のシステムや、取引所と業者、投資家を結ぶ通信回線などに障害が発生する可能性があります。

そのような場合には情報の配信や取引が遅延・中断・停止します。

金融商品取引法ではシステム障害で発生した損失が補償の対象外とされています。

リスクを回避するためには、事前に障害発生時の取引方法について調べておくとよいでしょう。

先物取引には様々な種類があります

先物取引では決められた期日に、日経平均株価などの指数を決められた価格で売買します。

株価が上昇する見込みがある場合は買い注文、安くなる可能性がある場合は売り注文により利益を得ることができます。

例えば代表的な先物取引である日経225先物は、日経平均株価を売買して利益を得ることを目的とした株価指数先物取引です。

先物取引ではFXと同じようにレバレッジをかけて高額な取引をすることができます。

レバレッジが大きいほど利益も大きくなりますが、損失も大きく可能性があるので注意が必要です。

先物取引のレバレッジは商品の種類によって異なります。

取引が可能な時間帯は日中と夜間の2つです。

東京市場における先物取引の価格は、ニューヨーク市場の価格に基づいて決まります。

日中取引の時間は9時から15時45分までです。

夜間取引は16時半から翌朝の4時まで行われています。

ニューヨーク市場が開かれている時間は日本では夜です。

夜間取引ではニューヨーク市場の動きをリアルタイムで追うことになります。

先物取引は金融先物と商品先物の2種類に分類することができます。

1.金融商品先物取引とは

金融商品先物取引では金融商品の金利などが取引対象になります。

具体的には金利と株価指数、国債の3種類です。

いずれも将来の値動きを予想して取引が行われます。

・金利先物取引

金利先物取引は金利指数を対象としたデリバティブ(金融派生商品)の一種です。

日本では東京金融先物取引所で取引が行われています。

ユーロ円3か月金利先物やユーロ円3か月金利先物オプションなどの商品が存在します。

LIBORの3か月物ユーロ円金利先物では、将来の指定された日に公表されるLIBORの3か月分の円の金利を予測します。

予測したレートで約定し、指定日に金利が公表されたら、金利差に相当する金額で差金決済が行われます。

LIBORはロンドンにおける銀行間取引で資金の提供者から提示される金利のことです。

ロンドン銀行間取引金利とも呼ばれます。

多くのユーロ債における参照金利として使われています。

金利先物取引では短期金利を指標としており、予め決定した期日に決められた条件で資金の貸し借りを行います。

一般的な先物取引では契約価格が売買の値段(呼び値)とされます。

しかし金利先物取引では貸し借りの金利が呼び値です。

取引は反対売買によって終了します。売買の締切日として限月が定められています。

ユーロ円3か月金利先物、ユーロ円3か月金利先物オプションの限月は3月と6月、9月と12月の第3水曜日の2営業日前です。

金利先物取引では差金決済が行われます。

実際に決済で貸付や借入が行われるわけではありません。

売却・購入の価格差により利益を受け取ったり損失分を支払ったりします。

例えばユーロ円3か月金利先物で将来の指定日における金利が1.5%と予測して資金を借りたとします。

実際に公表された金利が1.6%だった場合、1.6%の金利を支払い1.5%の金利を受け取ります。

つまり0.1%分の金利を支払うことになります。

・株価指数先物取引

株価指数先物取引には日経225先物取引や東証株価指数先物取引などがあります。

株価指数を対象とした金融商品です。

定められた期日であるSQ日まで建て玉を保持した場合、SQ値で決済が行われます。

SQ値とは特別清算指数のことです。

特別清算指数はSQ日の株価指数の始値にも続いて決められます。

SQ日のある月のことを限月と呼びます。

SQ日まで建て玉を保持せずに最終取引日前に次の限月に乗り換えることもできます。

限月を乗り換える行為はロールオーバーと呼ばれます。

基本的にロールオーバーのタイミングは自由とされています。

シカゴ・マーカンタイル取引所には慣習的なロールオーバー日の定めがあります。

米国の株価指数は最終取引日の8日前の東部標準時午前9時30分、日経225先物取引は最終取引日の4日前がロールオーバー日です。

株価指数は株式の相場状況を表す指数です。

個々の銘柄の株価を一定の計算方法で総合した上で数値化します。

原則として基準値を100や1000として指数化されたものが指数です。

平均株価などの本来は指数でない数値を含めて指数と表現することもあります。

日本市場には様々な株価指数が存在します。

東証株価指数(TOPIX)や日経225(日経平均株価)などが代表的な株価指数です。

他にもジャスダックインデックスや東証マザーズ指数、ヘラレクレス指数などがあります。
 
先物取引では証拠金を提供して差金決済が行われます。

買い注文と売り注文のいずれからでも取引を開始することが可能です。

株価指数先物取引の取引単位は株価指数×乗数で決まります。

例えば日経225先物は株価指数の1000倍ですが、日経225mini先物は100倍です。

日経225や東証株価指数は東京証券取引所第一部に上場した銘柄を対象としています。

ただし先物取引である日経225先物や東証株価指数先物などは大阪取引所で取引が行われます。

日本国内で株価指数先物取引が行われるのは大阪取引所です。

