・会計ソフトとは
会計ソフトは企業における全ての資金の流れを管理・集計し、決算書を作成できるシステムのことです。
紙の帳簿を使う場合には売掛・買掛や入金・出金、振替など資金の動きをそれぞれ伝票に記載しなければなりません。
さらに仕訳帳に転記して総勘定元帳にも転記する作業が必要となるため、簿記の知識が求められます。
会計ソフトを使えば、自動で勘定科目を選んで仕訳が行われシステム上で集計されることになります。
転記をしなくてよいのでミスがなく、会計業務の負担を大幅に軽減できます。
決算書や試算表も自動で集計できるようになっており、簡単に会社の財務状況を確認できるというメリットもあります。
様々なITシステムの中でも会計ソフトは利用者数が多く種類も豊富です。
会計ソフトの種類が多い主な理由としては、まず企業規模の違いを挙げることができます。
企業の規模が変われば部門別管理や連結決算が必要になるため、会計ソフトに求める機能も変化します。
中小企業は単純な機能だけでも問題ありませんが、大企業では複雑な制度に対応した機能を持つ会計ソフトが必要になります。
財務会計と管理会計のどちらを重視するかも、会計ソフト選びでは重要です。
会計業務には帳簿管理や決算書作成などを行う財務会計と、事業ごとの損益計算や原価計算などを行う管理会計があります。
財務会計と管理会計のいずれを重視するかが企業によって異なることも、会計ソフトの種類が豊富な理由の1つです。
利用者層の違いも会計ソフトの種類が多様化する理由となっています。
実際に会計ソフトを使うのは経理担当者だけでなく、経営者自身が使う場合もあれば、会計業務を任された営業や現場のスタッフが使う場合もあります。
機能性が優れた会計ソフトは大企業における複雑な会計業務に対応しており、簿記の知識に精通した経理担当者が使うことを想定しています。
単純な機能だけを備えた会計ソフトが想定する利用者は、日々の売上を記録する個人商店の経営者などです。
会計ソフトには様々なものがありますが企業の規模や、財務会計と管理会計のいずれを重視するか、実際に使用する人の簿記の知識などを考慮すると選びやすくなります。
タイムスタンプ機能や自動仕訳機能のような最新の機能を備えているかどうかも会計ソフトを選ぶ際の重要な判断基準です。
国税帳簿書類の電子データによる保存を認める法律として電子帳簿保存法が1998年7月に制定され、2005年にはe-文書法の施行に伴って改正され、紙媒体の国税関係書類を電子化して保存できるようになりました。
2015年には電子署名が不要になり、3万円以上の契約書や領収書もスキャナで保存できるようになります。
さらに2016年の税制改正に伴って規則が改正され、デジカメやスマートフォンでの保存も可能となりました。
以前は原稿台を備えたスキャナしか利用できませんでしたが、電子データ保存の要件が緩和されたため、スマートフォンで撮影したレシートの写真もタイムスタンプなど一定の要件を満たすと原本として認められます。
タイムスタンプはその時間に書類が存在しており、その後に変更されていないことを証明する技術です。
最近の会計ソフトにはタイムスタンプ機能が追加され、ソフトの中で押せるようになっています。
電子データ保存機能がある会計ソフトを使えば、経理担当者の負担が大幅に軽減できるだけでなく、ペーパーレス化が進み書類を保存するスペースを小さくできます。
申請をする際に糊で書類を貼る作業が不要になり、出先からスマートフォンで申請できるので便利です。
クラウド型会計ソフトには自動仕訳機能を搭載したものが存在します。
入力された文字や読み取った文字からAIが勘定科目を推測し仕訳をしてくれます。
仕訳以外にも消込やエラーを確認する機能などがあるので、大量のデータを効率的に処理できます。
消込とは売掛金・買掛金などの債権・債務の勘定科目の残高を消していく作業のことです。
売掛金の入金があった場合には支払明細と照合しながら入金されたデータを消すと、回収状況や売掛金残高とデータとのずれなどを確認できます。
商品代金が入金された場合に行われるのが入金消込で、代金を支払った場合に行われるのが支払い消込です。
企業規模が大きくなるほど消込が多くなり作業が煩雑化するため、月次決算の締めが遅れる原因になります。
