移動平均線を見れば取引のタイミングが分かります

移動平均線を使って取引を行う場合には移動平均乖離率とグランビルの法則、ゴールデンクロスとデッドクロスが重要です。

・移動平均乖離率とは

移動平均乖離率は終値と指定期間における移動平均線の平均値がどれほど離れているかを表しています。株式が過度に買われているか、もしくは売られているかを判断するために使われます。終値が指定期間における移動平均値よりも高い場合には、移動平均乖離率がプラスになります。乖離率が5%以上プラスになると、相場が目先調整局面を迎えるとされます。また10%以上プラスの場合には天井になるとされています。

目先とは市場全般で使われる言葉です。数日から1か月ほどの短期的な相場の行方を指します。短期的な相場変動で利ざやを稼ぐ投資家は目先筋、短期的な相場観のことは目先観と呼ばれています。目先よりも長く中期的な相場の行方は中勢、さらに長く長期的な相場の行方は大勢と呼ばれています。

調整とは相場の動きが短期的に下降・上昇することです。市場に存在する銘柄の株価は常に適正な動きをするわけではなく、急激に変化することがあります。何らかの好材料や悪材料が出た場合、株価は乱高下する可能性が存在します。材料が出尽くして市場が落ち着くと、適正な価格に戻るため調整局面に入ります。調整局面の銘柄の株価は、それまでとは逆方向に動くので変化を容易に予測できます。

天井とは株式市場における相場用語の1つです。直近に付けられた最も高い値段のことを指します。反対に安値はそこと呼ばれます。天井と底の間を株価が上下に変動すると、どちらに抜けるのかが投資家の関心事になります。一定の値幅が決まり、上下が固定された状態はボックス圏と呼ばれています。天井と底はトレンドの転換点や相場の上げ下げを知るポイントです。この2つのポイントはまとめて天底と呼ばれています。

株価の終値が指定期間における移動平均値よりも低い場合は、移動平均乖離率がマイナスになります。乖離率がマイナス5%以下に相場は目先反発に転じるとされます。またマイナス10%以下の場合、天底と判断できるとされています。

何らかの材料が出たときに株価が移動平均線から大きく乖離することがあります。あまりにも株価が移動平均線から離れ過ぎた場合、株価変動の行き過ぎを調整するため再び移動平均線に近づくことが考えられます。株価には自律的な調整を行う性質があります。短期的な投資では、この性質を利用して利益を得ることが1つの方法となっています。

スイングトレードでは購入した株を数日間で売却します。下がり過ぎた株式を買って一時的に上昇したときに売却するのが逆張りです。スイングトレードにおいて逆張りをする場合にも、移動平均乖離率が利用されます。ただし、個別の銘柄と日経平均株価のような指数では、移動平均乖離率の傾向に違いが存在します。

・個別銘柄や株価指数と移動平均乖離率の関係について

個別の銘柄には乖離率が大きくなる傾向があります。マザースでは25日移動平均線からの乖離率がマイナス20%以上になるケースも頻繁に見られます。この株式市場は主に新興企業の銘柄を扱っており、1999年11月に大阪取引所(旧大阪証券取引所)のジャスダック(旧ナスダック・ジャパン)に対抗する東京証券取引所によって開設されたものです。旧大阪証券取引所と東京証券取引所の経営統合が進められ、2013年7月16日には現物市場が東京証券取引所に統合されています。マザーズとジャスダックという2つの新興企業向け市場は、東京証券取引所によって運営されるようになりました。

ヤフーファイナンスの株式ランキングを見ると、高乖離率や低乖離率のランキングも確認できます。乖離率のランキングを見るには、まずどれでもよいので株式ランキングの「もっと見る」の部分をクリックしてください。
画面の左側にマーケット関連ランキングや企業ランキングなどが表示されます。その中にテクニカル関連ランキングがあり、高・低乖離率のランキングを確認できます。
市場の全体的な相場が上昇傾向にある場合でも、個別銘柄の相場が下がっていることがあります。個別銘柄に関する悪材料が出ている場合は、株価が一方的に下り続けることが考えられます。市場全体の相場が上昇傾向にあるのに、株価が移動平均線からマイナス方向に乖離している企業には注意しなければなりません。

株価が大きく下落し底になったと思われる場合でも、業績が大幅に下方修正されたり粉飾決算などで上場廃止されることがあります。そのような場合には移動平均線が役立ちません。

好材料が出た場合に、企業の株価が毎日ストップ高となることがあります。ストップ高とは1日の値幅の上限まで株式が買われることです。そのような場合にも移動平均線が役立たなくなります。

チャートを見て天井や底であると判断できる場合でも、実際には移動平均線が役立たないケースがあるので注意しなければなりません。好材料や悪材料をしっかり確認した上で適正な株価を判断することが重要です。

日経平均株価などの株価指数判断する場合にも移動平均線を利用できます。国内の株式市場における代表的な株価指標の1つである日経平均株価は、日経平均や日経225などと呼ばれます。英語圏で報道される場合はNikkei225と表記されています。
日経平均株価は225銘柄の平均株価なので、個別銘柄と比較して堅調な動きをするという特徴があります。仮に暴落した場合でも、25日移動平均線からマイナス8%からマイナス10%程度になるケースが多く見られます。何らかの理由で日経平均株価が移動平均線を大きく下回った場合に買い注文を出せば、市場が落ち着きを取り戻すことで利益を得られる可能性があります。注文を出す際には個別銘柄と株価指数、両方の移動平均乖離率を確かめるとよいでしょう。

