損切りと利食い、塩漬けとナンピン買いについて

・損切りとは

投資家が損失を抱えている状態で保有している株式などを売却し、損失を確定させることが損切りです。ロスカットやストップロスとも呼ばれています。

株価が下落して回復が見込めないような場合には損切りが有効とされます。回復が見込めない場合、保有し続けると損失額が膨らむ可能性があります。

損切りによって損失を確定させれば、それ以上損失を増やさずに済みます。反対に利益が発生している株式などを売却して、利益を確定させることを利食いと呼びます。

・利食いとは

利食いは一般的に以下のような場合に行われます。

1.価格が下落した後で再び上昇した場合に、利益が発生した状態で次の下落に備えて売却する場合。

2.さらに株価が上昇する可能性があるものの、利益を確保するために売却する場合。

投資の世界には「利食い千両」という格言が存在します。これは利益が生じた場合にさらに値上がりしてから売却しようとするのではなく、すぐに売却して利益を確定することをよしとするものです。

同じような格言に「利食い千人力」や「頭としっぽはくれてやれ」などがあります。売却時期の判断は難しいので格言を参考にしながら堅実に利益を確定させることが大切です。

・塩漬けとナンピンとは

株価が下落した場合にそのまま保有し続ける場合は塩漬けと呼ばれます。さらに株価が下落した状況でさらに買い入れて平均買い単価を引き下げるのがナンピン(難平)買いです。

株価の回復が期待できる場合は塩漬けかナンピン買いを選びます。回復を期待できない場合には損切りを選ぶのが基本です。

塩漬けという言葉は主に株式投資の世界で使われます。株価が買値よりも大幅に下落したため、売るに売れない状態のことです。塩漬け銘柄には含み損(評価損)が発生しています。

評価損は、売却しなければ実現損になることはありません。ただし株価は将来的に必ず上昇するというわけではないため、時価評価で価値を認識するのが現実的です。

塩漬けを行っている間は資金が固定されるので、他に投資して利益を得ることができなくなるというデメリットもあります。

株を塩漬けにしないためには、損切りを行う基準を予め設定しておくことが大切です。個人投資家は損切りができず、利益の発生した銘柄しか売却しない傾向が見られます。そのため機関投資家と比較して塩漬けになる銘柄が多くなります。

ナンピン買いとは難を平均化することです。購入した株式や投資信託が下落した場合に、買付コスト(損益分岐点)を引き下げることを目的としてさらに買付を行います。

ナンピン買いは株価が上昇傾向にあり、一時的に下がった場合に行うと有利になる可能性があります。一方で下落傾向にある場合には損失を拡大させるおそれがあるので注意が必要です。

なお、信用取引における空売りで値上がりした場合に、売り増してコストを上げる行為は「ナンピン売り」と呼ばれます。

相場の格言には「下手なナンピン素寒貧」というものがあります。ある銘柄の株価が下落し続け企業が倒産した場合に、ナンピンを行っていると致命的な損失を被る可能性が存在します。ナンピンにはリスクがあるので慎重に行う必要があります。

ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析について

投資タイミングを判断するには、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の2つの方法があります。

基本的にファンダメンタルズ分析は長期投資、テクニカル分析は短期投資に適しています。それぞれの方法にメリットとデメリットがあるので、状況に応じて使い分けることが重要です。

いずれかの手法にのみ頼り切ると、思わぬ損失を被る可能性があるので注意しましょう。

・ファンダメンタルズ分析とは

ファンダメンタルズ分析は財務状況や業績をもとに企業の本質的な価値と市場価格との差を分析する方法です。

PER(株価収益率)やPBR (株価純資産倍率)、ROE(株主資本利益率)などが指標として使われます。

企業の本来的な価値を分析し、現在の株価がそれよりも安いか高いかを判断します。割安な場合に購入して、企業価値に見合う株価になったときに売却すれば利益を得ることができます。

長期的に利益が確定するのを待てる人であれば、精神的に余裕を持って投資を行うことができるファンダメンタルズ分析が適しています。頻繁に売買を行うわけではないので、取引に集中する時間がない人にも最適です。

・ファンダメンタルズ分析のメリットとは

ファンダメンタルズ分析では短期的なトレンドに左右されることなく投資判断を行うことができます。精神的に余裕を持って投資ができるというメリットがあります。

テクニカル分析では短期的なトレンドに注目しますが、市場が激しく変動すると動揺して自分の投資スタイルを見失い、損失を被る可能性が存在します。自分の投資スタイルを貫く精神的な強さが重要となります。

ファンダメンタルズ分析では長期投資になるのが一般的です。短期的に株価が下落した場合でも、企業の本来的な価値に見合う株価になるまで待つことができます。

天災や企業における不祥事、事故などが発生すると株価が大きく下落します。ファンダメンタルズ分析では、そのような状況が発生するのを待って株式を購入することになります。

優れた企業であれば、一時的に株価が下がってもいずれ本来の価値まで上昇します。株価が上昇した時点で売却すれば利益が得られます。

・ファンダメンタルズ分析のデメリットについて

個人投資家と機関投資家を比較すると、後者の方が素早く有益な情報を取得することができます。株式市場で利益を得るためには、いち早く有益な情報を掴む必要があります。情報取得能力が高い機関投資家の方が有利です。

個人投資家がファンダメンタルズ分析を行う場合には、割安と判断して購入した株式が既に割高になってしまっていることがあるので注意しなければなりません。

ファンダメンタルズ分析は長期投資で行われるのが一般的です。そのため利益を確定するまでに時間がかかるというデメリットもあります。

・テクニカル分析とは

テクニカル分析は株価の値動きや相場の先行きをデータや経験則に基づいて分析・予測します。チャート分析が代表的な方法です。

テクニカル分析は短期的な市場の変化を予測するのに役立ちます。ただし100%確実というわけではないので注意が必要です。

何度も失敗を重ねながら取引の経験を積むことができれば、この方法を自分のものにすることができます。

・テクニカル分析のメリットとは

株式投資では主観を排除した冷静な姿勢が重要になります。しかし主観が投資判断に影響を及ぼし、間違った選択をする可能性があるので注意しなければなりません。

テクニカル分析は客観的に市場の状況を判断するのに適しています。経営者の人柄や商品の魅力など主観的な判断に頼るのではなく、チャートの形状から客観的に投資時期を判断することができます。