アメリカではシカゴ・マーカンタイル取引所が金利や株価指数などの先物取引を扱っています。

・国債先物取引

債券先物取引は特定期日に特定の債券を予め決定された価格と数量で取引します。

日本では長期国債先物や中期国債先物、超長期国債先物、ミニ長期国債先物が大阪取引所に上場され取引が行われています。

国債先物取引で実際に発行されるのは日本国債ではありません。

架空の債券である標準物が取引されます。

標準物は取引を円滑にするため、証券取引所が利率や償還期限などを標準化して設定したものです。ただし決済日には現物の債券を受け取ることができます。

国債先物取引でも株式の場合と同じく売買単位や限月などの条件が決まっています。

一定の証拠金を提供して取引が行われます。

期日前に決済することも可能です。基本的に決済は反対売買を行い差額を受け取る方法(差金決済)によって行われます。

債券先物取引では金利と価格が予め決められています。

そのため期日までは金利や価格変動の影響を受けずにすみます。
 
例えば100円で債券を購入する契約をして期日に105円になっていた場合、100円で105円の債券を購入できます。

一方で95円に値下がりしていた場合は、95円のものを100円で購入しなければなりません。

安いものを高値で購入しなければなりませんが、予め100円の出費を想定していれば損失発生を回避できます。

ただし価格が100円以上になっていない状態で売却すると損失が発生します。

国債先物取引では売り注文から取引を始めることもできます。

100円で売り注文を出して95円まで値下がりした場合は、95円のものを100円で売却できるので利益が発生します。

国債先物取引では相場の状況やポジションによって利益や損失が発生することになります。

2.商品先物取引とは

・商品先物取引の特徴

商品先物取引では農産物や鉱工業材料などの商品を対象としいています。

予め決められている日に一定の価格で売買を行う契約です。

商品先物では金やガソリン、トウモロコシなど日常生活に近い場所にある商品が取引されます。

将来の一定の期日に商品を受渡すること約束して現時点で価格を決めますが、期日まで待つ必要はありません。

一定の期日が到来する前にいつでも反対売買を行うことが可能です。

反対売買で取引を終了させる場合、商品の受渡は行わずに差金決済によって清算されます。

商品先物取引は農林水産省と経済産業省の管轄です。

取引は東京商品取引所と大阪堂島商品取引所で行われています。取引所によって扱う商品には違いがあります。

東京商品取引所は世界で2番目に取引量が多く、17種類もの商品を扱っています。

商品先物は買い注文だけでなく売り注文から取引を開始することも可能です。

値上がりと値下がりのいずれの局面でも利益を得ることができます。

通貨の取引を行うFXでは高金利な通貨の売りポジションを保有している場合、毎日スワップ金利を支払わなければなりません。

スワップ金利はスワップポイントとも呼ばれます。

取引を行う2つの通貨の金利差のことです。

高金利通貨を買って低金利通貨を売る場合には毎日スワップ金利を受け取ることができます。

一方で高金利通貨を売って低金利通貨を買う場合はスワップ金利を支払わなければなりません。

商品先物では金利の受け払いがないので、商品価格の動向だけを予想すればよいという特徴があります。

FXと比較して取引が非常にシンプルです。

取引に必要となる証拠金は取引代金総額の1%から10%ほどです。

少額の保証金でレバレッジを効かせた取引が可能なので、効率的に資金を使えます。

積極的な資産運用を行いたい人に適した投資対象です。

・商品先物取引で価格変動のリスクを回避するのに役立ちます

金属や鉱物資源、農産物などの価格は常に一定というわけではありません。

価格の変動は生産者や消費者だけでなく製造業者、流通業者や販売業者など商品に関わる全ての人に影響を及ぼします。

先物取引を行うことで価格変動のリスクを回避することが可能になります。

農産物の生産者の場合、作物を育てている段階では価格が高くても、出荷する段階で値下がりする可能性が存在します。

先物市場で価格が高い時期に売り注文を出していれば、後に値下がりするリスクを回避できます。

製造業者の場合、利益を得るために安く原材料を仕入れてコストダウンを図る必要があります。

価格が安い時期に先物市場で買い注文を出しておけば、後に値上がりするリスクを回避できます。

商品先物取引では、各取引所が受渡供用品を定めています。

受渡供用品は決済の際に売り方から供用可能な商品のことです。

一定の品質が保証されています。

・先物取引によって商品価格が適正に形成されます

商品先物市場には様々な参加者が存在します。

当業者は実際に現物を扱っており、上場商品の売買や売買の媒介・取次、生産・加工などを行う業者です。

その他にも機関投資家や個人投資家などが参加しています。

参加者たちによる注文内容は全て板に表示されます。

板は気配値とも呼ばれており、コンピュータの画面上に表示された銘柄・値段ごとの売買の注文のことです。

先物市場で行われた注文は誰でも見ることができます。

透明性が高く様々な人々が参加することで適正な商品価格が形成されます。

つなぎ売りを利用して少ないリスクで株主優待を得る

つなぎ売りでは現物取引の買い注文と信用取引の新規売建注文を行います。

この方法ならば株価が下落しても損益を相殺することができます。

つなぎ売りを行えば、株価下落のリスクを抑えながら株主優待を得ることが可能となります。