AIを活用した会計ソフトを導入すればミスを減らして作業を効率化できます。
・インストール型とクラウド型
会計ソフトにはインストール型とクラウド型の2種類があります。
インストール型は以前から広く使われており、一般購入してパソコンにインストールすれば月額料金は発生しません。
ただし法改正などでバージョンアップが必要になる場合があり、ソフトによってはバージョンアップに別料金がかかることがあります。
またバージョンアップのための作業が必要になる場合もあり、手間がかかってしまうので注意が必要です。
インストール型は複雑な作業を素早く行うことができ、使う場所やパソコンが決まっている場合などに適しています。
長年にわたって広く利用されてきた実績があり現在でも高いシェアを占めます。
クラウド型の会計ソフトは初期費用がほとんど不要です。
月額料金が発生しますが総合的な費用を平準化できます。
さらに使い勝手や機能などに問題があり他のソフトに変えたい場合にはいつでも解約が可能です。
クラウド型の会計ソフトはバージョンアップ作業が不要なのでメンテナンスに手間がかかりません。
データはクラウドに保存されており、ハードウェアの障害によるデータ消失を防げます。
インストール型の会計ソフトの中にも、クラウドにデータを保存可能なサービスやオプションを提供しているものがあります。
クラウド型の会計ソフトはパソコンを他の人と共有する必要がないので、IDを発行すれば誰でもデータにアクセスが可能で、複数人による同時作業もできます。
経費精算システムを使わず会計ソフトに直接的に伝票入力する場合、クラウド型ならば領収書をスマートフォンで撮影して出先でも処理できるので便利です。
オフィスの外に出る用事が多い場合にはクラウド型の会計ソフトを導入すれば効率的に経費を処理できます。
・会計ソフトの様々なメリットとは
1.業務の効率化
会計ソフトを導入すると勘定科目の入力作業が簡単になるだけでなく、ミスが少なくなります。
入力作業を補助する機能を備えており、交通費と入力した場合には勘定科目欄に旅費交通費が自動入力されるだけでなく取引先を履歴から選べます。
伝票入力したデータは会計ソフト上で集計されるので、手書きやエクセルを使う場合のように伝票の内容を個別に仕訳帳や総勘定元帳へ転記する必要がありません。
入力漏れや数字の間違いなどのミスをしなくて済みます。
会計ソフトでスキャン機能を使うと読み取った内容が自動入力されます。
入力する手間を省けるだけでなく、内容を確認するだけでよいので効率的です。
スマートフォンで使える会計ソフトならば、外出先でも経費などの入力ができます。
会計ソフトを使うと会計事務所とデータを共有できるので、決算ごとに郵送したり確認のために来てもらう必要がなく、修正箇所があればすぐに直してもらえます。
データをソフト上で保存できるので、帳簿の紛失やエクセル・データの誤消去のようなトラブルを回避できます。
紙の帳簿やエクセルを使う場合には売掛・買掛、入金・出金、振替のような資金の動きを各伝票に記載して、仕訳帳と総勘定元帳に転記しなければなりません。
会計ソフトで摘要欄を選んで入力すると、自動で勘定科目を選んで仕訳が行われるだけでなく税区分も自動入力されます。
適用欄で交通費を選んだ場合の勘定科目は旅費交通費、文房具代を選んだ場合は事務用品費のように自動仕訳されるので、会計の知識がなくても簡単に使えます。
会計に関する知識がなくてもソフトを使うことができるため、経理担当者を雇わずに経営者が自ら作業を行うことも可能です。
事業開始直後など経理担当者を雇う余裕がない場合に会計ソフトを導入すれば、費用を抑えることができます。
大企業も会計ソフトを使えば、各地の営業拠点における経理業務を本社に集約して費用を削減できるため経済的です。
2.不正行為の防止
手書きやエクセルで帳簿を作成する場合と異なり、会計ソフトを使うと入力履歴が残ります。
さらに伝票かあら帳簿に自動で転記されるので、改ざんが難しく不正が起こりにくいというメリットが存在します。
伝票に1万円と入力した場合には元帳にも自動で1万円と入力されるため、1千円とごまかすことは不可能です。
3.経営改善