ファンダメンタルズ分析では情報収集能力の優れた機関投資家の方が、個人投資家と比較して有利でした。

しかしテクニカル分析の場合は、両者に優劣の差がほとんどありません。株価はリアルタイムで公開されており、個人投資家も機関投資家も同じように取得できます。

テクニカル分析による短期的な市場予測であれば、個人投資家でも機関投資家と同等に戦うことが可能です。

・テクニカル分析のデメリットについて

基本的にテクニカル分析は短期的な取引で行われます。デイトレードなどの短期的な取引では心理的な強さが求められます。仕掛けをした後の値動きに動揺して自分の投資方針を見失わないように注意しましょう。

予想通りの値動きにならない場合は、損切りするのも1つの手段です。臨機応変に対応する必要があります。

テクニカル分析による判断は絶対に正しいというわけではありません。あくまで短期的な市場変動を予測するだけなので、100%信頼して取引を行わないよう注意が必要です。

何度も取引を重ねれば、テクニカル分析の上手な使い方を覚えることができます。安定して投資を行うためには経験を積むことが大切です。

失敗をした場合には損切りを行い、原因を冷静に分析・検証するようにしましょう。

現物取引と信用取引について

現物取引は投資家が自らの現金と株式で取引をするもので、取引を行うまでに期間制限はありません。

株式や債券などの有価証券の現物取引では、市場の時価で計算した売買代金の受け渡しが行われます。

株式の現物取引は保有している資金の範囲内で株式を購入します。

また保有していない株式を売却することはできません。

信用取引ならば保有資金を超える金額を借りて株式を買ったり、保有していない株式を借りて売却することができます。

資金を借りて買うことを「空売り」、株式を借りて売却することを「空売り」と呼びます。

現物取引では上場している全ての銘柄が取引対象です。取引を行うには委託手数料や税金を払う必要があります。

信用取引の場合は委託手数料や税金の他にも様々な費用が発生します。

買建と売建では費用の種類に違いがあります。

信用取引を行うには金利(買建)や貸株料(売建)、信用管理費や名義書換料、逆日歩(売建)や権利処理手数料が必要です。

現物取引では自己資金だけで株式を購入し、保有している株式のみを売却することになります。

特に現物取引においてのみ得られるメリットとしては株主優待や配当金、株価上昇による利益などがあります。

気に入った企業を応援したり、借金をせずに取引を行えるのも現物取引の特徴です。

株主優待は企業が投資家に株式を購入してもらうためのもので、サービスを割引か価格で利用できたり商品券がもらえたりします。

ただし全ての銘柄に株主優待があるわけではありません。また株主優待の内容は変更されることがあります。

株式を購入する前にホームページなどで確認するとよいでしょう。

配当金は企業が獲得した利益の一部を投資家に分配するものです。インカムゲインに該当します。

企業が定めた日までに株式を保有していると、保有数に応じて配当金をもらうことができます。

ただし配当金がない銘柄もあるので注意が必要です。

株価の値上がりによる利益はキャピタルゲインや売買差益などと呼ばれます。多くの投資家がキャピタルゲインを目標に取引を行っています。

安定した利益を得るためには、株式や市場などに関する知識が必要になります。

少額の取引から始めて、少しずつ経験を積むことが大切です。

会社の所有権を細分化した株式を購入すれば、その会社の株主になって株主総会に参加することができます。

株主総会に参加すれば経営に関する意見を述べることができるようになります。

株式の保有率が大きい株主ほど、企業に対する強い影響力を行使することができます。

成長を期待する企業の株式を購入して応援し、株価が上昇したところで売却して利益を出すという投資方法もあります。

現物取引では自己資金だけで取引を行うので借金を抱える必要がありません。

利息も発生しないだけでなく、株価が値下がりをして大きく損をするリスクが少ないというメリットがあります。

信用取引の場合は株価が値下がりして損失が発生するだけでなく、多額の借金を抱える可能性が存在します。

よりリスクの少ない取引を行いたいのであれば、現物取引がおすすめです。

・制度信用取引とは

信用取引には制度信用取引と無期限信用取引、一日信用取引があります。

制度信用取引は現金や株式を借りて取引を行います。

そのため決められた期限までに返却しなければなりません。

返却期限は一般的に期日と呼ばれています。

制度信用取引では、取引可能な銘柄や借入れた現金・株式の返却期限などが取引所規則によって決められています。

取引所が指定する制度信用銘柄には2種類あります。

貸借銘柄は買建と売建の両方が可能です。信用銘柄は買建のみできます。

制度信用取引では新規建をした日から6か月以内に返済しなければなりません。

貸借銘柄は取引所や証券会社による規制によって売建を停止することがあるので注意が必要です。

制度信用取引で売建をしている場合は追加コストとして逆日歩が発生することがあります。

買建は借りた現金で株式を買います。一方で売建は借りた株式を売って現金を得ます。

これらの株式や現金は担保として証券会社に預けられます。

証券会社は買建側の株式を売建側が借りた株式に、売建側の現金は買建側が借りる現金に融通するのが通常です。

制度信用銘柄の場合は、証券会社の中で差し引きを行い、不足分を証券会社が証券金融会社から借入れます。

証券金融会社でも各証券会社から借入れ分を融通していますが、新規売建注文が増加した場合などに株式が不足することがあります。

証券金融会社で株式が不足すると、機関投資家などから入札で決まった手数料を支払って調達します。

この手数料は逆日歩(品貸料)と呼ばれています。

逆日歩は株式を借りている売建側が支払わなければなりません。

買建をしている場合には、株式の貸し手なので逆日歩を受け取ることができます。

逆日歩が発生するかどうかは営業日ごとの取引終了後に売買を差し引くことで判明します。

また逆日歩の価格は取引翌営業日に行われる入札によって決まるので、発生するかどうか、どの程度の額になるのかを事前に判断することはできません。

株式市場における需給状況が大きく売りに傾いている場合、高額の逆日歩が発生する可能性があります。

売建で銘柄が値下がりして利益が出ても、逆日歩が上回る可能性があるので注意しなければなりません。

・証券金融会社とは

証券金融会社は信用取引の決済に必要な資金や株式を、金融商品取引所の正会員などになっている証券会社に貸し付けます。

また証券会社が公社債の引受・売買に伴って必要とする短期の保有資金を貸し付けたり、個人や法人に対して有価証券を担保として貸し付けることもあります。

証券金融会社は貸金業法ではなく金融商品取引法156条の24による免許制です。

資本金が1億円以上で一定の要件を満たすと免許が付与されます。