また一般信用取引の場合には逆日歩などの費用を抑えることもできます。

つなぎ売りの方法は非常に簡単です。

まず権利付最終日までに現物取引で買い注文を出します。

取引が成立したら次に短期の一般信用取引の新規売建を発注してください。

注文する数量と株価は現物取引と同じにします。

短期の一般信用取引のであれば、証券会社は証券金融会社を利用せずに株式を調達するので逆日歩が発生しません。

権利付最終日の翌日以降に現物取引で買った株式を現渡しして、信用取引の売り建玉を決済します。

つなぎ売りでは同じ価格の現物株式と売り建玉を同量保有するのがポイントです。

つなぎ売りには手数料などの費用が必要になります。

株主優待の価値が費用を上回るように取引を行うことが重要です。

一般信用取引では逆日歩が発生することはありません。

しかし人気のある株主優待銘柄は、権利獲得日が近づくとつなぎ売りによる売建需要が増えます。

短期的な一般信用取引で売建が可能な銘柄と数量には制限があります。

人気銘柄では在庫がなく、短期の一般信用取引ができないケースも見られます。

制度信用取引で空売りをすると逆日歩が発生することがあるので注意が必要です。

費用を抑えるには、なるべく一般信用取引ができる銘柄を選ぶとよいでしょう。

逆指値を利用すれば追証が発生するリスクを少なくできます

逆指値は指定した価格まで株価が上がった場合に買い注文を、下がった場合に売り注文を出すことです。

一般的な取引では株価が上がったら売り、下がったら買うという指値注文が行われています。

逆指値では指値とは注文内容が反対になります。

希望価格まで上がった場合→買い
希望価格まで下がった場合→売り

指値注文では安く買って高く売ることで利益を得ようとします。

しかし逆指値は株価が予想とは反対の動きをした場合に、損切りすることを目的として行われます。

例えば株価が予想に反して下落した場合に素早く売り注文を出して損失の発生を抑えます。

損切りを行う水準は投資家自身が設定できます。

また逆指値は株価が上昇した場合に利益確定を目的として行われることもあります。

例えば空売りで株価の下落が続くと予想していたところ、反転して値上がりする可能性がある場合、逆指値を利用すれば株価が上昇しても一定の利益を確定できます。

・指値と成行

株式の売買をする方法には指値注文と成行注文の2種類があります。

前者は売買する価格を投資家自身が指定して注文を出します。

指値注文で買い注文を出した場合、株価が指定した価格以下でなければ取引が成立しません。

同様に売り注文を出した場合には、株価が指定価格以上にならなければ取引は不成立となります。

指値買い→希望価格以下まで下がったら買う
指値売り→希望価格以上まで上がったら売る

成行注文では価格を指定しません。

買い注文を出した場合には、取引時間中で最も低い価格の売り注文に対応して取引が成立します。

反対に売り注文を成行で出す場合は、最も高い買い注文に対応して取引が成立することになります。

成行買い→最も低い売り注文で取引成立
成行売り→最も高い買い注文で取引成立

指値注文では投資家が希望した価格で取引を成立させることができます。

ただし指定した価格以上か以下にならないと取引が成立しません。

そのため取引を成立させる機会を逃す可能性があります。

一方で成行注文は素早く取引を成立させることができますが、思わぬ価格で成立してしまうことがあるので注意が必要です。

価格を重視して取引を行う場合には指値注文が適していますが、取引を素早く成立させたい場合は成行き注文が適しています。

これらの注文方法は状況に応じて使い分けることが大切です。

信用取引の委託保証金について

・信用取引には委託保証金が必要です

信用取引を行うためには担保として現金か代用有価証券を証券会社に預けます。

現金は100%評価されますが、代用有価証券は一定の換算率をかけて評価することになります。

換算率は証券会社によって違いが見られます。

証券会社に預けた現金や株式は委託保証金と呼びます。

法令で委託保証金は30万円以上と定められています。

また委託保証率は約定代金の30%以上とされます。

1000万円の信用買いをする場合は、30%の300万円を委託保証金として預けなければなりません。

実際の委託保証金率は各証券会社によって定められています。

個別銘柄の信用取引が規制されたり、各社が必要と判断した場合には変更されることがあります。

委託保証金率の計算方法は以下のとおりです。

委託保証金率=委託保証金(現金+代用有価証券評価額)/建玉約定代金×100

信用取引では最低委託保証金維持率に注意しなければなりません。

委託保証金維持率とは現在の建玉約定代金に対する委託保証金の割合のことです。

信用買いで値下がりした場合や空売りで値上がりした場合には、評価損が発生し委託保証金から控除されます。

各証券会社では最低委託保証金維持率を設定しています。

評価損が発生して維持率を下回った場合には、追加の委託保証金を提供しなければなりません。

追加の委託保証金は一般的に追証と呼ばれています。追証が一旦発生すると、維持率を回復しても支払う義務が残ります。

解消するためには入金したり、建玉を返済して決済するなどが必要です。

期日までに追証を解消できない場合は、翌営業日の始めに全ての建玉が反対売買によって決済されます。

決済で損失金額が発生した場合には委託保証金の現金が充当されることになります。

