現物取引と信用取引について

現物取引は投資家が自らの現金と株式で取引をするもので、取引を行うまでに期間制限はありません。

株式や債券などの有価証券の現物取引では、市場の時価で計算した売買代金の受け渡しが行われます。

株式の現物取引は保有している資金の範囲内で株式を購入します。

また保有していない株式を売却することはできません。

信用取引ならば保有資金を超える金額を借りて株式を買ったり、保有していない株式を借りて売却することができます。

資金を借りて買うことを「空売り」、株式を借りて売却することを「空売り」と呼びます。

現物取引では上場している全ての銘柄が取引対象です。取引を行うには委託手数料や税金を払う必要があります。

信用取引の場合は委託手数料や税金の他にも様々な費用が発生します。

買建と売建では費用の種類に違いがあります。

信用取引を行うには金利(買建)や貸株料(売建)、信用管理費や名義書換料、逆日歩(売建)や権利処理手数料が必要です。

現物取引では自己資金だけで株式を購入し、保有している株式のみを売却することになります。

特に現物取引においてのみ得られるメリットとしては株主優待や配当金、株価上昇による利益などがあります。

気に入った企業を応援したり、借金をせずに取引を行えるのも現物取引の特徴です。

株主優待は企業が投資家に株式を購入してもらうためのもので、サービスを割引か価格で利用できたり商品券がもらえたりします。

ただし全ての銘柄に株主優待があるわけではありません。また株主優待の内容は変更されることがあります。

株式を購入する前にホームページなどで確認するとよいでしょう。

配当金は企業が獲得した利益の一部を投資家に分配するものです。インカムゲインに該当します。

企業が定めた日までに株式を保有していると、保有数に応じて配当金をもらうことができます。

ただし配当金がない銘柄もあるので注意が必要です。

株価の値上がりによる利益はキャピタルゲインや売買差益などと呼ばれます。多くの投資家がキャピタルゲインを目標に取引を行っています。

安定した利益を得るためには、株式や市場などに関する知識が必要になります。

少額の取引から始めて、少しずつ経験を積むことが大切です。

会社の所有権を細分化した株式を購入すれば、その会社の株主になって株主総会に参加することができます。

株主総会に参加すれば経営に関する意見を述べることができるようになります。

株式の保有率が大きい株主ほど、企業に対する強い影響力を行使することができます。

成長を期待する企業の株式を購入して応援し、株価が上昇したところで売却して利益を出すという投資方法もあります。

現物取引では自己資金だけで取引を行うので借金を抱える必要がありません。

利息も発生しないだけでなく、株価が値下がりをして大きく損をするリスクが少ないというメリットがあります。

信用取引の場合は株価が値下がりして損失が発生するだけでなく、多額の借金を抱える可能性が存在します。

よりリスクの少ない取引を行いたいのであれば、現物取引がおすすめです。

・制度信用取引とは

信用取引には制度信用取引と無期限信用取引、一日信用取引があります。

制度信用取引は現金や株式を借りて取引を行います。

そのため決められた期限までに返却しなければなりません。

返却期限は一般的に期日と呼ばれています。

制度信用取引では、取引可能な銘柄や借入れた現金・株式の返却期限などが取引所規則によって決められています。

取引所が指定する制度信用銘柄には2種類あります。

貸借銘柄は買建と売建の両方が可能です。信用銘柄は買建のみできます。

制度信用取引では新規建をした日から6か月以内に返済しなければなりません。

貸借銘柄は取引所や証券会社による規制によって売建を停止することがあるので注意が必要です。

制度信用取引で売建をしている場合は追加コストとして逆日歩が発生することがあります。

買建は借りた現金で株式を買います。一方で売建は借りた株式を売って現金を得ます。

これらの株式や現金は担保として証券会社に預けられます。

証券会社は買建側の株式を売建側が借りた株式に、売建側の現金は買建側が借りる現金に融通するのが通常です。

制度信用銘柄の場合は、証券会社の中で差し引きを行い、不足分を証券会社が証券金融会社から借入れます。

証券金融会社でも各証券会社から借入れ分を融通していますが、新規売建注文が増加した場合などに株式が不足することがあります。

証券金融会社で株式が不足すると、機関投資家などから入札で決まった手数料を支払って調達します。

この手数料は逆日歩(品貸料)と呼ばれています。

逆日歩は株式を借りている売建側が支払わなければなりません。