2019年現在では日本証券金融株式会社のみが活動中です。

日本証券金融株式会社は信用取引における株券の貸付や資金貸付を行っているだけでなく、信託銀行を兼営したり日銀特融の窓口にもなっています。

日銀特融とは日本銀行が金融システムの信用維持を目的として、政府からの要請を受けて資金不足に陥っている金融機関に無担保・無制限に行う特別融資のことです。

他に貸し手が存在しない場合に融資を行う金融機関のことを一般的に最後の貸し手と呼びます。

特に破綻の可能性がある金融機関に対して中央銀行が融資を行う機能を指して、最後の貸し手と呼ぶことがあります。

中央銀行とは日本銀行のように、国歌や一定地域における金融システムの中心となる機関のことです。

通貨価値や金融システムの安定化などの金融政策を司るため、通貨の番人とも呼ばれています。

日銀特融は日本銀行が行う最後の貸し手機能です。

・無期限信用取引とは

無期限信用取引は一般信用取引とも呼ばれます。原則として期限がありません。

上場廃止や合併、株式併合、株式分割などの事象が生じた場合や証券会社の与信管理における都合、株式の調達が困難な場合などで、例外的に期日が設定されることがあります。

無期限信用取引では返済期限や逆日歩などを投資家と証券会社の間で自由に設定することができます。

基本的に返済期限や逆日歩がなくすべての銘柄を取引可能です。

無期限信用取引では原則として取引所に上場している全ての銘柄を買建できます。

新規上場銘柄も上場初日から取引可能です。

制度信用取引では売建ができない非貸借銘柄の場合でも、証券会社の指定するものであれば売建ができます。

基本的に無期限信用取引では全ての銘柄を買建できますが整理銘柄は除きます。

ただし証券会社の判断によって対象外とされることもあります。

売建可能な銘柄は証券会社が指定するもののみですが、貸付株式の調達が難しくなる可能性があるような場合には、新規の売買停止などの措置が取られることがあります。

制度信用取引では返済期限が6か月でしたが、無期限信用取引では原則として返済期限がありません。

信用取引による長期的な投資も可能となっています。

無期限信用取引では証券金融会社を使わずに、証券会社自身が現金と株式を調達します。制度信用取引では逆日歩が発生する場合でも、無期限信用取引では発生しません。

・一日信用取引とは

一日信用取引は新規・決済約定を1日内で完了します。

信用取引では現物取引とは異なり売り注文から始めることができます。

株を売りたい場合は証券会社から株を借りて売却し、買い戻した後で返却します。

買い注文や売り注文に関係なく、信用取引の新規約定した日のうちに決済約定を行うのが一日信用取引です。

一日信用取引とは一般的な名称なので、証券会社によって異なる商品名がつけられています。

一日信用取引を行う場合に必要な手数料には3種類があります。

金利は株を購入したときに発生します。

貸株料は株を売ったときに必要とされます。

取引手数料は信用取引独自の金利または貸株料以外にかかる、通常の株式取引手数料のことです。

信用取引では株式取引手数料以外に、買いの場合は金利が、売りの場合は貸株料が必要となります。手数料が安い証券会社の方が経済的です。

各証券会社によって手数料には違いがあるので、比較検討してコストパフォーマンスがよいものを選ぶことをおすすめします。

信用取引やデイトレードを効果的に行うには知識と経験が必要になります。ある程度株式投資に慣れてから一日信用取引を行うとよいでしょう。

スイングトレードに関する基礎知識

・スイングトレードとは

スイングトレードは投機手法の一種です。

投資対象となる株式銘柄を数日から数週間単位で次々と乗り換えます。

基本的に上昇傾向にある業種の関連銘柄に投資を行います。

ただし好調な業種に含まれる銘柄でも、財務体質に問題のある企業は除外します。

スイングトレードでは、予め決められた短期の投機期間を厳守する必要があります。

同じトレンドが続いている間は銘柄を保有し、トレンドの波を利用して利益を得ます。

一般的に株式投資を行う場合には、企業の財務状態や成長性などに関する情報を参考にします。

しかしスイングトレードでは短期間で取引を終わらせるため、ファンダメンタルズ分析よりもトレンドを知るためのテクニカル分析が重要になります。

デイトレードは1日で売買を完結させる取引手法です。

1日のうちに何度も注文を出すことになります。

一方でスイングトレードでは数日間にわたって銘柄を保有します。

取引の頻度は2日から1週間に1回です。

デイトレードのように1日中パソコンに張り付く必要はなく、取引を頻繁に行わないので売買手数料も安くなります。

スイングトレードではチャートを見ながら株価のトレンドを把握します。

トレンドには上昇と下降、横ばいの3つの状態があります。

またトレンドにも短期と中期、長期が存在します。

自分の取引スタイルに応じた期間トレンドの銘柄を選ぶとよいでしょう。

例えば短期でスイングトレードをしたい場合には、短期トレンドの銘柄を探すことになります。

状況を見ながら市場の流れに乗って利益を出すのがスイングトレードです。

市場の動きを見極めるには移動平均線が重要になります。

スイングトレードには株価の変動幅が大きく流動性のある銘柄が適しています。

また話題になっているテーマ株は短期的に株価が大きく変動する可能性があります。

上昇相場では買われる銘柄が次々に変化します。

1つの銘柄にこだわるのではなく、出来高が多くて取引しやすい複数の銘柄を選んでおくとよいでしょう。

スイングトレードは数日から数週間の期間で取引を行うので、常に市場を監視する必要がありません。

そのためサラリーマンなどの副業に適しています。

副業と言ってもアルバイトなどとは異なり預金などと同じ資産運用なので、会社の副業禁止規定に該当するわけではありません。

勤務時間外であれば何の問題もなく取引を行うことができます。

一般的なサラリーマンの場合、投資による利益が20万円以下であれば確定申告は不要です。

また源泉徴収ありの特定口座で取引を行っていれば、20万円を超えた場合でも確定申告が不要になります。

これらの場合、会社に知られることなく資産運用を行うことが可能です。

スイングトレードはサラリーマンなどの副業に適しています。

上手に取引を行えば大きな利益を得られる可能性がありますが、反対に損失を被る可能性も存在します。

投資を行う場合には、仮に全額失っても生活に影響を及ぼさない資金を使うとよいでしょう。

また、最初は少ない資金で投資を初めて、取引に慣れたら徐々に増やしていくのが効率的な方法です。

・スイングトレードのメリットとデメリット

スイングトレードには様々なメリットとデメリットがあります。

両者を十分把握した上で取引を行うことが大切です。

スイングトレードのメリットとしては、まず企業分析をしなくても大きな利益を得る可能性がある点が挙げられます。