代用有価証券が任意売却される可能性も存在します。

追証を発生させないためには、常に委託保証金維持率に注意しながら信用取引を行う必要があります。

・追証の発生させないために必要なこととは

安心して信用取引をするためには、追証を発生させないための工夫が必要になります。

信用取引では委託保証金の約3.3倍までの取引が可能です。

ただし最高限度までレバレッジを効かせる必要はありません。

低倍率で取引を行うか、余裕を持って保証金を預けておけば追証の発生する可能性が少なくなります。

最高限度額まで取引を行うと、余裕を持って取引を行うことができなくなるので注意が必要です。

法定されている最低額の30万円を預け、最低委託保証金率が20%で信用取引を行うと仮定します。

預けた保証金の3倍である90万円の取引を行う場合、最低委託保証金は18万円です。

この場合の保証金の余力は12万円となります。

取引額90万円に占める余力の割合は約13.3%です。

これ以上含み損が発生すると、最低委託保証金の18万円を割り込んで追証が発生します。

預けた保証金の2倍である60万円の取引を行う場合、委託保証金は12万円となります。

この場合の余力は18万円です。取引額の60万円に占める余力の割合は30%となります。

30%以上の含み損が発生した場合には追証が発生します。

同じ額の委託保証金を預けて取引を行う場合でも、取引額が少ない方が余力は大きくなります。

追証が発生する可能性が少なくなるので、精神的にも余裕を持って取引を行うことができます。

なるべく現金を保証金とすることも、追証の発生を防ぐ上で重要です。

有価証券を保証金として提供すると、株価が下落して評価額が目減りすることがあります。

信用取引をしている銘柄で含み損が発生すると、委託保証金が減少します。

預けている株式の株価が下落すればさらに委託保証金が減ることになります。

最低委託保証金を割り込むと追証が発生してしまうので注意しなければなりません。

全ての委託保証金を現金にすれば、信用取引をしている銘柄の含み損以上に保証金が減るのを防げます。

保証金に占める現金の割合が増えるほど、余裕を持って信用取引を行うことができます。

信用取引をしていると、株価が予想とは反対方向に動いて追証が発生することがあります。

被害を拡大させないためには、素早く損切りをすることが重要です。

追証の発生を回避するために有効な方法をまとめると以下のようになります。

1.レバレッジを効かせすぎない
2.有価証券ではなく現金を保証金として預ける
3.素早く損切りをする

株式の信用取引を始めるには

・信用取引制度の存在意義とは

信用取引では現金や株式を証券会社に担保として提供します。預けた担保の約3.3倍の金額の株式取引を行うことができます。

現物取引をするためには株式の購入資金を用意しなければなりません。

また株式を保有していなければ売却も不可能です。

現物取引だけでは市場で取引可能な投資家が限定されてしまいます。

市場に参加する投資家の数や取引量が少ないと、わずかな売買でも株価が大きく変動する可能性があります。

一部の投資家の行動によって株価が決まるので、株式の公正な価格が形成されなくなるおそれが存在します。

信用取引では手持ちの資金や株式を担保にして取引を行うことが可能です。

市場に参加できる投資家の数や取引量が増えるので、公正な価格が形成されやすくなります。

・信用取引の仕組みとは


信用取引には買建と売建の2つのポジションがあります。

買建は保証金を証券会社に担保として預けて資金を借り、株式を購入します。

この場合の返済方法は2種類あります。

1.買建玉(買った株式)を返済売りして決済します。

株式の売却代金が返済に充当されます。

売却代金から融資を受けた買付代金と手数料、金利、諸費用を控除した残りが投資家の利益もしくは損失となります。

2.買建玉の代金を貸し手に支払って引き取ります。

この方法は現引きと呼ばれます。買建玉分の代金を支払って現物株として保有する方法です。

売建は保証金を担保として証券会社から株式を借りて売却することを指します。
この場合の決済方法も2種類あります。

1.返済買いをして売建玉(空売りした株式)を返済します。

返済買いには買い戻し代金や手数料、諸費用が必要になります。

空売りをしたときに得た代金から、買い戻し代金などを控除した残りが投資家の利益もしくは損失です。

2.保有している売建玉と同じ株式を貸し手に返却して、現金を引き取る方法。

この方法は現渡しや現提、品渡しと呼ばれます。

証券会社の口座から現物の保有株と売建玉がなくなりますが、諸費用を控除した上で売建玉分の代金を受け取ることができます。

・信用取引では約3.3倍のレバレッジをかけることが可能です。

現物取引では保有している資金の範囲内でのみ取引を行うことができました。

信用取引では約3.3倍ものレバレッジをかけることができます。

例えば30万円の保証金を預けた場合、約100万円の取引が可能になります。

少ない資金で効率的に投資を行うことができる点が信用取引の大きな魅力です。

担保は現金だけでなく株式を提供することもできます。

保有している現物株式を時価評価することで、保証金として差し入れます。

この株式は代用有価証券と呼ばれます。あまり取引を行っていない株式を有効活用することができます。

ただし代用有価証券にできない銘柄もあるので確認が必要です。

・信用取引では1日に繰り返し取引を行うことができます。