買建をしている場合には、株式の貸し手なので逆日歩を受け取ることができます。

逆日歩が発生するかどうかは営業日ごとの取引終了後に売買を差し引くことで判明します。

また逆日歩の価格は取引翌営業日に行われる入札によって決まるので、発生するかどうか、どの程度の額になるのかを事前に判断することはできません。

株式市場における需給状況が大きく売りに傾いている場合、高額の逆日歩が発生する可能性があります。

売建で銘柄が値下がりして利益が出ても、逆日歩が上回る可能性があるので注意しなければなりません。

・証券金融会社とは

証券金融会社は信用取引の決済に必要な資金や株式を、金融商品取引所の正会員などになっている証券会社に貸し付けます。

また証券会社が公社債の引受・売買に伴って必要とする短期の保有資金を貸し付けたり、個人や法人に対して有価証券を担保として貸し付けることもあります。

証券金融会社は貸金業法ではなく金融商品取引法156条の24による免許制です。

資本金が1億円以上で一定の要件を満たすと免許が付与されます。

2019年現在では日本証券金融株式会社のみが活動中です。

日本証券金融株式会社は信用取引における株券の貸付や資金貸付を行っているだけでなく、信託銀行を兼営したり日銀特融の窓口にもなっています。

日銀特融とは日本銀行が金融システムの信用維持を目的として、政府からの要請を受けて資金不足に陥っている金融機関に無担保・無制限に行う特別融資のことです。

他に貸し手が存在しない場合に融資を行う金融機関のことを一般的に最後の貸し手と呼びます。

特に破綻の可能性がある金融機関に対して中央銀行が融資を行う機能を指して、最後の貸し手と呼ぶことがあります。

中央銀行とは日本銀行のように、国歌や一定地域における金融システムの中心となる機関のことです。

通貨価値や金融システムの安定化などの金融政策を司るため、通貨の番人とも呼ばれています。

日銀特融は日本銀行が行う最後の貸し手機能です。

・無期限信用取引とは

無期限信用取引は一般信用取引とも呼ばれます。原則として期限がありません。

上場廃止や合併、株式併合、株式分割などの事象が生じた場合や証券会社の与信管理における都合、株式の調達が困難な場合などで、例外的に期日が設定されることがあります。

無期限信用取引では返済期限や逆日歩などを投資家と証券会社の間で自由に設定することができます。

基本的に返済期限や逆日歩がなくすべての銘柄を取引可能です。

無期限信用取引では原則として取引所に上場している全ての銘柄を買建できます。

新規上場銘柄も上場初日から取引可能です。

制度信用取引では売建ができない非貸借銘柄の場合でも、証券会社の指定するものであれば売建ができます。

基本的に無期限信用取引では全ての銘柄を買建できますが整理銘柄は除きます。

ただし証券会社の判断によって対象外とされることもあります。

売建可能な銘柄は証券会社が指定するもののみですが、貸付株式の調達が難しくなる可能性があるような場合には、新規の売買停止などの措置が取られることがあります。

制度信用取引では返済期限が6か月でしたが、無期限信用取引では原則として返済期限がありません。

信用取引による長期的な投資も可能となっています。

無期限信用取引では証券金融会社を使わずに、証券会社自身が現金と株式を調達します。制度信用取引では逆日歩が発生する場合でも、無期限信用取引では発生しません。

・一日信用取引とは

一日信用取引は新規・決済約定を1日内で完了します。

信用取引では現物取引とは異なり売り注文から始めることができます。

株を売りたい場合は証券会社から株を借りて売却し、買い戻した後で返却します。

買い注文や売り注文に関係なく、信用取引の新規約定した日のうちに決済約定を行うのが一日信用取引です。

一日信用取引とは一般的な名称なので、証券会社によって異なる商品名がつけられています。

一日信用取引を行う場合に必要な手数料には3種類があります。

金利は株を購入したときに発生します。

貸株料は株を売ったときに必要とされます。

取引手数料は信用取引独自の金利または貸株料以外にかかる、通常の株式取引手数料のことです。

信用取引では株式取引手数料以外に、買いの場合は金利が、売りの場合は貸株料が必要となります。手数料が安い証券会社の方が経済的です。

各証券会社によって手数料には違いがあるので、比較検討してコストパフォーマンスがよいものを選ぶことをおすすめします。

信用取引やデイトレードを効果的に行うには知識と経験が必要になります。ある程度株式投資に慣れてから一日信用取引を行うとよいでしょう。

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