ごく短期間で取引を行うデイトレードと比較して値動きが激しく、相場が上昇している局面で売れば大きな利益を得ることができます。

長期的な取引を行う際には企業の業績から将来の株価を予想するファンダメンタルズ分析が必要になります。

しかしスイングトレードはテクニカル分析の方法を覚えるだけで誰でも取引を始めることができます。

スイングトレードは数日から数週間かけて取引を行います。

デイトレードと異なり市場が開いている時間に監視し続ける必要がないので楽です。

また頻繁に取引を行わないので、売買手数料を安く抑えることもできます。

スイングトレードでは、最も長く銘柄を保有した場合でも期間は数週間です。

ポジショントレードや長期トレードのように数年から数十年にわたって投資を行うわけではありません。

そのため資金の回転効率が優れており、積極的な投資により資産を増やしやすいというメリットがあります。

スイングトレードには主に2つのデメリットが存在します。

まず市場が開いている時間外に発生した株価の変動要因に左右されるという点が挙げられます。

デイトレードの場合はその日のうちに取引が完了するため、市場が閉まれば取引のことを考える必要がありません。

時間外の事情に左右される心配も不要です。

しかしスイングトレードの場合は、市場終了後に何らかの株価変動要因が発生すると翌日の株価に影響を及ぼすため注意が必要になります。

日本の証券取引所が閉まっている夜間にも海外の市場では取引が行われており、翌日の株価が影響を受ける可能性が存在します。

時間外の事情についいも注意を払う必要があるというのがスイングトレードのデメリットの1つです。

スイングトレードのもう1つのデメリットとしては、損切りが難しいという点を挙げることができます。

一旦損切りをした銘柄の株価が、翌日になって上昇する可能性もあります。

そのためずるずると損切りできず、機会を逃す可能性があるので注意が必要です。

1日で取引が完了するデイトレードであれば、スイングトレードと比較して損切りがしやすくなります。

・株式投資の取引期間について

株式投資は取引を行う期間によって呼び方と投資スタイルに違いがあります。

それぞれの特徴を把握して、自分に合ったスタイルで投資を行うとよいでしょう。

数秒から数分の極めて短い時間で取引を行う投資スタイルはスキャルピングと呼ばれます。

この方法では1円でも値上がりすれば売り注文を出し、小さな利益を積み上げることになります。スキャルピングで利益を得るには数秒単位の取引が必要です。

専用のツールやシステムが必要とされるので、一般的な投資家が行うのは難しいという特徴があります。

初心者の場合は短期的な値動きに左右されない長期的な取引の方が適しています。

数分から数時間で取引を行う投資スタイルはデイトレードと呼ばれます。

デイトレードはその日のうちに取引を完結させる点に特徴があります。

この方法で取引を行う場合の投資パターンは投資家によって様々です。

株式市場が開いている午前9時から午後15時までパソコンに張り付いている人もいれば、一定の時間だけ取引を行う人もいます。

デイトレードでは1日の値動きが大きな銘柄が扱われます。

株式の取引に慣れた人に向いている投資スタイルです。

この方法では株式市場が開いていない時間帯の株価変動要因には左右されないというメリットがあります。

取引時間を経過すれば市場の値動きを気にする必要がありません。

数日から数週間にかけて取引を行う投資スタイルがスイングトレードです。

購入した銘柄は数日間にわたって保有し続けることになります。

株価がある程度上昇するのを待って売却します。

スイングトレードを行う場合には、損切りのタイミングを決めておくことが重要です。

どのくらいまで株価が下落したら売却するのかを想定した上で取引を行います。

デイトレードと異なり取引時間を気にしなくてよいというメリットがあります。

サラリーマンなどが副業で株式投資を行う場合などに適した方法です。

数週間から数年にかけて取引を行うスタイルはポジショントレードと呼ばれます。

この方法では複数の銘柄を分散保有し、ポジションを組み替えて大きな利益を得る点に特徴があります。

ポジショントレードは経済状況の影響を受けやすく、株価が上昇している局面では大きな利益を得る可能性が存在します。

しかし株価が下落する局面では大きな損失を被る可能性があるので注意が必要です。

ポジショントレードには慎重に銘柄を選定できるというメリットがあります。

一方で損切りのタイミングを判断するのが難しいというデメリットも存在します。

長期トレードは数年から数十年かけて取引を行う投資スタイルです。

かなり長期的に銘柄を保有し続けます。

株主優待や配当金を目当てにする投資家が多いのもこのスタイルの特徴です。

短期的に株価が下落しても、数年待てば回復することがあります。

長期トレードを行う場合には、将来性があり業績の安定した企業を選ぶとよいでしょう。

不安定な企業を選ぶと、株価が回復不可能なレベルに下落したり売却が不可能になる可能性があるので注意しなければなりません。

慎重に信頼性の高い企業を選べば、短期的な株価の変動に左右されないので初心者にも安心な投資スタイルです。

投資スタイルと取引期間をまとめると以下のようになります。

スキャルピング:数秒から数分
デイトレード:数分から数時間
スイングトレード:数日から数週間
ポジショントレード:数週間から数年
長期トレード:数年から数十年

自分の投資家としてのレベルや、生活スタイルに合った方法で取引を行うことが大切です。

移動平均線を見れば取引のタイミングが分かります

移動平均線を使って取引を行う場合には移動平均乖離率とグランビルの法則、ゴールデンクロスとデッドクロスが重要です。

・移動平均乖離率とは

移動平均乖離率は終値と指定期間における移動平均線の平均値がどれほど離れているかを表しています。株式が過度に買われているか、もしくは売られているかを判断するために使われます。終値が指定期間における移動平均値よりも高い場合には、移動平均乖離率がプラスになります。乖離率が5%以上プラスになると、相場が目先調整局面を迎えるとされます。また10%以上プラスの場合には天井になるとされています。

目先とは市場全般で使われる言葉です。数日から1か月ほどの短期的な相場の行方を指します。短期的な相場変動で利ざやを稼ぐ投資家は目先筋、短期的な相場観のことは目先観と呼ばれています。目先よりも長く中期的な相場の行方は中勢、さらに長く長期的な相場の行方は大勢と呼ばれています。

調整とは相場の動きが短期的に下降・上昇することです。市場に存在する銘柄の株価は常に適正な動きをするわけではなく、急激に変化することがあります。何らかの好材料や悪材料が出た場合、株価は乱高下する可能性が存在します。材料が出尽くして市場が落ち着くと、適正な価格に戻るため調整局面に入ります。調整局面の銘柄の株価は、それまでとは逆方向に動くので変化を容易に予測できます。