現物取引ではサーフィントレード(乗り換え売買)を行うことが可能です。

サーフィントレードでは同一受渡日において、同一資金で異なる銘柄に乗り換える売買を行えます。

例えば200万円を預けて180万円分のA株を買い、170万円で売却すると残りは190万円です。

この190万円でB銘柄を100万円分購入すると残りは90万円となります。

B銘柄を120万円で売却すれば保有資金は210万円です。

この資金を使ってさらにC銘柄を購入することができます。

同一の約定日・受渡日に同一の資金で異なる銘柄の現物取引が可能です。

最初の200万円で180万円分のA銘柄を購入し、170万円で売却すれば残額は190万円になります。

この190万円でB銘柄を購入することはできますが、さらにA銘柄を購入することはできません。

重複して同一銘柄の売買を行うと、差金決済と見なされるため禁止されています。

最初に400万円を預け、200万円分のA銘柄を買ったとします。

A銘柄を200万円で売却すれば、保有資金の総額は400万円のままです。

このうち最初にA銘柄を購入するために使った200万円は、さらにA銘柄を購入する資金として使えません。

しかし残りの200万円であれば重複売買にならないのでA銘柄購入に使えます。

現物取引でA銘柄を購入・売却し、さらにA銘柄を信用取引で買建てすることは可能です。

この場合は証券会社に預けた資金が保証金として拘束されることになります。

現物取引では重複売買が禁止されています。

一方で信用取引の場合は1日に何度も取引を行うことができます。

銘柄が同じか異なるかは関係ありません。同じ保証金を使った回転売買が可能となります。

例えばA銘柄を100万円で買建てて104万円で返済売りした場合に、さらにA銘柄の買建てと返済売りが可能です。

信用取引ならば一定の資金を効率的に活用することができます。

・信用取引は売り注文から始めることが可能です

信用取引では株式を保有していなくても最初に売り注文を出すことができます。

株価が高いときに借りた株式を売って、安くなったときに買い戻せば差額が利益になります。

信用取引では相場が下落している局面でも利益を出すことができます。

現物取引の場合は株式を保有していなければ最初に買い注文を出さなければなりません。

そのため相場が下落している局面で利益を得ることは不可能です。

信用取引では相場が下落局面でも空売りをして利益を得ることができます。

空売りは株価が下がるほど利益が大きくなるという特徴があります。

相場の状況に関わらず、臨機応変に対応して利益を得られる点が信用取引の大きな魅力です。

・信用取引には4種類があります

信用取引の種類は以下の4つです。

制度信用取引:短期から中期(6か月)までの取引です。
無期限の一般信用取引:期限を気にすることなく取引ができます。
短期の一般信用取引:株主優待で利益を得たい人に最適です。
一般信用取引の一日信用:デイトレードをしたい人に適しています。

証拠金制度とは

証拠金は契約の成立と履行を確実なものにするため、当事者の一方が担保として預ける金銭のことです。

先物取引やオプション取引を行う場合、証券会社で口座を開設します。

口座開設の際に証券会社に預ける金銭が証拠金です。

取引において投資家に損失が発生した場合には、担保である証拠金によって補うことになります。

先物取引やオプション取引では、対象物の将来の価格によって利益や損失が発生します。

証拠金があることで、損失が発生した場合でも決済の履行を確保することができます。

例えば先物取引では予想が外れた場合に売り手と買い手の双方に損失が生じます。

そのため両者とも証拠金を預けなければなりません。

オプション取引では予想が外れた場合、売り手のみ損失が発生します。

証拠金の提供が必要なのは売り手だけです。

先物・オプション取引において、証券会社は基本的に顧客から預かった証拠金を直接的に預託します。

顧客が書面で同意した場合は、委託証拠金を証券会社が預かって取引証拠金として預託することが可能です。

この場合は証券会社が保有する金銭や代用有価証券に差し換えることになります。

証券会社も自己取引に関する証拠金を預託します。

先物・オプション取引では証券会社を通して日本証券クリアリング機構などの清算機関に、取引証拠金が預託されます。

証券会社も自己取引分を預託しています。取引証拠金は有価証券で代用することができますが、必要とされる金額を下回る場合は追加の証拠金が必要になります。

必要とされる証拠金額を定めるのは清算機関です。

FXでも取引を行うには証拠金が必要とされます。

新たな取引や注文をする場合、ポジションを維持する場合に求められるのが必要証拠金です。取引金額の想定元本に必要証拠金率をかけて計算します。

FXには必要証拠金だけでなく有効証拠金があります。

取引をする際に利用可能な証拠金の総額のことです。

実際にどのくらいの取引が可能かを表しています。預けた資金とポジションの損益分、決済したポジションの損益を合算します。

FXで証拠金取引を行うには、開設した口座に必要な額の証拠金を預けます。

個人口座の場合は最大で25倍ものレバレッジをかけて取引を行うことが可能です。レバレッジを上げるほど取引額が大きくなり損益率も上がります。

取引をするには最低限の必要証拠金が求められます。市場の為替レートは常に変動していますが、実勢価格で損益を確認し、常に必要証拠金額が維持されていなければなりません。