決算表や試算表などは会計ソフト上で帳票を出力すれば最新のデータをすぐに確認できます。
会計ソフトは問題点を素早く発見して経営を改善するのに役立ちます。
・会計ソフトを導入する際の注意点とは
会計ソフトを導入しても大きなデメリットはありませんが、インストール型の場合は法令改正などの際のアップデートを自分で行わなければならないので注意が必要です。
法令改正などを見逃したりアップデートを忘れると、古い方法で書類を作成する可能性があります。
ソフトをダウンロードしてパソコンにインストールし、法令改正などに合わせてアップデートしたりデータをバックアップするなどの作業を自分で行うことに不安がある場合は、クラウド型を選ぶとよいでしょう。
クラウド型の会計ソフトならばインストール型と比較してより直感的に使うことができ、常に最新の状態に管理されているので安心です。
ただしクラウド型の会計ソフトは、長期間使用する場合にインストール型よりも費用がかかる可能性があります。
毎月の利用料は数千円でも3年ほど使えば10万円を超えることもあるので、費用を抑えて長期使用したい場合にはインストール型がおすすめです。
クラウド型は初期投資が少なくソフトウェアの乗り換えが簡単にできるため、一定期間経過後の交換を検討している場合などにおすすめできます。
インターネット環境によってはクラウド型だと動作が遅くなる可能性があります。
導入する前に無料トライアルなどを利用して動作を確認するとよいでしょう。
・会計ソフトの主な機能について
会計ソフトの機能は主に入力支援と承認申請支援、決算処理支援とその他の4種類に分類できます。
1.入力支援機能
伝票を入力したときに項目を選ぶと自動で仕訳が行われる機能は会計ソフトの基本です。
入力する件数が多いと担当者の負担も大きくなるので、自動入力支援機能のあるソフトを選べばさらに業務を効率化できます。
銀行口座やクレジットカードの利用明細を金融機関からCSVファイルでダウンロードして、会計ソフトと連携すれば自動的に取込・仕訳が行われます。
入力支援機能を使うには最初に設定を行う必要がありますが、一旦設定をすれば次回からは取込だけなので効率的に作業ができ、人的なミスも減らせます。
入金・出金以外に売掛金・買掛金の消込も記録できるので、頻繁に資金の動きがある企業に最適の機能です。
入力した情報は修正できるため改ざんの可能性が考えられますが、会計ソフトは金融機関から得た情報を扱うので心理的に改ざんしにくいというメリットもあります。
OCR(Optical Character Recognition/Reade)とは光学的文字認識のことで、手書きや印刷された文字をスキャナやデジタルカメラで読み取り、コンピュータが利用可能なデジタルの文字コードに変換する技術です。
この技術を使えば画像情報のテキスト部分を認識して文字情報に変換できるため、人間が情報を入力する必要がありません。
OCR機能のある会計ソフトを使えば、仕訳伝票を読み取って会計情報を自動的に作成してくれます。
誤入力の修正や自動で読み込みができない項目の手入力を行う必要があるものの、業務効率を格段に向上させることが可能です。
最近ではスキャナだけでなくスマートフォンで撮影し情報を入力できるものも増えており、移動中など外出中でも処理できます。
2.承認申請支援機能
エクセルファイルは共有なので誰でも閲覧・編集が可能ですが、会計ソフトは予め設定された入力者や承認された者だけが操作できるように権限管理機能を備えています。
担当者以外の人間が勝手に操作するなどの不正を防止できます。
入力情報や承認・申請の状態などを会計ソフト上で確認できるため、担当者の手間を省けるというメリットもあります。
承認機能を使うには、未承認案件の集計時の扱いについて注意しなければなりません。
未承認のものを集計対象外にすれば、確定した案件だけが集計されます。
情報の確実性が向上しますが、未承認の状態で入力されている情報が反映されないので正確な状況判断ができません。
未承認案件を集計時に含めるかどうかを選べる機能を備えた会計ソフトを選べば、状況に応じて使い分けられるので便利です。
3.決算処理支援機能
会計事務所との間で情報のやり取りを会計ソフト上で行うことができれば、決算時のコミュニケーションが効率化されます。