天井とは株式市場における相場用語の1つです。直近に付けられた最も高い値段のことを指します。反対に安値はそこと呼ばれます。天井と底の間を株価が上下に変動すると、どちらに抜けるのかが投資家の関心事になります。一定の値幅が決まり、上下が固定された状態はボックス圏と呼ばれています。天井と底はトレンドの転換点や相場の上げ下げを知るポイントです。この2つのポイントはまとめて天底と呼ばれています。

株価の終値が指定期間における移動平均値よりも低い場合は、移動平均乖離率がマイナスになります。乖離率がマイナス5%以下に相場は目先反発に転じるとされます。またマイナス10%以下の場合、天底と判断できるとされています。

何らかの材料が出たときに株価が移動平均線から大きく乖離することがあります。あまりにも株価が移動平均線から離れ過ぎた場合、株価変動の行き過ぎを調整するため再び移動平均線に近づくことが考えられます。株価には自律的な調整を行う性質があります。短期的な投資では、この性質を利用して利益を得ることが1つの方法となっています。

スイングトレードでは購入した株を数日間で売却します。下がり過ぎた株式を買って一時的に上昇したときに売却するのが逆張りです。スイングトレードにおいて逆張りをする場合にも、移動平均乖離率が利用されます。ただし、個別の銘柄と日経平均株価のような指数では、移動平均乖離率の傾向に違いが存在します。

・個別銘柄や株価指数と移動平均乖離率の関係について

個別の銘柄には乖離率が大きくなる傾向があります。マザースでは25日移動平均線からの乖離率がマイナス20%以上になるケースも頻繁に見られます。この株式市場は主に新興企業の銘柄を扱っており、1999年11月に大阪取引所(旧大阪証券取引所)のジャスダック(旧ナスダック・ジャパン)に対抗する東京証券取引所によって開設されたものです。旧大阪証券取引所と東京証券取引所の経営統合が進められ、2013年7月16日には現物市場が東京証券取引所に統合されています。マザーズとジャスダックという2つの新興企業向け市場は、東京証券取引所によって運営されるようになりました。

ヤフーファイナンスの株式ランキングを見ると、高乖離率や低乖離率のランキングも確認できます。乖離率のランキングを見るには、まずどれでもよいので株式ランキングの「もっと見る」の部分をクリックしてください。
画面の左側にマーケット関連ランキングや企業ランキングなどが表示されます。その中にテクニカル関連ランキングがあり、高・低乖離率のランキングを確認できます。
市場の全体的な相場が上昇傾向にある場合でも、個別銘柄の相場が下がっていることがあります。個別銘柄に関する悪材料が出ている場合は、株価が一方的に下り続けることが考えられます。市場全体の相場が上昇傾向にあるのに、株価が移動平均線からマイナス方向に乖離している企業には注意しなければなりません。

株価が大きく下落し底になったと思われる場合でも、業績が大幅に下方修正されたり粉飾決算などで上場廃止されることがあります。そのような場合には移動平均線が役立ちません。

好材料が出た場合に、企業の株価が毎日ストップ高となることがあります。ストップ高とは1日の値幅の上限まで株式が買われることです。そのような場合にも移動平均線が役立たなくなります。

チャートを見て天井や底であると判断できる場合でも、実際には移動平均線が役立たないケースがあるので注意しなければなりません。好材料や悪材料をしっかり確認した上で適正な株価を判断することが重要です。

日経平均株価などの株価指数判断する場合にも移動平均線を利用できます。国内の株式市場における代表的な株価指標の1つである日経平均株価は、日経平均や日経225などと呼ばれます。英語圏で報道される場合はNikkei225と表記されています。
日経平均株価は225銘柄の平均株価なので、個別銘柄と比較して堅調な動きをするという特徴があります。仮に暴落した場合でも、25日移動平均線からマイナス8%からマイナス10%程度になるケースが多く見られます。何らかの理由で日経平均株価が移動平均線を大きく下回った場合に買い注文を出せば、市場が落ち着きを取り戻すことで利益を得られる可能性があります。注文を出す際には個別銘柄と株価指数、両方の移動平均乖離率を確かめるとよいでしょう。

・グランビルの法則とは

グランビルの法則は、アメリカのジョセフ・グランビルという金融関係の新聞記者によって提唱された投資手法です。株価と移動平均線の関係を利用した8つのチャートパターンで取引のタイミングを判断します。ジョセフ・グランビルは経済学者などではなく、単なる新聞記者でしたがプレゼンテーションが上手い人物でした。グランビルの法則も多くの投資家に親しみやすかったことから世界的に広まります。この法則はチャートパターンによる取引タイミングを直接的に判断するというよりも、多くの投資家が注目していることを判断するのに便利です。

グランビルの法則には買いと売りでそれぞれ4つずつ、全部で8つのチャートパターンがあります。移動平均線に対して株価が近づく、離れる、交差するという3つのポイントで取引のタイミングを判断します。

グランビルの法則は複雑なように見えますが近づく、離れる、交差するの3点を意識すればそれほど難しくはありません。スイングトレードなど日を跨いで短期的な取引を行う場合にこの法則が必須の知識とされます。実際の取引を通して習得するのが効率的な覚え方です。
まず買いのパターンは次のとおりです。

1.移動平均線が水平もしくは上向きで、株価が上に抜けた状態

この状態では新規に買われるケースが多く見られます。

2.移動平均線が上昇中で、株価が上に抜けた後に下回り、再び上昇した状態

株価が一旦下落しても移動平均線が上昇中なので、株価も再び上昇する可能性がある状態です。一時的な調整局面と考えられるため、押し目買いに最適な時期とされます。

押し目買いとは株価が一時的に下落した時点を狙う取引手法です。一般的に株価は上昇と下落を繰り返しながら高値を更新します。そのため既に上昇し切った状態で買うと、高値掴みになる可能性があります。高値掴みとは株価が上昇したから買ったのに、すぐ下落に転じた状態のことです。相場が上昇している局面で一旦株価が下落した時点を狙えば、高値掴みを回避できます。

3.移動平均線が上昇中で上に抜けた株価が一旦下がり、平均線を上回ったままで再び上昇した状態

この状態は買い乗せに最適な時期とされています。買い乗せとは先高を見込んで買ったところ、予想通り相場が上がって利益が得られたのでさらに先高を見込んで買い注文を出すことです。