必要金額に満たないと、不足金額を補填する必要があります。

期限までに追加の保証金を預けなければなりません。

取引を行うために必要最低限の証拠金額を満たすだけでなく、為替の変動リスクを考慮して多めに証拠金を要しておくと安心です。

建玉と反対売買について

・建玉とは

信用取引や先物取引、オプション取引における建玉(たてぎょく)は、約定後に反対売買や現引き・現渡しをせずに残っている未決済契約の総数を表しています。

たんに玉と略して呼ばれることもあります。

証券会社からお金や株を借りて信用取引を行った場合には、基本的に期限内に返済しなければなりません。

返済されるまでに資金を借りて買った株を「買い建玉」、借りてから売った株を「売り建て玉」と呼びます。

ある契約において建玉が1枚ある場合、その契約に関して売り手と買い手が1人ずついることになります。

建玉は英語ではポジションと呼ばれます。

オンライントレードで信用取引を始めた個人投資家の多くにとって、建玉よりもポジションの方が親しみ深い表現です。

買い建玉は買いポジションやロング・ポジションと呼ばれます。

英語のlongには強気という意味があります。

売り建玉は売りポジションやショート・ポジションと呼ばれます。

shortには弱気という意味があります。

買い・売りを問わず決済を行うことをポジションを外す、もしくは解消するなどと表現します。

制度信用取引の場合、買い建玉や売り建玉は6か月以内に反対売買を行って決済するのが決まりです。

信用買いの残りが多いと期限内に反対売買を行わなければならないので、将来的に売り圧力が増し市場における需給状況が悪化する可能性があります。

ある銘柄が人気になると信用買いが増えます。

また信用買いの残りが多い場合でも、売り返済の期限まで全く返済が行われないということはありません。

株価が100円から200円まで上昇すると仮定します。

投資家は株価が200円になるまで、何度も信用買いと売り返済を繰り返すのが通常です。

例えばまず100円で信用買いをし、150円で売り返済します。次に130円で買い直して160円で売り返済を行います。

同じように170円で買い直して200円で売ります。

このように高い頻度で信用買いの回転売買が行われるのが一般的です。

株価が下落傾向にあり信用買い残が多くどの投資家にも利益が発生していない場合、将来的な市場の需給状況の悪化や売り圧力が予想されます。

一方で信用売り残は業績悪化や不祥事などで銘柄の人気が低下したときに、割高な株価が是正される局面で増えます。

株価のさらなる下落を予想して信用売り残が増えることもありますが、期日までに買い戻しが必要になるので注意しなければなりません。

信用売り残が増えると、将来的には買い戻し需要が増えるので株価が上昇すると考えられます。

・反対売買とは

反対売買は資産運用において保有している建玉を決済する方法です。

新規に建てたときとは反対の取引によって決済します。

株式の信用取引や株価指数、商品先物取引などで行われます。

反対売買を行うと評価損益の状態だったものが実現損益に変わります。

建玉の決済方法には反対売買以外にも現引きや現渡しが含まれます。

現引きや現渡しは将来の需要に影響しないので注意が必要です。

・現引きと現渡しについて

現引きは品受けとも呼ばれる信用取引や商品先物取引における決済方法の1つです。

買い建玉を決済する際に、買付の代金を渡して株式や商品などの現物を受け取ることを指します。

信用取引や商品先物取引では買い建玉を売却し差額の受け渡しで決済する方法と、買付代金や金利などの金銭を支払って現物を受け取り決済する方法があります。

現引きは買付代金を支払って現物を受け取る決済方法です。

現渡しは現提や品渡しとも呼ばれます。信用取引や商品先物取引における決済方法の1つです。

売り建玉を決済する場合に、株式や商品など売り付けた現物を渡して代金を受け取ります。

株式の信用取引ではつなぎ売りや両建て取引などの信用売り(空売り)において、売り建玉を決済する際に同種同量の株式を渡して代金をもらいます。

つなぎ売りは株式投資において相場が下落傾向にある局面で、現物株を売らずに同銘柄を信用取引によって空売りすることです。

中長期的に特定の現物株を保有する一方で、短期的な市場の下落局面が予想される場合に同銘柄を信用取引で空売りすれば、株価が下落するリスクを最小限に抑えることができます。