決算時は企業も会計事務所も忙しいので、会計ソフトを導入すれば業務効率が向上します。
記帳代行や決算書作成、税務申告書作成などの業務を会計事務所に任せる場合には、会計ソフトの情報を共有できると便利です。
各会計事務所では使用している会計ソフトが異なるので、どのソフトを使っているかどうかを事前に確認するとよいでしょう。
4.その他の機能
会計ソフトには情報のバックアップ機能があるので、紙の帳簿のように紛失する心配がありません。
ただしインストール型だとパソコンが故障したり紛失する可能性があります。
より安全に情報を保存したいのであれば、クラウド型を選ぶとよいでしょう。
会計制度は毎年のように法改正が行われており、マイナンバー制度や消費税率の変更、新元号への対応なども必要になります。
クラウド型の会計ソフトならば自動的に最新の状態にアップデートしてくれるので、安心して使い続けることができます。
インストール型の会計ソフトは自分でアップデートしなければなりませんが、サポートが受けられる場合もあります。
サポート体制や料金を確認した上で使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
変化に対応できないソフトだと買い替えが必要になるので、導入費用だけでなくサポート体制についても事前に確認することが大切です。
会計ソフトの中には外貨管理機能を備えたものがあります。
海外との取引を頻繁に行うなど外貨を扱う場合には、この機能を備えたソフトがおすすめです。
・最適な会計ソフトの選び方
領収書をスキャンでき操作性の優れた会計ソフトを選べばスタッフの負担を軽減できます。
さらにAIによる自動仕訳機能や銀行口座明細の自動取込機能、消込機能などがあると便利です。
これらの機能を備えた会計ソフトを選べば、口座の入金・出金を頻繁に繰り返す場合など業務を効率化できます。
一方で現金の取り扱いが多い場合には現金出納帳の画面が見やすいものや、操作性の優れたものを選ぶとよいでしょう。
インストール型の会計ソフトはパソコンの扱いに慣れているのであれば、インターネット上でダンロードしてインストールすればすぐに使うことができます。
すぐに使いたいのであれば、より迅速に導入できるクラウド型がおすすめです。
リモートワークをする場合や営業拠点が複数ある場合にもクラウド型が適しています。
クラウド型ならば、会社から貸与されたスマートフォンを使って、外出中でも申請から承認までの手続きが可能です。
インストール型はWindowsのみに対応しているものが多く見られますが、クラウド型はMacにも対応しています。
クラウド型は導入費用が安く、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットでも使えます。
インストール型はバージョンのアップデートが有料ですが、クラウド型は無料です。
パソコン1台につき1ライセンスが必要などの制限もあります。
クラウド型は別の端末を使って複数人で利用できます。
インストール型は複雑な会計処理に対応しているものが多いので大企業に最適です。
個人事業主や中小企業の場合はクラウド型でも十分な機能を備えています。
複雑な会計処理が不要な場合にはクラウド型を選ぶとよいでしょう。
インストール型の代表的な会計ソフトには「JDL IBEX出納帳 Major」や「会計王」、「わくわく財務会計」、「MJSかんたん!会計」などがあります。
クラウド型の代表的な会計ソフトは「マネーフォワード クラウド会計」や「freee」、「HANJO会計」、「ネットde記帳」などです。
両方のタイプを備えているものには「弥生会計」や「勘定奉行」があります。
料金や機能などはそれぞれのソフトで異なるので、比較検討して最適なものを選ぶとよいでしょう。
インストール型の「JDL IBEX出納帳 Major」ならば無料で利用できます。
「マネーフォワード クラウド会計」や「freee」、「HANJO会計」、「会計王」、「わくわく財務会計」、「MJSかんたん!会計」、「弥生会計」、「勘定奉行」には無料体験期間が設定されています。
まずは無料体験期間が設定されているものを試してみるとよいでしょう。