・グランビルの法則とは

グランビルの法則は、アメリカのジョセフ・グランビルという金融関係の新聞記者によって提唱された投資手法です。株価と移動平均線の関係を利用した8つのチャートパターンで取引のタイミングを判断します。ジョセフ・グランビルは経済学者などではなく、単なる新聞記者でしたがプレゼンテーションが上手い人物でした。グランビルの法則も多くの投資家に親しみやすかったことから世界的に広まります。この法則はチャートパターンによる取引タイミングを直接的に判断するというよりも、多くの投資家が注目していることを判断するのに便利です。

グランビルの法則には買いと売りでそれぞれ4つずつ、全部で8つのチャートパターンがあります。移動平均線に対して株価が近づく、離れる、交差するという3つのポイントで取引のタイミングを判断します。

グランビルの法則は複雑なように見えますが近づく、離れる、交差するの3点を意識すればそれほど難しくはありません。スイングトレードなど日を跨いで短期的な取引を行う場合にこの法則が必須の知識とされます。実際の取引を通して習得するのが効率的な覚え方です。
まず買いのパターンは次のとおりです。

1.移動平均線が水平もしくは上向きで、株価が上に抜けた状態

この状態では新規に買われるケースが多く見られます。

2.移動平均線が上昇中で、株価が上に抜けた後に下回り、再び上昇した状態

株価が一旦下落しても移動平均線が上昇中なので、株価も再び上昇する可能性がある状態です。一時的な調整局面と考えられるため、押し目買いに最適な時期とされます。

押し目買いとは株価が一時的に下落した時点を狙う取引手法です。一般的に株価は上昇と下落を繰り返しながら高値を更新します。そのため既に上昇し切った状態で買うと、高値掴みになる可能性があります。高値掴みとは株価が上昇したから買ったのに、すぐ下落に転じた状態のことです。相場が上昇している局面で一旦株価が下落した時点を狙えば、高値掴みを回避できます。

3.移動平均線が上昇中で上に抜けた株価が一旦下がり、平均線を上回ったままで再び上昇した状態

この状態は買い乗せに最適な時期とされています。買い乗せとは先高を見込んで買ったところ、予想通り相場が上がって利益が得られたのでさらに先高を見込んで買い注文を出すことです。

4.株価が移動平均線から大きく下に乖離した状態

次に売りのパターンは次のようになります。

1.移動平均線が水平もしくは下降中で株価が下に抜けた状態

2.移動平均線が下降中で株価が一旦上に抜けるものの再び下降に転じた状態

3.移動平均線が下降中で株価が平均線より下で一旦上昇するものの、上抜けすることなく再び下降し始めた状態

この状態は売り乗せに適しているとされます。売り乗せとは先安を見込んで売ったところ、予想通り相場が下がり利益を得ることができたので、さらに先安を見込んで売り注文を出すことです。

4.移動平均線が上昇中で、株価が平均線より大きく上に乖離した状態

この状態では株価が自律反発して上昇する可能性があるため、短期的な買いに適した時期とされます。
自律反発とは市場全般で使われる言葉で、急速に下げた相場が行き過ぎを警戒して自然に少し戻ることを指します。地面に落ちたボールが自律的に跳ね返るように、下がった相場が一定水準まで反転することを意味しています。
自律反発を狙って買われることがあります。ただし地合が悪い場合にはさらに株価が下落することもあるため、注文する場合には地合の確認をしっかりと行わなければなりません。極めて短い時間での取引を行う場合にはタイミングが重要になります。

地合も市場全般で使われる言葉です。相場の状況や雰囲気を意味しています。地合がよい場合は、多少の悪材料があっても相場は乗り越えることができます。しかし地合が悪い場合は、相場がさらに悪化する可能性があります。

・ゴールデンクロスとデッドクロスについて

ゴールデンクロスとは短期の移動平均線が中・長期の移動平均線を下から上に突き抜ける場合で買いのタイミングを指します。反対に短期の移動平均線が中・長期の移動平均線を上から下に突き抜ける場合がデッドクロスで売りのタイミングとされます。交差した移動平均線がともに上昇もしくは下降している場合、相場がより強いトレンドになったことを示します。

ゴールデンクロスとデッドクロスは交差の角度についても注意が必要です。角度が急なほど信頼性が高くなります。この2つのポイントは3か月以上の長期投資で取引のタイミングを判断するのに適しています。1日から1か月ほどの期間で行われる短期投資の場合、交差現象が起きるごとに売買を繰り返すとリスクが高まるので注意しなければなりません。
グランビルの法則は株価と移動平均線の交差で取引のタイミングを判断しました。一方でゴールデンクロスとデッドクロスは短期と中・長期の移動平均線の交差で取引のタイミングを判断します。

短期的な取引を行う場合、株価の変動が激しいと移動平均線との交差が頻繁に起こります。取引のサイン発生に見える偽のシグナルがダマシです。短期的な取引ではダマシが発生するケースが多く見られます。交差したと思えても、結局交差せずに終わることも多いので注意が必要です。ダマシをゴールデンクロスと間違えて株を売った場合、その後株価は上昇せず下落したり横ばいになることがあります。
誤ってダマシの状態で取引をしてしまった場合は、一旦損失を確定させて仕切り直しをするとよいでしょう。ゴールデンクロスやデッドクロスの流れに乗ることができた場合は、利益を伸ばすように取引を行います。例えばゴールデンクロスが発生する前に株を買い、交差したらさらに買い増しして利益を増やす方法が考えられます。仮に交差しなかった場合でも、最初に買っておいた株の利益が出ているので、損失は少なくなります。

ゴールデンクロスやデッドクロスが発生している銘柄を自力で探すのは大変です。「みんなの株式」というサイトでは5日と25日の移動平均線、25日と75日の移動平均線によるゴールデンクロスとデッドクロスを確認することができます。











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