青色申告をするために必要な手続き

 青色申告の様々な特典を利用するためには、税務署に対して定められた手続きを行う必要があります。

事業所得と不動産所得、山林所得があり青色申告の承認を受けようとする場合は、青色申告申請手続きの対象とされます。

・届出をする税務署

適用を受けるためには「所得税の青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出します。

「所得税の青色申告承認申請書」は国税庁のホームページからダウンロードできます。

基本的に住所地が納税地とされますが、住所地以外の場所で事業を行っている場合は事業所がある場所でも納税が可能です。

事業所のある場所を納税地とするには、青色申告の承認申請とは別に所得税・消費税の納税地の変更に関する届出が必要になります。

・届出を行う時期

青色申告を行うためには期限内に青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出しなければなりません。

提出期限は以下の2つのパターンがあります。

1.青色申告書で申告しようとする年の3月15日まで

2.その年の1月16日以後に新規の事業を始めたり不動産の貸付を行った場合は、事業開始などの日から2か月以内

上記の他に相続などで事業を引き継いだ場合にも特別な提出期間の定めが存在します。

提出期間を経過してから申告書を提出した場合、その年度には適用が受けられませんが、翌年から適用を受けられるようになります。

・申請書の具体的な内容

申請書の記載内容には以下のようなものがあります。

1.住所や氏名、生年月日などの個人情報

2.青色申告の適用を希望する時期

年の途中で開業する場合でも、提出期間に間に合うのであれば必ず開業年から適用を受けるようにすることが大切です。

提出期間を過ぎてしまうと開業年の分は適用が受けられず、翌年度分から受けることになります。

3.事業所に関する情報や事業の種類

4.複式簿記・簡易簿記の選択など採用する会計処理方法

青色申告では簡易簿記や現金式簡易簿記だと10万円の控除は受けられますが、複式簿記ならば65万円もの控除が受けられます。

複式簿記は会計ソフトを使えば会計のことを知らない人でも対応できます。

また備え付ける帳簿類についても選ばなければなりませんが、会計ソフトで日常的な処理を行っていれば必要な情報が整理できるので心配は不要です。

現金の出入りが記載されている現金出納帳や売掛帳などは会計ソフトで出力できます。

・青色申告の注意点

開業を考えているのであれば、開業届と一緒に青色申告の承認申請書も提出するとよいでしょう。

事業を始めたばかりの頃は売上がないため赤字になるケースも多く見られます。

開業した年が赤字でも青色申告の承認申請をしておけば赤字を翌年以降に繰り越せます。

青色申告の適用を受けていないと赤字を切り捨てることになるので、翌年度が黒字ならば納税額が高くなってしまいます。

青色申告特別控除は毎年の所得税申告でも節税効果を発揮するので、継続性の高い事業を開始する場合には一緒に青色申告の承認申請をするのがおすすめです。

会計処理を行った場合には、領収書や請求書などの資料を原則として7年間にわたって保管しなければなりません。

領収書などの整理は会計ソフトを利用すれば簡単に行うことができます。

自ら整理を行う余裕がない場合には税理士に相談することも考えられますが、会計ソフトを使って自分で作業をすれば費用を抑えられるので経済的です。

・青色申告の種類について

青色申告には簡易簿記と現金式簡易簿記、複式簿記の3種類があります。

1.簡易簿記

簡易簿記の控除額は最高10万円で記帳方法は発生主義とされています。

発生主義は入金や出金がある日付には関係なく、収入や支出の原因となる経済的事実が発生した日付で収益や費用を計上する方法です。

白色申告も青色申告も基本的に発生主義で記帳しますが、青色申告において現金主義で記帳する場合は現金式簡易簿記の事前申請が必要になります。

現金主義とは入金や出金がある日付で収益や費用を計上する方法です。

4月10日にパソコンをクレジットカードで購入し、5月20日に引き落とされたと仮定すると、発生主義の場合は4月10日に費用を計上し、引き落とし日である5月20日にも記帳します。