つなぎ売りをした場合、株価が予想どおりに値下がりすれば買い戻して差額を利益にすることができます。

この利益は値下がりによって発生した現物株の評価損を補填します。

ただし予想が外れて値上がりし、信用取引における評価損が発生することもあります。

この場合には買い戻して決済するか、保有している現物株の品渡しを選ぶことができます。

株主優待を目的に株式を購入したところ株価が下落して特典以上の損失が発生した場合、株価変動リスクを抑えるのにつなぎ売りが有効です。

つなぎ売りは簡単な手続で行うことができます。

まず株主優待の権利がつく最終日までに現物買いの注文を出します。約定したら新規に信用取引の売建注文を行います。

保有している現物株式を現渡しすれば信用取引の売り建玉を解消できます。

株主優待の権利が付与される最終日までに、現物株式と売り建玉を同じ株数と枚数、価格で保有する必要があります。

信用取引や商品先物取引で売り建玉を決済するには、買い戻しをして差額を受け取る方法と、現物を渡し、品貸料などを支払う方法があります。

現渡しは現物を渡して決済を行う方法です。

・品貸料とは

制度信用取引において株式が不足した場合に、機関投資家などから借り入れる際の調達料金を貸す側から見た場合に品貸料と呼びます。

借りる側から見た場合には品借料と呼ばれます。

品貸料は逆日歩とも呼ばれています。


最終的に逆日歩のついた銘柄を空売りしている全ての投資家が品貸料を支払います。

反対に貸株を提供した者と買い建てた全ての投資家は品貸料を受け取ることができます。

制度信用取引では証券金融会社から売り手は株式を借ります。

反対に買い手は融資を受けて取引を行います。

証券金融会社は買い手から担保として預かっている株式を売り手に回します。

売り手が買い手よりも多いと株式が不足することになります。

このような場合には証券金融会社が機関投資家などから株式を借りて、売り手に融通します。

証券金融会社は不足する株式数を入札形式で調達しています。

差金決済と現物取引

差金決済とは現物の受け渡しをせずに、反対売買によって買付と売却の代金の差額の授受を行うことです。

この方法は株式の信用取引などで利用されています。

差金決済は現物取引よりも資金効率が高く、短期売買を繰り返す場合にゆう売りです。

レバレッジを効かせた取引を行うこともできます。

リスクもリターンも大きな信用取引で差金決済が行われています。

決済を確実に行うため、証拠金制度が存在します。

現物取引(決済)は証券取引所で株式の売買を行う際の基本とされます。

日常生活において対価を払って商品を購入するのと同じです。

現物取引で株式を購入した場合、株主優待がもらえたり配当金を受け取ることができます。

また株価が安いときに購入して値上がりしたときに売却すれば利益を得られます。

投資を目的として貴金属や農作物、原油などを現物で購入すると、配送や保管にコストがかかってしまいます。

現物を受け取らずに利益を回収できれば経済的です。

差金決済では購入時の価格と売却時の価格の差額だけを受け取ることができます。

商品の価格が購入時よりも値上がりしていれば利益が得られます。

一方で値下がりしていた場合には差額を支払う必要があり損失を被ることになります。

例えばある量の金が現在100万円で購入できると仮定します。

100万円分の金を半年後に購入する注文を出したところ、半年後には同じ量の金が110万円に値上がりしていたと考えます。

この場合は金を売却すれば10万円の利益になります。反対に90万円に値下がりしていた場合には、10万円の損失が発生します。

差金決済は信用取引や先物取引、FXなどで行われています。

それ以外の差金決済ができない取引は全て現物取引です。初めて投資を行う場合は現物取引が基本です。

現物取引では1日に同一の銘柄を繰り返し取引できないのが通常ですが、差金決済では可能となっています。

デイトレーダーが1日に何度も繰り返し取引を行うことができるのは、差金決済を行っているからです。

現物取引を行う場合、購入した銘柄を売った時点で損益が確定します。

株式を購入して株価が上昇したら売却するのが現物取引です。

一方で差金決済の場合は保有していない株式を先に高値で売却し、株価が下がったら買い戻すことができます。

この手法は空売りと呼ばれ、差額が利益となります。

差金決済を利用する信用取引や先物取引では証拠金取引が行われており、レバレッジをかけることができます。

レバレッジをかければ、業者に預けた証拠金以上の取引が可能となります。

株式の信用取引におけるレバレッジは約3倍です。

同様に株価指数先物は約17倍、FXは約25倍となっています。

レバレッジをかけると大きな利益を得られる可能性がありますが、損失が多額になるリスクもあるので注意しなければなりません。

株式の基礎知識

バブル崩壊後、日本の経済構造が根本的に変化しました。

戦後からバブルまで:株式の持ち合いが行われていました。経営者は会社が買収される心配をせずに事業運営ができました。

バブル崩壊後:株式の持ち合いが解消されるようになりました。経営者は買収される危険性に対処しなければなりません。

バブル崩壊後の日本経済を理解するためには、経済構造の根本的な変化を知ることと、それに関連した経済用語を覚えることが大切です。

知識同士を結びつけて経済を理解する力を習得すれば、様々な情報を資産に変えることができます。

今後の日本経済は自己責任が求められる時代となるため、経済の動きを理解する能力が非常に重要となります。

・そもそも株式とは

株式は株式会社の社員としての地位のことです。

株主は社員であり株式会社を構成します。

英語では一社全体の株や株式、資本金のことをstockと呼びます。

stockはcommon stock(普通株式)やpreferred stock(優先株式)など有価証券を表す普通名詞として使われます。

一方でequityも株式や株主資本を表します。

equityは企業財務における株主の持ち分である自己資本を表すために使われる言葉です。

stockとequityはいずれも株式を表す言葉ですが、使用される場面に違いがあります。

前者は証券そのものを表すのに使われ、後者は財務上の用語として使われます。

株式市場はstock marketと表現しますが、自己資本を増やす増資や社債発行による資金調達などはequity financingと表現されます。

・日本語の株式とは

日本語の「株式」は独占営業を許された集団成員を表す「株」と、中世の土地収益権を表す「式(職)」に由来しています。