4.株価が移動平均線から大きく下に乖離した状態

次に売りのパターンは次のようになります。

1.移動平均線が水平もしくは下降中で株価が下に抜けた状態

2.移動平均線が下降中で株価が一旦上に抜けるものの再び下降に転じた状態

3.移動平均線が下降中で株価が平均線より下で一旦上昇するものの、上抜けすることなく再び下降し始めた状態

この状態は売り乗せに適しているとされます。売り乗せとは先安を見込んで売ったところ、予想通り相場が下がり利益を得ることができたので、さらに先安を見込んで売り注文を出すことです。

4.移動平均線が上昇中で、株価が平均線より大きく上に乖離した状態

この状態では株価が自律反発して上昇する可能性があるため、短期的な買いに適した時期とされます。
自律反発とは市場全般で使われる言葉で、急速に下げた相場が行き過ぎを警戒して自然に少し戻ることを指します。地面に落ちたボールが自律的に跳ね返るように、下がった相場が一定水準まで反転することを意味しています。
自律反発を狙って買われることがあります。ただし地合が悪い場合にはさらに株価が下落することもあるため、注文する場合には地合の確認をしっかりと行わなければなりません。極めて短い時間での取引を行う場合にはタイミングが重要になります。

地合も市場全般で使われる言葉です。相場の状況や雰囲気を意味しています。地合がよい場合は、多少の悪材料があっても相場は乗り越えることができます。しかし地合が悪い場合は、相場がさらに悪化する可能性があります。

・ゴールデンクロスとデッドクロスについて

ゴールデンクロスとは短期の移動平均線が中・長期の移動平均線を下から上に突き抜ける場合で買いのタイミングを指します。反対に短期の移動平均線が中・長期の移動平均線を上から下に突き抜ける場合がデッドクロスで売りのタイミングとされます。交差した移動平均線がともに上昇もしくは下降している場合、相場がより強いトレンドになったことを示します。

ゴールデンクロスとデッドクロスは交差の角度についても注意が必要です。角度が急なほど信頼性が高くなります。この2つのポイントは3か月以上の長期投資で取引のタイミングを判断するのに適しています。1日から1か月ほどの期間で行われる短期投資の場合、交差現象が起きるごとに売買を繰り返すとリスクが高まるので注意しなければなりません。
グランビルの法則は株価と移動平均線の交差で取引のタイミングを判断しました。一方でゴールデンクロスとデッドクロスは短期と中・長期の移動平均線の交差で取引のタイミングを判断します。

短期的な取引を行う場合、株価の変動が激しいと移動平均線との交差が頻繁に起こります。取引のサイン発生に見える偽のシグナルがダマシです。短期的な取引ではダマシが発生するケースが多く見られます。交差したと思えても、結局交差せずに終わることも多いので注意が必要です。ダマシをゴールデンクロスと間違えて株を売った場合、その後株価は上昇せず下落したり横ばいになることがあります。
誤ってダマシの状態で取引をしてしまった場合は、一旦損失を確定させて仕切り直しをするとよいでしょう。ゴールデンクロスやデッドクロスの流れに乗ることができた場合は、利益を伸ばすように取引を行います。例えばゴールデンクロスが発生する前に株を買い、交差したらさらに買い増しして利益を増やす方法が考えられます。仮に交差しなかった場合でも、最初に買っておいた株の利益が出ているので、損失は少なくなります。

ゴールデンクロスやデッドクロスが発生している銘柄を自力で探すのは大変です。「みんなの株式」というサイトでは5日と25日の移動平均線、25日と75日の移動平均線によるゴールデンクロスとデッドクロスを確認することができます。