発生主義では原因が発生した日とお金の動きが発生した日の2回記帳しなければなりません。

現金主義ならば実際に代金が引き落とされた5月20日の1回だけ記帳すれば足ります。

簡易簿記では所得要件がなく、申告時には「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。

期限後の申告も可能となっています。

確定申告に必要な書類は、青色申告決算書(一般用)と確定申告書B、添付書類台紙です。

現金出納帳や売掛帳、買掛帳、固定資産台帳、経費帳など必要に応じて帳簿を作成します。

事業の種類によって実際に作成する帳簿は異なりますが、現金出納帳などが標準的な帳簿とされています。

2.現金式簡易簿記

現金式簡易簿記は控除額が最高10万円で、現金主義で記帳する必要があります。

申請書は「所得税の青色申告承認申請書(兼)現金主義の所得計算による旨の届出書」です。

現金式簡易簿記には所得要件があり、前々年の所得が300万円以下であることが求められます。

期限後の申告も可能となっています。

確定申告書類は青色申告決算書(現金主義用)と確定申告書B、添付書類台紙です。

必要な帳簿は現金出納帳のみですが、現金以外の取引もある場合はその帳簿も作成しなければなりません。

3.複式簿記

複式簿記の控除額は最高65万円となっており、発生主義で記帳します。

申請書は「所得税の青色申告承認申請書」で所得要件はありませんが、期限内に申告する必要があります。

確定申告書類は青色申告決算書(一般用)と確定申告書B、添付書類台紙です。

複式簿記では総勘定元帳と仕訳帳を作成する必要があります。

さらに必要に応じて現金出納帳や預金出納帳、買掛帳、売掛帳、固定資産台帳、給与台帳などを作成します。

現金出納帳などの簡易帳簿だけでは最高65万円の控除を受けることができず、10万円までの控除が受けられます。

簡易帳簿に加えて債権債務等記入帳を作成し、全ての取引を記録すれば正規の簿記の原則に従うことになるため最高65万円の控除を受けることができます。

預金出納帳や受取手形記入帳、支払手形記入帳、特定取引仕訳帳、特定勘定元帳などが債権債務等記入帳に含まれる帳簿です。

複式簿記では取引が発生すると標準的な簡易帳簿と債権債務等記入帳に取引を記録します。

記帳の際には摘要欄に相手方の勘定科目を記載して、仕訳帳や元帳としての機能を持たせます。

現金や売掛金、買掛金や預金、受取手形、支払手形の期末残高は、最終的に各簡易帳簿から試算表に転記します。

その他の科目も摘要欄を集計して試算表に転記することになります。

貸借対照表や損益計算書など決算書は試算表に基づいて作成します。

・簡易簿記と複式簿記の違いとは

簡易簿記は小遣い帳などと同じく原因が発生するごとに記帳します。

現金の増加・減少が生じた場合には、それぞれの原因を現金出納帳に記録することになります。

複式簿記の場合は1つの取引を2つの要素に分解して記帳します。

現金で何らかの費用を支払った場合には、費用を計上すると同時に資産が減少したことについても記録しなければなりません。

電話代やインターネット代を支払ったときには費用について通信費を計上し、資産については現金が減少したことを記帳します。

土地など固定資産を取得した場合には、固定資産の増加と現金の減少についてそれぞれ記録しなければなりません。

複式簿記では1つの取引を要素に分解して総勘定元帳に記録する必要があります。

1年間の総勘定元帳の記録に基づいて試算表や貸借対照表、損益計算書などの決算書を作成します。

簡易簿記の場合は表計算ソフトやノートなどを使えば誰でも簡単に作成できます。

複式簿記は様々な勘定科目について仕訳を行わないといけないので、会計ソフトを利用した方がよいでしょう。

・白色申告と青色申告の簡易簿記の違いとは

白色申告をする場合の簡易簿記では現金売上を日々の合計金額のみ一括記載できます。

業種を問わず現金売上や現金仕入れ、雑収入等、経費のうち少額のものは日々の合計金額の一括記載が可能です。

ただし雑収入等は事由ごと、経費は項目ごとに一括記載します。

売上や仕入れの中でも、保管してある納品書控や請求書控などで内容が把握できる取引は日々の合計金額を一括記載できます。

掛による売上や仕入れで納品書控や請求書控を保管しており内容を確認できる場合は、日々の記載の省略が可能です。

この場合には現金主義会計が適用されるため、現実に代金を受け取ったときや支払ったときに現金売上や現金仕入れとして記載します。

現金主義会計が適用される場合でも年末には発生主義会計に置き換える必要があり、売掛金や買掛金の残高を記載することになります。

白色申告をする個人で事業や不動産貸付等を行う全ての者は、記帳だけでなく一定期間にわたって帳簿書類を保存しなければなりません。

青色申告をする場合の簡易簿記では、複式簿記によらず簡易的な方法で帳簿を作成すれば足ります。

白色申告の簡易簿記では日々の合計金額の一括記載が可能でしたが、青色申告の簡易簿記では各取引ごとに記録しなければなりません。

・簡易簿記から複式簿記に変更するには

青色申告で最高65万円の特別控除を受けるためには、確定申告書と損益計算書だけでなく貸借対照表を添付します。

必要な帳簿を作成するために、記帳などは各年の1月から始めます。

正規の簿記の原則に従って記帳などを行っていた場合であれば問題はありません。

それ以外の場合には各年の1月から事業用の財産とその他に区分して記帳する必要があります。

貸借対照表の作成が必要なので資産や負債の金額も整理します。

正規の簿記の原則に変更するためには必要になる帳簿や記帳などを予め検討しなければなりません。

事業の状況に合った帳簿を選び、必要な勘定科目を決めることになります。

白色申告の簡易簿記だと控除額は0円です。

青色申告の簡易簿記ならば最高10万円の控除が受けられますが、複式簿記の最高65万円の控除と比べるとメリットが小さくなるので注意してください。

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