明治5年、1872年に解散を命じられるまで、日本には株仲間という組織がありました。

株仲間とは問屋などが一種の座を作りカルテルを形成することです。

株式を所有することで株仲間の構成員として認められました。

明治時代に解散を命じられると、構成員の多くは商業組合に改組されます。

・株式の法的地位について

株式の法的地位に関する理解は、社員権説が通説となっています。

社員権とは社団における構成員である社員の地位のことです。

日本の法律では物権や債権、知的財産権と同様に財産権の1つとされます。

社員権説では、株式が株式会社の構成員としての地位を表すとされています。

株式を表章する有価証券が株券です。

世界最初の株式会社は1602年に設立されたオランダ東インド会社であるとされています。

株式は会社に対する権利全体を均等に分割するものです。

また多額の出資者に複数の株式所有を認めて、権利関係の処理や株式の流通を円滑化しています。

その結果として大規模な事業における多額の資金調達も容易にできるようになりました。

株式は持分均一主義と持分複数主義に特徴があります。

前者は株式が均一な大きさに分割された割合的単位となっていることを意味します。

1株を複数の株主が共有することはできますが、株主が勝手に株式を細分化することはできません。

持分複数主義とは各株主が複数の株式を所有できることを意味します。

日本の株式は種類ごとに均一に細分化された割合的な構成単位となっています。

一方持分会社の社員権である持分は、各社員の出資額などに応じて不均一な形態をとることもできます。

ドイツでは持分不均一主義が採用されています。

1株の価値が券面額などなどで表示される額面株式制度を採用している場合は、必ずしも持分均一主義を採用しなければならないわけではありません。

株式はもともと額面株式しかありませんでした。

額面株式は資本の構成分子を意味しており、資本と株式には相関関係があります。

後にアメリカのニューヨーク州で無額面株式が初めて発行されると、世界中で無額面株式が発行されるようになりました。

日本の会社法でも無額面株式のみを認めています。

無額面株式に資本の構成単位としての意味はありません。

資本と株式の相関関係が切断されている点に特徴があります。

例えば企業が自己株式を消却した場合でも、資本金が減少することはありません。

・株式の経済的地位について

株式会社が利益を得ると、一部を配当という形で株主に分配するのが一般的です。

配当は株主の出資比率に応じて分配されます。

事業が赤字の場合は配当が行われず、無配となる場合もあります。

また廃業や倒産などにより株式の価値がゼロになるケースも存在します。

ただし株主は間接有限責任です。

企業に多額の債務がある場合でも、株主が出資額以上の損失を被ることはありません。

企業が解散した場合は、債務を全て履行してから残余財産を株主の出資比率に応じて分配します。

株式は会社の所有権を分割したものです。

残余財産の所有権は株主にあるので、原則として出資比率に応じて分配されることになります。

株式の売買が行われると市場価格が付けられます。

証券市場における取引で成立した株式の価格が株価です。

株式を所有することで得ることができる配当などの利益は配当収益やインカムゲインなどと呼びます。

一方で株式の売買によって得られる利益は、売買収益やキャピタルゲインと呼ばれます。

・株価とは

株価とは株式市場において実際に約定があった株式の価格のことで、出来値を表します。

一方で売り注文や買い注文の際に提示されたものの、約定に至らなかった値段のことを気配値と呼びます。

一般的に気配値は出来値である株価と区別されます。

証券取引所内で売買取引を行う場合、希望価格は呼び値とも呼ばれています。

呼び値単位を最小単位として株価は変動します。

証券取引所における株取引では、株価に応じた呼び値単位が定められています。

この単位よりも細かい価格の指定はできません。

株価は市場が開いている間に政治や経済など社会に関する様々な事象の影響を受けて変動します。

1日の株価の動きは四本値と呼ばれる4つの値で表現されます。

四本値とは始値と終値、高値と安値です。

始値:市場が開いてから最初に取引された株価
終値:最後に取引された株価
高値:立会時間中で最も高い株価
安値:最も安い株価

・株式市場の値幅制限

株価は上方にも下方にも変動しうるため、あまりに急激な変動は市場参加者にパニックを起こす可能性があります。

値幅制限とは株価の変動を一定の範囲に制限することです。

制限の限界まで急騰する場合をストップ高、暴落する場合はストップ安と呼ばれます。

株式が市場に上場した初日は、始値が決まるまで制限されることはありません。

評価損と実現損について

評価損は含み損とも呼ばれています。

有価証券や外貨資産、不動産などには市場の状況によって価格変動のリスクがあります。

現在の価格である時価が、購入時の価格である簿価よりも低い場合の差額が評価損です。

評価損はある時点における評価上の潜在的な損失額なので、実際に売却(差金決済・反対売買)しなければ確定しません。

評価損益の計算方法は以下の通りです。

評価損益=保有資産の時価-保有資産の簿価

実現損は確定損とも呼ばれます。

保有している銘柄や建玉などを売却・決済した場合に発します。実際に換金されたときに確定する損失のことです。

資産運用では実現損益(確定損益)が最終的な結果となります。

実現損を出さずに投資を行うことが大切です。

塩漬け状態の銘柄や建玉などの評価損は、大きな実現損となる可能性があるので注意しなければなりません。

価格変動リスクとは投資対象の価格が変動することで損失を被るリスクのことです。

市場で取引価格が変動して購入した金融商品の価格が変動するリスクや、価格変動により当初期待していた収益を得られなくなる可能性のことを指します。

金融商品のリスクとは損益の不確実性のことです。

全ての金融商品は取引直後から価格変動のリスクに直面し、評価損か評価益が発生します。

価格変動リスクは金融商品の価格が様々な要因によって変動する可能性のことです。

金融商品の価格を変動させる要因には世界情勢や経済環境、社会状況や天災の他にも金利や為替、株価や商品市況などがあります。

価格変動リスクには市場全体のリスクと商品特有のリスクに分類できます。

一般的に大きな収益を期待できる金融商品は価格変動リスクも大きくなります。

反対に小さい収益しか期待できない金融商品は価格変動リスクも小さくなる傾向見られます。