株式投資を行うならば移動平均線の理解が必須です

株式投資を効率的に行うためには、移動平均線について理解する必要があります。

この線は一定期間における株価の終値の平均値をつないだものです。

一般的なチャートではローソク足だけでなく移動平均線も描かれています。

この線の見方や作成方法を覚えれば、取引を行う絶好の機会を読み取ることができます。

移動平均線を初めて見る場合は戸惑うかもしれませんが、それほど難しいものではありません。

一旦慣れてしまえば、誰でも簡単に取引の機会を見極めることができるようになります。

・移動平均線を見れば株価のトレンドが分かります。

移動平均線は日々の株価の動きを知るための指標です。

当日から一定期間遡った終値の平均値を1日ずつずらしてグラフ化します。

例えば10日移動平均線の場合は10日分の終値を合計して10で割ります。

移動平均線は一定期間の株価の平均値を表しています。

この線を見れば株価のトレンドを把握できます。

一般的な株価チャートではローソク足に並んで2本か3本の移動平均線が引かれています。

この線を見ることで現在の株価が一定期間の平均値と比較してどの程度の乖離しているかが分かります。

また株価の上昇・下落傾向やトレンドの変化も判断できます。

株式市場における値動きには原則として規則性がありません。

しかし平均値の動きと現在の株価を比較すると、一定の規則性を見出すことができます。

チャートを利用したクニカル分析では、今後の株価の動きを予測するため移動平均線が使われています。

移動平均線は投資家が株式市場において売買を行うための1つの判断基準です。

多くの投資家は移動平均線の動きに合わせて取引を行っています。

投資家は移動平均線から売買に絶好の時期を読み取ります。

そのため兆しが現れているときには、予測どおりに株価が動くケースが多く見られます。

取引に適した時期を逃さないために、移動平均線から兆しを正確に読み取ることが重要になります。

・移動平均線の計算方法

移動平均線は一定期間の終値の平均値をつないだものです。

試しに5日移動平均線を作成してみます。

下の表はある企業の6日間の株価の終値です。

5日移動平均線を作る場合には、まず1日目から5日目までの終値を足します。

110+120+130+90+105=555円

555円を5で割ると平均は111円です。

この値はチャート上の5日目の位置に置かれます。


さらに2日目から6日目までの平均値を算出すると。

(120+130+90+105+120)÷5=113円

2日目から6日目までの平均値は113円です。

この数値は6日目の位置に置かれます。

このように1日ずつずらして一定期間の平均値をつないだものが移動平均線です。


移動平均線の形状を見ると一定期間の終値が上昇傾向にあるのか下降傾向にあるのかが分かります。

・移動平均線の種類

移動平均線は期間によって日足と週足、月足のものがあります。

数日から数週間にわたって短期的に取引を行いたい場合は、基本的に日足や週足のチャートを使用します。

日足チャートの移動平均線の期間は5日と25日、75日が一般的です。チャート上では3本の移動平均線がローソク足に絡むように描かれます。

短期から中期にわたる投資に適した移動平均線です。

週足チャートでは13週と26週が一般的な期間になります。

このタイプの移動平均線は短期的な投資にも利用できますが、むしろ中長期的な投資に適しています。

月足チャートでは9ヶ月や24ヶ月の移動平均線が利用されます。

短期的な投資ではほとんど使われることはありません。中長期的な投資を行う場合に使われるのが基本です。

チャートツールの多くでは移動平均線の期間を自由に変更することができます。

移動平均線やチャートの使い方に慣れたら、様々な期間設定を試してみるとよいでしょう。

・移動平均線を見る際のポイントについて

移動平均線を見る際には、線と株価の位置が重要になります。

まず最初に現在の株価が線の上にあるか下にあるかを確認しましょう。これによって買い注文が多いのか売り注文が多いのかが分かります。


買い注文が多いほど需要超過状態なので株価は上昇します。

逆に売り注文が多くなると供給が需要を超過しており株価は下落することになります。

5日移動平均線で考える場合、現在の株価が線よりも上にあれば5日間の平均よりも買い注文が多いと判断できます。

短期的に買い注文の勢いが強まっており、株価が上昇する可能性があります。

5日移動平均線は短期的な株価の動きを予測するのに便利です。

より長い期間における株価の動きを予測するには25日や75日の移動平均線を利用します。

現在の株価が移動平均線より上にある場合、株が買われていると判断できます。

一方で線よりも下にある場合は、株が売られていることになります。

それまで株価が線の上にあったのに下に移った場合は、買い注文より売り注文が優勢になったと判断できます。

5日移動平均線は株価が線の上下に入れ替わりやすいという特徴が見られます。

25日や75日の移動平均線で株価が下に入れ替わる場合、売り注文の優勢な状態が長引く可能性があります。

売り注文の優勢な状態が続けば株価は下落します。

買い注文を出している投資家は注意が必要です。

25日移動平均線のような比較的長い期間の線が上昇傾向にある場合は、株式が買われていると判断できます。

反対に下落傾向にある場合は売られていると考えられます。

スイングトレードなどの短期的な取引を行う際にも、移動平均線は買いと売りのポジションを決めるのに役立ちます。

・移動平均線を使う際の注意点とは

移動平均線はテクニカル分析における代表的な指標です。

ただし絶対的な指標ではないので使い方に注意しなければなりません。

まず基本的に移動平均線は売買の方針を決定するために使います。

取引のタイミングを判断するのにも利用できますが、買い・売りのいずれの目線で取引を行うかを決めるのに使うのが通常です。

取引のタイミングを判断する場合には出来高や信用評価損益率などの指標と組み合わせて使うとよいでしょう。

移動平均線は株価からテクニカルに算出されたものです。

これだけを見て取引のタイミングを決定する損失を被る可能性があります。

正確にタイミングを判断するには、現在の株価と移動平均線の位置関係についてしっかりと理由を確認しなければなりません。

・信用評価損益率とは

信用評価損益率は、信用買い建玉を保有している投資家がどれほどの損益状態になっているかを表す指標です。

現物取引を行った場合の株式は、売却しないと株価の変動によって利益や損失が発生します。

この日々の株価の変動によって発生する利益や損失のことを評価損益(含み損益)と呼びます。

信用取引の場合にも現物取引の場合と同様に評価損益が発生します。

信用評価損益率を見ると、信用取引を行っている投資家の買い建玉の評価損益がどのような状態かが分かります。

また相場全体の天井や底を判断するのにも利用できます。

信用評価損益率の計算式は次のとおりです。

信用評価損益率=評価損益額/信用建玉残高(買い建玉のみ)×100

評価益が出ている場合、買い建てをした投資家は利益確定のために反対売買を行おうとします。

反対に評価損が出ている場合は利益が出るまで待とうとするため、信用評価損益率はマイナスで推移するのが通常です。


一般的に-5%から0%付近では天井に近いと判断されます。

-20%から-25%付近だと底入れが近いと判断されることになります。

信用評価損益率の算出方法は各証券会社ごとに異なっています。

もっとも信頼性が高いとされるのは松井証券です。

松井証券では翌日にマザーズ市場と東京証券取引所、名古屋証券取引所の信用評価損益率を見ることができます。

この指標は速報性が非常に重要ですが、松井証券ならば翌日に数値を確認できるので便利です。


株価を適切に評価する方法とは

・ROEが高い企業ほど自己資本を上手に活用しています

株主資本利益率はReturn On Equity のことでROEと省略されます。

企業の収益性を測る指標の1つです。

株主資本とは株主が出資した資本と、それを使用して獲得した利益の合計を意味します。

貸借対照表上の資本の部のことで、自己資本とも呼ばれます。

ROEとは株主資本がどれほど利益につながったかを表す指標です。

ROEは以下のように計算します。

ROE=1株あたりの利益(EPS)/1株あたりの株主資本(BPS)=当期純利益/株主資本

EPS=当期純利益/発行済株式総数
BPS=株主資本/発行済株式総数

その期の純利益が、会社の自己資本に占める割合がROEです。

ROEが高いほど、自己資本を上手く使って利益を得ていることになります。

逆にROEの低い企業は自己資本を上手く使えていないということになり、経営陣の能力が問われます。

一般的に評価できるROEは8%以上であるとされています。

ある企業のROEが8%以上の場合、投資する価値があると判断できます。

ただし理想的なROEは業種によって異なるので、あくまで目安に過ぎません。

同業の企業を比較検討する際にROEは役立ちます。

よりROEが高い企業ほど自己資本を上手く利用して利益を得ていると判断できます。

・PBR(株価純資産倍率)とは

PBRはPrice Book-value Ratioを略したものです。

1株あたりの株主資本(純資産)をBook value Per Shareといい、略してBPSと呼びます。

PBRはBPSの何倍まで買われているのかを表しています。

つまり1株あたりの純資産の何倍までの株価が付いているかを意味します。

企業が解散した場合、財産が処分されることになります。

この財産が企業の本当の資産価値です。

PBRは株価が企業本来の価値の何倍になっているかを表します。

この数値が低いほど割安と判断することができます。

PBR=1の場合、株価と企業の資産価値が等しくなります。

つまりPBR=1は株価の底値を判断する1つの目安となりますが、1倍を下回った銘柄も存在します。

現実には1倍割れをしているとしても底値と判断できるわけではありません。

とにかく、PBRは株価の割安性を測るための1つの指標です。

同様に株価の割安性を測る指標にはPERがあります。

PBRは以下のように計算します。

PBR=株価/1株あたりの純資産(BPS)

・PER(株価収益率)とは

PERはPrice Earnings Ratioを省略したものです。

株価が1株あたりの純利益であるEPSの何倍まで買われているかを表します。

PERを見れば1株あたりの純利益の何倍の株価になっているかが分かります。

この数値が低い方が株価が割安であると判断されます。

1株あたりの純利益と株価が等しい場合、企業価値が適切に評価されています。

PERが1を超える場合、企業価値は本来の実力よりも割高に評価されていることになります。

PERは以下のように計算されます。

PER=株価/1株あたりの純利益(EPS)

・PBRとROE、PERの関係について

ROE=1株あたりの利益(EPS)/1株あたりの株主資本(BPS)
PER=株価/1株あたりの純利益(EPS)

ROE×PER=株価/BPS=PBR

・株価を判断するための指標のまとめ

ROE:自己資本でどれだけ儲けているか。大きいほどいい。EPS/BPS
BPS:1株あたりの自己資本
EPS:1株あたりの純利益
PBR:株価が1株あたりの純資産の何倍か。小さいほど適切。大きいと過大評価。株価/BPS
PER:株価が1株あたりの純利益の何倍か。小さいほど適切。大きいと過大評価。株価/EPS

PBRはROE×PERとも表現できます。

ROEは大きいほどよく、PBRやPERは小さいほど適切に企業を評価しています。

PBRが低い場合、ROEもPERも低い可能性があります。

確かに企業を適切に評価していますが、ROEが低い場合は自己資本を上手く利用できていません。

企業を適切に評価できているということと、上手く儲けているということは必ずしも一致しないので注意が必要です。

・株価と経済指標の関係について

当期純利益×PER(株価/EPS)=企業の時価総額

企業の時価総額:株価の合計
PER:1株の株価が1株あたりの純利益の何倍か、1株あたりの株価と純利益の比率
当期純利益:全ての純利益

発行済株式総数×EPS=当期純利益
発行済株式総数×株価=企業の時価総額

EPS:1株あたりの純利益

自己資本(純資産)×PBR(株価/BPSもしくはROE×PER)=企業の時価総額

自己資本(純資産):全ての自己資本
PBR:1株の株価が1株あたりの純資産の何倍か、1株あたりの株価と純資産の比率
ROE: 1株あたりの純利益は自己資本(純資産)の何倍か、1株あたりの純利益と自己資本(純資産)の比率(EPS/BPS)
BPS:株あたりの自己資本(純資産)

自己資本(純資産)×ROE(EPS/BPS)=当期純利益

BPS:株あたりの自己資本(純資産)

・株価が変動する要因とは

株価を変動させる要因のことを一般的に材料と呼びます。

材料には内部要因と外部要因の2種類があります。

内部要因は株価に直接的な影響を及ぼします。外部要因は間接的な影響を及ぼすものです。

内部要因は株式の需給に直接的な影響を及ぼします。

増資や株式の分割・消却、持ち合いの解消などが内部要因に分類されます。

株式を分割すると発行済株式総数が増えるため、1株あたりの価値が低下するのが基本です。

しかし個人投資が株式を買いやすくなるという特徴があり、2000年代の前半にはむしろ分割発表後に株価が急騰することがありました。

企業が自社株買いや株式の消却を行うと市場に流通する株式の数が減少します。

1株あたりの利益が増えますが、余剰金を購入資金とするため原則として株価にはあまり影響を与えないとされます。

ただし、株式の需要と供給の関係によっては株価が上昇しやすくなると考えられています。

そのため株価を上げたい企業によって自社株買いが行われるケースも少なくありません。

2008年のリーマンショック以降、事業資金を確保しておきたいと考える企業も増えています。

事業資金の確保を重視する企業では自社株買いに慎重な姿勢を取っているケースが多く見られます。

外部要因が株価に及ぼす影響は間接的なものです。

企業の内部に起因するものと外部に起因するものがあります。

前者としては企業の業績や新製品の開発・発表・発売の他に、企業の合併や買収、リストラや不祥事などが挙げられます。

後者には株価指数や金利、為替、物価などの変動の他にも、国外における戦争や政変、自然災害などを挙げることができます。


株価には先見性があります。

株価を決める最大の要因は企業の業績とされていますが、必ずしも業績が好調な場合に株価が上昇するとは限りません。

投資家がこれ以上の成長を期待できないと考えれば、買いよりも売りが優勢になり株価は下落します。

業績の悪化が発表された場合でも、全ての悪材料が出尽くしたと判断されれば買いが優勢になり株価が上昇することがあります。

株価には先見性があるため、将来の企業の業績を織り込みながら変動します。

最近ではインターネットの普及で金融市場がグローバル化しています。

そのため世界中の株式市場が連鎖的な反応を見せるケースも多く見られるようになりました。

・株価チャート(ローソク足)の見方

ローソク足は株価の動きを表したものです。

長方形の胴体部分と上下の線で構成されています。

上ヒゲは高値を表し、下ヒゲは安値を表します。


陽線は胴体部分が白抜きになっており、下辺が期間における最初の値段である始値を表しています。

一方で上辺は最後に付いた値段である終値を表します。

ある期間において、始値より価格が上昇して取引が終わった場合には陽線となります。

胴体部分が黒塗りになっているのは陰線です。

陰線は上辺が始値で下辺が終値を表しています。

始値より価格が下落して取引が終わった場合は陰線となります。

ローソク足チャートは陽線や陰線を左から右に連ねて株価の変動を表したものです。

期間が1日の場合は日足、1週間だと月足、1か月だと月足と呼ばれます。

株価の大きな流れは月足で確認するのが一般的です。

細かい変動は日足で確認します。

10秒から1時間までの細かいチャートが利用される場合もあります。

チャートの下方に棒グラフが表示されることもありますが、これは取引の出来高を表しています。

銘柄が人気だと取引が活発に行われるので出来高が増えます、反対に人気が落ちてくると取引が行われなくなるので出来高は減ります。

ローソク足のヒゲや胴体の長さを確認すれば、株価の下落や上昇、トレンドの転換などを理解することができます。

使い方は簡単です。

初心者・経験者を問わず、ローソク足チャートを見れば株価の流れが分かります。

株式投資を始めたいのであれば、まずはローソク足の見方に慣れるとよいでしょう。